直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN [Kindle]

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  • ダイヤモンド社
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感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    「イシュードリブンからビジョンドリブンへ」というテーマの本。
    (※イシュードリブン...すでに顕在化している課題に対し、それを解決していくような思考。)
    (※ビジョンドリブン...まだ目には見えない理想状態を自発的に生み出し、そこと現状の間にあるギャップから、思考の駆動力を得ていく方法。)

    最近、「外への反応」ではなく「内への反応」、つまり自分自身への反応を勧める本が多い気がします。
    この本もご多分に漏れず、冒頭で「僕たちの脳はずっと、人から受け取った情報に反応する『他人モード』になっており、自分がどう感じるかよりも『どうすれば他人が満足するか』ばかりを考えている。」と問題提起されていました。
    ただ、まず僕は、「それのドコが問題なの?」と思ってしまいました(笑)
    それは、僕自身がこの本で言うところの「カイゼン思考」「戦略思考」にドップリ浸かっているからに他なりません。
    確かに周りに反応してしまうだけの毎日だと、自発的な感情やドリブンを生み出す事が出来なくなってしまうのでしょう・・・

    本書で、「いま現存している問題に取り組むだけではなく、ある意味クリエイティブな発想をもって思考・実践していきましょう」という一文がありました。
    4つの思考法の中で、「カイゼン思考・戦略思考<デザイン思考・ビジョン思考」と決めつけするわけではありませんが、、、
    行き詰った際のシフトチェンジとして、このような考え方も併せて持っておく必要性はあるな~とと納得。
    そのあたり、「右脳思考&左脳思考」に近い部分がありますね。
    イシュー、ビジョンのどちらかに偏らず、双方をうまい具合に併せ持ちながら、良いストレッチをもって思考できるようになりたいなと、読んでいて思いました。


    【内容まとめ】
    1.「他人モード」にハイジャックされた脳。
    僕たちの脳はずっと、人から受け取った情報に反応する「他人モード」になっており、自分がどう感じるかよりも「どうすれば他人が満足するか」ばかりを考えている。
    「自分モード」のスイッチを切ったまま日々を過ごしていると、そもそも「自分がどう思うのか」すら、よくわからなくなる。

    2.4つの思考領域
    ・カイゼン思考
    ⇒PDCAによる改善、「単位時間あたりのアウトプットを増やすこと=効率化」
    ・戦略思考
    ⇒ゴリゴリ営業。競合が着手していない分野はないか、うまく出し抜いて領土を奪う道はないか、そのための目標を絞り込みながら、資本投下の「選択と集中」を行う。
    ・デザイン思考
    ⇒Lモード(左脳:言語脳)とRモード(右脳:イメージ脳)、どちらのモードにも切替、行き来できる
    ・ビジョン思考
    ⇒「他人の目」を気にしていない。周囲の景色を楽しみながら、「自分モード」の思考に没頭し、ひたすら目の前の道を一歩一歩踏みしめる。

    3.関心が「外」に向きがちな時代だからこそ、「今ここにいる自分」へと注意を引き戻す必要がある。

    4.「現存する課題(イシュー)」と、「内発的な妄想(ビジョン)」
    思考のアプローチは、大きく2つに大別できる。
    1つは、すでに顕在化している課題に対し、それを解決していくような思考。イシュー・ドリブンなアプローチ。
    2つは、まだ目には見えない理想状態を自発的に生み出し、そこと現状の間にあるギャップから、思考の駆動力を得ていく方法。ビジョン・ドリブンなアプローチ。


    【引用】
    ・直感と論理をつなぐ思考法=ビジョン思考


    ・「他人モード」にハイジャックされた脳
    僕たちの脳はずっと、人から受け取った情報に反応する「他人モード」になっており、自分がどう感じるかよりも「どうすれば他人が満足するか」ばかりを考えている。
    「自分モード」のスイッチを切ったまま日々を過ごしていると、そもそも「自分がどう思うのか」すら、よくわからなくなる。


    p24
    ・4つの思考領域
    カイゼン思考
    戦略思考
    デザイン思考
    ビジョン思考


    p27
    ・PDCAによる「カイゼンの農地」
    この世界で勝者になるために必要なのはただ一つ、生産性を高めることだ。
    人に与えられている時間は等しい。持てる能力や資源にも大した差はない。
    だとすれば、その範囲の中でいかに「収穫量」を増やすかが勝敗を分ける。
    要するに、「単位時間あたりのアウトプットを増やすこと=効率化」がすべてなのだ。

