- Amazon.co.jp ・電子書籍 (581ページ)
感想・レビュー・書評
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沖縄をモチーフにした直木賞受賞作品ということで読んでみました。戦争を生き抜いた子供達が戦後も続く苦難の中で必死にもがき生きようとする姿を描いた青春劇です。
アメリカ軍から物資を盗み取り貧しい人達に配る「戦果アギャー」としてキャンプ嘉手納に侵入したコザの英雄が消えてしまったことから物語は始まります。なぜ英雄は消えてしまったのか?基地の中で何があったのか?真相が分かるラストにははっとさせられること間違いなしです。
コザ騒動などの実際に沖縄で起こった事件、瀬長亀次郎やキャラウェイ高等弁務官などの実在した人物が出てくるのも特徴です。圧倒的な熱量で描かれており、当時の人達の息遣いが感じられる様でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦後の沖縄の激動の時代を舞台とした青春群像といった感じ。骨太ながら、読みやすかった。
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なんくるないさーの一言が重い。
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戦後の米国占領下の沖縄、その軍事物資を略奪してくる戦果アアギヤー達。
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最高。初めから終わりまでとんでもない熱量。読んでいる間は熱さにあてられてふわふわしているような感じがした。
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第9回山田風太郎賞、第160回直木賞受賞作品。直木賞発表の前日、なぜかすべての電子書籍販売サイトで100円で売られていた。運良く気づいて、SONYのサイトでポイントを使って購入したので実質無料だ。
内容は、米軍占領下の沖縄を舞台にした群像劇。ルビがウチナーグチで非常に読みにくい。文体も語り口調で軽いし、正直何が言いたいのかよくわからないままダラダラと進む。戦果アギヤーの3人が教師、警察官、テロリストになり、最後にまた重なる。そのへんは面白かったが、そこに行き着くまでが長く疲れた。そしてこの語り手はいったい誰なのか? -
初読みの作家だが、直木賞受賞作ということで期待して手に取る。戦後の混沌期から沖縄返還までの沖縄を舞台に、現代にまで連なるのであろう、沖縄の人々の慟哭の声が聞こえてきそうな話。地元語が混ざる会話文や語り文は、柔らかな印象を醸し出すのに話は重い。筋自体は面白いのだが、特に前半部分で思いのほかのめり込めず、読了までに時間を要した。ただね、読んだ方がいいと思うのよ、日本人として。例え小説だとしても。
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戦後の沖縄、そして本土復帰までの沖縄。様々な葛藤を沖縄人(ウチナンチュ)は乗り越えてきた。そんな時期を「アメリカー」民政府下で守ってきたもの。ウチナンチュの魂がアメリカーと日本政府(日本人ことヤマトンチュ)に対峙し、島ぐるみ闘争、コザ暴動へと突き進む。
そうした苦境の中で繰り広げられる米軍基地からもたらされた重大なこと、戦後アギャーが盗み出した真実とは?ミステリアスな謎解きも面白かった。
ただ、この本の伝えたいことは単なるミステリーの謎解きに終わらないところにあると思う。
私も沖縄には何度が訪れたし、知人も多くいる。でも、真のウチナンチュの心、魂まで知り得ることは絶対にできない。島を思う気持ち、家族を愛する気持ちを忘れられないもの、守り通すウチナンチュの宝だから…
宝のある島。沖縄。題名にふさわしい内容であった。
是非、皆さんに一読してほしい物語である。 -
湯船につかって、このまま最後まで読もうってね、思っていた。
あともうひとめくりかふためくりってところで、年末に買った防水のワイヤレスイヤホンで聴いていたAmazonMusicの「波〜慶良間・久米島」の波の音が終わり、大汗をかきながら最後の行を読み終わって、次は奥付のページかなってめくったところでKindleの充電が切れて落ちた!
