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感想・レビュー・書評
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題名の通り、栄一の渡欧に焦点をしぼり、栄一の日記や随員の日記などを引用してパリへの往路、滞在、帰国の途を述べる。藍商い、一ツ橋家士官から帰ってきてからの静岡行き、明治政府への登用も簡潔に記している。
今まで何冊か栄一関係の本は読んでいるので、事跡は分かっていたこともあるが、事跡の説明は史料の引用から行い、その意味と、また著者の見解とを述べ、それがとても分かりやすい。
欧州体験が栄一のもたらしたものとして、栄一自身は、自分の一身上、一番効能のあった旅はこの洋行だ、と言っているという。また先人の栄一観を紹介し、「渋沢栄一伝」を著した幸田露伴は「時代の子」、土屋喬雄は「論語の思想」、山本七平氏は「詩作の人」と言い、どんな時でも回りに流されない(詩作という)「自己の世界」を持っていたことが、栄一の功績を形作ったという。また鹿島茂氏はサン=シモン主義に影響されたという。サン=シモン主義とは「産業を興すことで貧乏を無くそう」という思想でちょうど栄一がパリにいた時節にナポレオン三世によってそれが実践され、栄一はその空気を肌で感じたのだという。佐野眞一氏はパリ行きの時期は明治期開化するためのサナギの時期で、孵化するためにはこの1年半のパリ行きが必要だったという。
泉氏自身は、幾多の挫折を乗り越えしかし幸運にも恵まれたのは、渋沢の「人間力」と私心なき「誠意」とロマンに懸ける「覚悟」だったという。・・しかし栄一自身も「明眸皓歯に関することを除いては不仰天地にも愧じない」と言っているといい・・「一友人」幾多の妻以外の女性の存在は「欠点」もあったとしつつも人間味を感じると書いている。
・・しかしなあ明治時代とはいえ、幾多の女性は栄一に賛同できない。
2011.2.10初版第1刷 図書館詳細をみるコメント0件をすべて表示