樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声 (ハヤカワ文庫NF) [Kindle]
- 早川書房 (2018年11月15日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (233ページ)
感想・レビュー・書評
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『樹木たちの知られざる生活』を読み終わった。
この本は、ドイツで長年、森林の管理に携わってきた著者がその経験と科学的事実から、樹木の生態について記した本である。
樹木も、方法は違えど、動物や人間と同じように、仲間とコミュニケーションをとり、互いに助け合い、生きている。
読んでいて、樹木も生きているとは知っているつもりでも、これまでモノあつかいし、本当の意味で同じ生きている仲間だとは思っていなかったと気づかされた。
著者は自然保護について、樹木の生態について詳しく解説したうえで、何かするのでなく、「何もしない」ことも重要であると語っている。
正しい知識を得たうえで、何かするのでなく、時に何もしない選択肢もあるという、
読んでいて、とても考えさせられ、発見の多い本だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
比喩的な意味ではなく、人は独りでは生きていけない。どんなに頑張って引きこもったところで、誰かが作った食べ物やらエネルギーやらがなくてはやっていけない。そういう意味で、ヒトの生活は住んでいる町や市といった生態系に強烈に依存している。同じことは程度の差こそあれ、森や草原の動物たちや虫たち、海や川の魚たちにも言えるだろう。みんな身の回りの生き物や環境に依存し、互いに影響を与えながら生きている。
では植物は? 草木は光合成で自分で栄養を作れるから、陽光と雨と大気さえあれば一人ぼっちでもやっていけるのだろうか?
そうではないよ、というのが本書の肝だ。植物も森という生態系の中であるときは助け合い、あるときは競争しながら、互いに影響を与えあって生きている。森の草木は根や菌類のネットワークを通じて、ご近所と栄養を分け合うのだそうだ。だから森から切り離された草木はかなり厳しい環境に置かれることになる。
著者はドイツの森林管理官。本人は科学者ではないらしいが、最新の植物学の研究成果を手際よく紹介してくれる。手際が良すぎてそこもう少し詳しく知りたいんだけど、という部分が無きにしもあらずだが、自然科学系の翻訳本としては手頃で読みやすく、読んでいて楽しかった。この分野はこれからまだまだ新しいことがわかってきそうで、楽しみだ。 -
「森を愛する人のバイブル」として、「森林に親しむためのガイド」として、世界中で絶賛された本。樹木たちにも愛情や友情、社会福祉、教育の営みがある。トリビアな話題は森林愛あってのものです。
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樹木を中心とした森林のエコシステムについての示唆に富んだ内容。面白い。
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バームクーヘン一本焼きビブリオバトル第2ゲームで紹介された本です。
2023.7.30 -
樹木の声を聞くこと、そしてリスペクトを持って人と接するのと同じように樹木にも接すること。かつて日本人もできていたかもしれないことの価値を、ドイツ人の著者に教えてもらう。
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森の木々たちは、コミュニティを、作って互いに助け合いながら生きていることを知った。木も人間も一緒。自然界の仲間。
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ハヤカワ100冊から。
公務員をやめて森林管理人となった著者が、樹木、森の知られていない側面について語る本。樹木に関しての話はもちろん興味深いものが多いが、それ以上に、多様性の重要性について考えさせられた。森は人間の手を借りずとも共生社会を創成・維持している。昨今話題の多様性も同じなのではないかと思った。