    →しかし、VUCAと呼ばれるこの時代において、PDCAを回転させ改善してゆくだけでは立ち行かなくなっている。


    p32
    ・戦略の荒野
    PDCAやリスク管理に守られた「農地」を抜け出し、一定のリスクを取りながら狩猟・採集や陣地取りに明け暮れる。
    ライバルに負けない強靭な体力を身につける以上に、正面からの衝突を回避して、彼らが見落としている領域をいち早く手中に収める戦略が欠かせない。

    競争相手たちにまだ気づかれていない分野はないか、ライバルをうまく出し抜いて領土を奪う道はないか、そのための目標を絞り込みながら、資本投下の「選択と集中」を行う。

    →戦略思考やフレームワークでは、新しいゲームそのものを生み出すことはできない。クリエイティブな能力が欠けているからだ。
    →また、終わりのないゲームなため、シンプルに個人が「疲弊」してしまう。競争状態にはプレッシャーやストレスも付随するため、持続可能性に乏しいのである。
    →どこかのタイミングで限界を感じ、何のために戦っているかわからない「目的の難民」となる。


    p38
    ・デザインの平原
    デザイン思考のシンプルな3つの本質
    1.手を動かして考える「プロトタイピング」
    →Build to think:考えるために創る
    →まず手を動かしてみて、その中で発想を刺激し、新しいものを創り上げていく。

    2.五感を活用して統合する「両脳思考」
    →Lモード(左脳:言語脳)とRモード(右脳:イメージ脳)、どちらのモードにも切替、行き来できることが大切

    3.生活者の課題をみんなで解決する「人間中心共創」


    p51
    ・人生芸術の山脈
    みんな「他人の目」を気にしていない。
    周囲の景色を楽しみながら、「自分モード」の思考に没頭し、ひたすら目の前の道を一歩一歩踏みしめている。

    マインドフルネスのような瞑想の背景にも同じような事情が読み取れる。
    関心が「外」に向きがちな時代だからこそ、「今ここにいる自分」へと注意を引き戻す必要があるのだ。


    p79
    ・「空間的余白」と「時間的余白」
    「余裕ができたらやってみよう」ではなく、まず先回りして余白を作ること。
    →いますぐ無地のノートを買う。
    →いますぐノートを書く予定を入れる。

    やるべきことで溢れている今だからこそ、「何もしない状態=余白」をつくる事に価値がある。


    p96★
    思考のアプローチは、大きく2つに大別できる。
    1つは、すでに顕在化している課題に対し、それを解決していくような思考だ。イシュー・ドリブンなアプローチと言える。
    2つは、まだ目には見えない理想状態を自発的に生み出し、そこと現状の間にあるギャップから、思考の駆動力を得ていく方法である。これがビジョン・ドリブンなアプローチである。

    「現存する課題(イシュー)」か、「内発的な妄想(ビジョン)」かの違い。

  • 「他人モード」と「自分モード」という考え方が述べられている。通常時、我々は「他人モード」で生活しているそうだ。つまり、外部(の人たち)から受容した情報に反応し、結果、「他人がどうすれば満足するか」という視点を重視して、自分がどう感じるかという「自分モード」に入りきれないのだという。「他人モード」でいると、自分がどう感じるのかということが分からなくなる。自分のこと(考え)が分からなくなるから、創造的になれない。

    だから、「自分モード」のスイッチを入れよ、という。四つに分類された思考様式が述べられているが、たどり着くべきは「ビジョン思考」の領域ということになるらしい。この思考法によるアプローチにおいては、「妄想」が重視される。不確定な、あるいは不定形な「妄想」を視覚化するところから始まる。それをデザインに昇華するための手法が数多く述べられている。重視されるのは、おのが「妄想」を形にしていくプロセスであり、ゆえにアウトプットが重視される。同時に「余白」を作ることの重要性についても述べられている。

