幸福について (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 歴史的価値がある本なのはわかる。教養として読むのは良い。けれど、本書を読んで今にも通じる価値観で、生きたかを考えるために読む、という考えではお進めできない。
    ショーペンハウアーというと、もっと厭世的なことを唱えた人かと思ったが、自己啓発的で前向きなことも言うんだなあ、とか、昔は黒人や女性に対して今の感覚からするとこんなにも差別的な思想が当たり前だったんだなあ、とか、そんな感想を抱く。
    昔の人もいつも機嫌がよさそうに振る舞う人は馬鹿っぽく見えるという今と同じ偏見と、常に自分の機嫌を良くしておくことの大切さなど、わかる、わかる、という部分もある。
    だが、やはり、現代社会で生きる指針として何か本を読みたいなら、現代の価値観で書かれた本を読む方が良いかと思う。

  • エッセイ調で読みやすく、思考するヒントの宝庫。自尊心や自意識に関連して苦しい思いをしている時には特に効く。

  • 内省的で孤独を好むタイプの人間(自分もそのタイプ)には共感するところが多いと思う。結局のところ、自分が世界をどう認識・構築するか、がキモである。

    いっときの快楽はすぐ消え失せてしまう、そういった快楽を求めるのでなく、いかに不幸を遠ざけるか、いかに日々平穏に暮らすことができるか、を意識するほうが結果として幸福である。という感じ。

    他人に対する態度の心得などを読んでいると、本人は社交界とかパーティ的なのが苦手な人間だったんだろうなというのは想像に難くない。こういった個人的な経験も文章に現れていると思う

  • 直接的に幸福にするのは、因果を逆に捉えがちだが「心根が明るいこと」である。「この特性は何にも代えがたい」とショーペンハウアーは語る(5%辺り)。陽気さにとって富や名声ほど役に立たないものはなく、健康ほど役立つものはない。健康第一というわけだ。

    置かれた環境下で幸福感が左右されてしまう外的要因に心惑わされることなく、内的要因に心の平和を見出そうとする考えは成熟社会の日本では一般的と言っていい(常にこれに立ち戻るのは難しいが)。「健康な身体」もそういう意味では状態に左右されてしまうので不健康であっても維持できる強固な心の平和、サンクチュアリを創造したい。

    著者によると、幸福の基礎をなすのは動物的本性であり、最も大切なのは前述の通り「健康」次いで「生活手段」すなわち「心配無用の暮らし」という。これに気づいて整えれば自信に満ちた態度になり、屈託のない自然な振る舞いができるようになる。

    また「孤独を愛す」ことも重要と説く。孤独の中にこそ、真の自由がある、自分の心の声に耳を傾けよ、と。情報化社会において刺激過多な現代人とは間逆な世界観ではあるが、一方でマインドフルネスや禅、ヨガ、ジョギングなどのブームは無関係ではないと思う。瞑想によって解脱の平和が得られるインド哲学にも詳しかったそうな。

    彼は「生の哲学」の祖とも呼ばれるが、後にフロイトが「エス」や「リビドー」「トゥリープ」という概念に再構築した「生への意志」というコンセプトを打ち出している。巻末の解説によると、「人間が望みうる唯一のことは、できる限り自分の中の意思を否定することにある。そしてこの否定は『瞑想』において達成される。欲望の隷属状態から開放され、無常さを超えて安らぎと平和を得る」と説いているらしい。

    「本能と理性」という二元論はよく聞くが、彼によると「意志・本能」と「知性」と呼んでその関係は「暴れ馬」と「手綱」。強い意志・本能があってこそ、知性を豊かに開花させられ、また巧みな手綱さばきがなければ馬は暴走する。

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