あひゃあ。なんて偶然さね。けどもどんだけAmazonづけなんね。アメリカーの作ったものやね。本書についてはあんまり書かんよ。いや、あらためて別になにか書くかね。これを読んでもらうにはなんて言ったらいいか。沖縄のことが知りたかったら読め、かなあ、沖縄のことなんか知らなくても良い物語だよ、かなあ、戦後沖縄のことを知らないふりして老人になるつもりですか、かなあ、なにを言ったって知ろうとしないひとに言ってふくめるのは詮無いこと。でもひとこと言うなら、いま古今東西の書物からたった一冊をオススメしてということならこれでいい(あなたが日本人・ヤマトンチュならね)。
さあ恒例の本文から引用を行いたいのだけど、今度はハイライトをつけながら読むからね、そうするといいところを抜き出しやすいんだけどまあいいか、ルビはかっこにいれて書くよ、それとネタバレみたいにならないようにちょいちょい略すよ。
「那覇にある家庭裁判所の前の歩道に正座して、かたくなに建物に入らない。家裁の入口からはサチコがなじってくる。往生際が悪いよ! と罵声を浴びせてくる。(中略)あられもない父の醜態(シタラク)を見られずにすんだのは、ほんとうによかったことだなあ。
「おれは入らんぞ、俸給(ジン)が、俸給(ジン)がなにさ!」(中略)「家族の愛(ジョーエー)があればなんだって乗り越えていけるさ」
「あたしは、俸給(ジン)のことなんて言っとらん」
「離婚はならん、リュウを片親にしたらならん」
「いまなら傷も浅い。もともとそんなに父親(スー)との思い出ないもの」
「あがあっ、そんなことあらん。とにかく離婚だけはならん」
「無職になっとったのに、ずっとあたしを騙してえ。ちゃらんぽらん(テーゲー)なうえに噓つき(ユクサー)なんて、そんな男とやっていかれるわけあらんがぁ!」
「おれは動かんぞ、おれは城(グスク)。城(グスク)はびくとも動かないもんさ」
「仕事もないくせになにが城(グスク)よ、半年もぐうたら(フユー)にすごしてえ!」
琉警をクビになっていたことが発覚して(婦警の元同僚から聞いたらしい)、サチコは離婚届を突きつけてきた。
(中略)
家裁まではついてきたものの、土壇場になって反旗をひるがえした。島が本土に返還される前に戸籍を返還されたら笑い話にもならない! グスクは妻の足にすがりついて、ばしばしと書類で頭を殴られ、正座のままで膝蹴りを食らって鼻血を吹いて、道ゆく人々の哀れみと嘲笑のまなざしを集めるはめになった。
家族が離ればなれになるのだけは阻止したかった。もう二度と噓(ユクシ)はつかんから、すぐに仕事も探すから! 頭を地面にこすりつけて話しあいの余地が生まれるのを待った。三年目の夫婦の戦争(ミートゥンバーオーエー)はここが天下の分かれ目だった。」
↑登場人物が明るいのがわかるかなってところ!
「なんといっても沖縄(ウチナー)の子どもたちには宴会(スージ)好きの血が流れているからね。ウタが帰ってきたことで宴に中心ができて、だれもがはしゃぎ、歌い、じゃれあい、次にウタに演奏してもらう曲をめぐってじゃんけん(ブーサーシー)しながらカチャーシーを踊り、男の子同士でお尻に親指を突きたててはゲラゲラ笑っている(うかつな肛門には浣腸(プッスイ)の刑がくだされるのさ、そらプッスイ!)。もつれあいながら高まる親密な一体感は、多幸感に満ちた胸の鼓動(チム・ドンドン)は、ヤマコにとってもなじみ深くて懐かしいものだった(あきさみよう! あきさみよう! おのずと感嘆の声もこぼれるさ。この世のすばらしいものに宴会(スージ)を数えない語り部(ユンター)がいるとしたら、それは偽者(モグリ)かもしれないよ)。窓辺にもたれかかったキヨも、ずっと一緒に育ってきたニイニイに見入りながら、頰を上気させて演奏に手拍子を打っている。おちょぼ唇にできた笑窪を見返してウタも笑みをこぼし、熱気で汗だくになりながら弦を鳴らす五本の指を弾ませた。」
↑語りが明るいのがわかるかなってところ!
「われらの声は届いているだろうか? 生々流転する沖縄(シマ)の叙事詩は、英雄の転生とともに最果ての風景にたどりつき、歳月に隠された島の真実を明かした。この世界に後日談なんてものは存在しないけど、あの暴動の顚末や、返還のすったもんだ(ウームサゲーイ)にはふれておかなくちゃならない。だからつづけよう、われらは風の塵となり、時間を往き来して──」
↑それなりに読むにも覚悟がいるかなってのがわかるかもね。
ぼくは日本国では沖縄県だけ未踏だ。避けてたつもりはないけど遠いと思っていた。でももっと遠い気がした四国も遠くなかった。やっぱ沖縄が遠くちゃダメだよ。さて、フライトチケットを取ろう!