    ビジョン思考においては、「妄想→知覚→組替→表現」のプロセスをたどる。その過程で、しばしば付箋に書いたメモを組み替えることの重要性が説かれる。ここでは現実に在る「課題」をインプットすることはない。時に研修などで付箋にメモを書いて、貼りかえる作業をやらされたが、その意味が本書で理解できた。いかに普段の研修が、その意味を語らずにいたずらに作業をさせているかがわかる。だからこそ、研修は受けても三日と理解が続かないのだと納得した。

    参加費ばかり高くつく自己啓発系の研修を受講するのなら、本書を読めばよい。それでも常に「自分モード」で生きることはできないだろうが、時に「自分モード」でいることの意味を思い出して生活することもしてみようと思う。少なくとも仕事の場を離れたときまで、「他人の満足」ばかりを考える必要はないだろう。でなければ、「妄想」はいつまでたっても「妄想」の次元にとどまり続け、やがて跡形もなく揮発してしまう。そのときに振り返っても、自分には何も残っていないかもしれない。

  • 前半戦の「0から1」と「1から無限」x「Vision-DrivenとIssue-Driven」の2軸マトリックスによる4つの思考モードの整理およびそこを渡り歩く個人のストーリーのアナロジーがとても秀逸。後半のビジョン思考を育むためのエクササイズは個人に焦点を当てている。組織にどう適用していくか、という観点では「突破するデザイン/ロベルト・ベルガンティ」を合わせて読むと視界が広がりました。

  • 下手な広告屋さんとかが書いてるアイディア法みたいなものより、圧倒的に良書だった。

  • 表紙や図解にセンスを感じる本。
    こういう本、とても好きです。
    内容としてはビジョン、意義を持つことの必要性について解説されており、自分の仕事の意義について考えさせられます。自己啓発、セルフブランディングの基礎にしたい一冊。

  • 本書の冒頭に出てくる、「他人モード」に支配されているエピソードが、まさしく私にあてはまる。如何にして「自分モード」にしていくか。その思考プロセスを、「ビジョン思考」としている。

    絵が可愛く、わかりやすい!絵を見ながら理解することができるので、イメージもわきやすい。現実世界から下に穴が開いている。そこに広がっているのがビジョンのアトリエ。そこで私たちは自分らしい思考を取り戻す。

    ビジョン思考の流れとポイントは下記のとおり。

    妄想→知覚→組替→表現

    妄想:余白をつくり、妄想クエスチョン
    知覚:ありのままに見て、箇条書きでなく絵にして考える。画像と言葉を往復して意味づける
    組替:可動式メモ、違和感、当たり前を裏返す。メタファー&アナロジー
    表現:手で考える。とりあえずPCは×。プロトタイピングプロセスを早く回す

    短期的な成果を期待して駈けずり回る他人モードを続けていては、めまぐるしい変化に振り回され、いつかは疲れ切ってしまう。ああ、まさにそのとおりかもしれない
    。自分モードのスイッチを少しでもオンにする活動をしていきたいと感じた。

  • 中途半端に読んでいたものを年末に読了した。
    もっと早く読んで入ればよかったと後悔。

    センスメイキング理論は近年の流行分野ではあるが、それを非常にわかりやすく説明してくれている。
    近年はイシューから始めよと言われる部分もあり、イシュー起点の問題解決が叫ばれるが、問題解決ばかりになると長く続かず、イシュー不足になる。そこでビジョンドリブンに起点を変えていくとよいようだ。

    また、内面から生じる好奇心をモチベーションにする重要性も指摘される。

    個人的には締めの部分でこれらの重要なポイントとして
    教育
    個人のライフデザイン
    が重要であるとの指摘があるが、これは大賛成。
    まさにいずれも今手掛けようとしているところだ。
    いずれ著者の佐宗さんとはご一緒したいなと思った。

    ◆目次
    はじめに 「単なる妄想」と「価値あるアイデア」のあいだ

    第1章 「直感と論理」をめぐる世界の地図
    ・「カイゼンの民」に迫りくる自動化とVUCAの脅威
    ・デザイン思考の3つのシンプルな本質
    ・4つの思考サイクルの違い――ビジョン思考とは? …など

    第2章 最も人間らしく考える
    ・人が「自分らしい思考」を喪失する4つの原因
    ・「余白づくり」がすべての起点になる
    ・「頭」で考えていては淘汰される。「手」で考えるには? …など

    第3章 すべては「妄想」からはじまる
    ・根拠なき大風呂敷を嫌う「前年比至上主義」―イシューとビジョン
    ・「10%成長」よりも「10倍成長」を考える―ムーンショット
    ・「感情アウトプット」するモーニング・ジャーナリング
    ・創造の「テンション」を引き出す―魔法の問いかけ …など

    第4章 世界を複雑なまま「知覚」せよ
    ・知覚力を磨くには?―頭を「タコツボ化」させない方法
    ・「手さぐり上手」が生き残る―センス・メイキング理論
    ・妄想を1枚の絵にする「ビジョン・スケッチ」
    ・モード切り替え力を高める「クラウドハント」の技法 …など

    第5章 凡庸さを克服する「組替」の技法
    ・最初は「つまらない妄想」からはじめたほうがいい
    ・「箇条書き」はアイデアを固定してしまう
    ・「組替力」を飛躍的に高める「可動式メモ術」
    ・「アナロジー的な認知」を促す3つのチェックポイント …など

    第6章 「表現」しなきゃ思考じゃない!
    ・イタレーション(反復)が「手で考える」のカギ
    ・早めの失敗は儲けもの―「鳥の目」と「虫の目」
    ・「手で考える」を邪魔するもの―表現の余白づくり1
    ・記憶力と創造性が高まる「ビジュアルメモ」 …など

    終章 「妄想」が世界を変える?
    ・改めて問う、なぜ「自分モード」からはじめるのか?
    ・アーティストの成長に見る「妄想を具体化する技術」の磨き方
    ・妄想を「社会の文脈」から問い直してみる―真・善・美

    おわりに 夢が無形資産を動かす時代

  • 妄想→知覚→組み替え→表現→妄想
    A5白紙ノート、VUCAの時代
    Volatirity Uncertainty Complexity Ambiguity

  • 「根拠のない直感・思い込み」を成果に結びつける、“ビジョン思考”の特徴や習得法を指南する。多く図が用いられており、よく聞く戦略思考などとはどう違うのかがわかりやすう示されている。


    はじめに 「単なる妄想」と「価値あるアイデア」のあいだ
    第1章 「直感と論理」をめぐる世界の地図
    第2章 最も人間らしく考える
    第3章 すべては「妄想」からはじまる
    第4章 世界を複雑なまま「知覚」せよ
    第5章 凡庸さを克服する「組替」の技法
    第6章 「表現」しなきゃ思考じゃない!
    終章 「妄想」が世界を変える?
    おわりに 夢が無形資産を動かす時代

  • 周りの期待にばかり応えているとじぶんモードを失う、という指摘はなるほどとおもった。デザイン的な思考、余白の大切さ、など具体策も豊富。

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著者プロフィール

株式会社BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジック・デザイナー/多摩美術大学 特任准教授
東京大学法学部卒業、イリノイ工科大学デザイン研究科修了。P&Gマーケティング部で「ファブリーズ」「レノア」などのヒット商品を担当後、「ジレット」のブランドマネージャーを務める。その後、ソニーに入社。同クリエイティブセンターにて全社の新規事業創出プログラム立ち上げなどに携わる。 ソニー退社後、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を起業。BtoC消費財のブランドデザインやハイテクR&Dのコンセプトデザイン、サービスデザインが得意領域。山本山、ぺんてる、NHKエデュケーショナル、クックパッド、NTTドコモ、東急電鉄、日本サッカー協会、ALEなど、バラエティ豊かな企業・組織のイノベーション支援を行うほか、MVV策定・実装プロジェクトについても実績多数。2021年に生活の拠点を軽井沢に移し、東京オフィスとの二拠点を往復する働き方を実践する。教育分野、地域創生分野など活動の幅を広げる。著書に『理念経営2.0 』『直感と論理をつなぐ思考法』ほか。

「2023年 『じぶん時間を生きる TRANSITION』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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