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感想・レビュー・書評
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非常に勉強になった!
NHK出版の学びのきほんシリーズなので、分量も多くなく、スルスルと読めるのですが、その中に、たくさんの新しい学びが詰まっていました。
ここで「古典」として取り上げられているのは
「古事記」「論語」「おくのほそ道」「中庸」。
どれも、そういうものがあることは知っているけれど、通して読んだことはない書物。そして、「難しそー」と思っている書物(苦笑)。
能楽師である安田登さんが、これらの古典から読み取れることを内容の要約とかではなく、表現から紐解いて、歴史的な意味合いを教えてくれました。
面白いと思ったのは、使われている「漢字」から、当時の日本人の感覚を推測したり、人々が解釈しているのとは違った見方をしてみたり。
例えば「黄泉」。
日本古来から言い伝えられていた物語に、中国から渡ってきたこの漢字を当てはめてしまったために、当時の日本人の「死」に対するイメージを変化させてしまった、とか(詳しくは是非とも書籍で)
例えば「四十にして惑わず」は、全然違う意味だったのではないだろうか、とか。
当時、「惑」という漢字はまだなかったので、「或」が本来の漢字だったのではないか。となると、「区切る」という意味だったのではないか。四十にして「区切らず」。むしろ、かっちり固めるのではなく、人間を広げていく、という意味だったのではないか、とか。
「おくのほそ道」は、能の演目を意識して、芭蕉自身の人生の転換点を演出していたのではないか、とか。
有名な書物だから、きっといろいろな研究がされているでしょうし、その解釈は、一つの解釈であり、諸説あるんでしょうけれど、そんなふうに読んだら新しい発見があって楽しいだろうな〜と思わせてくれました。
古典を伝承していく能楽師だからこその視点もあるんでしょうね。
すごく面白い本でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2019.9.19読了。
古典入門のための『ご案内』的な本。
もっと詳しく知りたい気持ちになる。
でもちゃんと学ぼうと思うとそれは簡単ではないってことも
わかってしまう。
もっと詳しく、でももっと手軽に論語を読みたいなぁ。 -
もともと口伝されていて後年文字に起こされた古典の中には、当時は存在しなかった漢字が当てはめられているものもあり、それによって本来の意味と変わって伝わっているのではないか、という考え方がとても面白かった。 古事記の原文が、漢文ではなく、むりやり漢字で日本語の音に合わせて書き表しているということも知らなかったので、驚いた。
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「古事記」、「論語」、「奥の細道」、「中庸」を著者なりの観点から描写する。古典はやはり奥が深いなあ。
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孔子の「四十にして惑わず」は「四十にして区切らず」と言いたかったんじゃないかって話とか、古典をどう人生に役立てていくかなんて内容。短いし、あっさりしてるから読みやすい。
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日本経済新聞社小中大
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山本能楽堂代表理事 山本章弘氏
魂と輪廻への思い深める
2022/1/8付日本経済新聞 朝刊
弟子でもある長男が悩む姿に接する中、一冊の本に触れ、人の生や死を巡り改めて思いを深めた。
私の観世宗家での修業時代は「内弟子は空気のように」「芸は盗むもの」と教えられたものです。数年前、当時は20代前半だった長男にも芸の道を継いでほしいと願って、時に厳しく指導していました。が、本人は自らの将来についていろいろと考え込んでしまったようです。私自身も、このやり方で良いのかと悩むうち、僧侶、南直哉さんの『恐山』に出合いました。
「魂とは何か」とか「人は死んだらどこへゆくのか」といった答えのみつけにくい問いが随所に投げかけられています。能にも通じるテーマです。霊場や本山を舞台にしたこの本のエピソードに、多くの刺激を受けました。
魂というものについて考える中で、長男が、ごく小さかったころを思い出しました。「この子、去年の今ごろはいてへんかったのに不思議やな」と妻と話をしたものです。南さんの他の著作も読み、講演にも顔を出して、人間の存在を深く考える機となりました。
川の浄化を訴える「水の輪」、西洋の神話を題材に自然と芸術、人間の調和をうたう「オルフェウス」など新作能を相次ぎ発表してきた。
このたび手がけた新作能は「慈愛」と題するもので、サブタイトルに「魂のゆくえ」とつけました。恩師や親友、親族などの身近な方が亡くなったことも契機になりました。
私は縁あって、大阪市の相愛大学が実施する伝統芸能の振興をつかさどる人材育成のお手伝いをしています。同じく講師を務める能のワキ方の安田登さん、宗教学者で僧侶の釈徹宗さんとの会話や、この方らの著作に触れ、輪廻(りんね)、前世や来世への思いを深めました。
安田さんは能のほかにも「論語」をはじめとした古典や人間の身体機能の専門家で、『三流のすすめ』などユニークな著書があります。釈さんはさまざまな経典に詳しく、わかりやすい解説書も多数出されています。
生まれ変わりを主題にした「慈愛」の謡曲の詞章の最後の部分は悩みました。結局は「魂は去此不遠(こしふおん)の都と/苦悩の旧里を渡り行く」にしましたが、釈さんの著書や発想に大いに助けられました。現代語訳すれば「魂はここから近いという浄土と、苦しみの俗世を行き来し、衆生を導く」。仏教でいう還相回向(げんそうえこう)の思想です。
「慈愛」は僧侶の声明と初のコラボレーションをしました。他の分野との共演では、能にも新たな発見や刺激があります。今後も、多様性を重んじ、能の可能性を広げたいと願っています。
関西を舞台にした推理小説が息抜きになっている。
以前、村上龍さんの『半島を出よ』を読んだ際に、よく演じる能楽堂がある福岡市の大濠公園が出てきて、描写をリアルに感じたのを覚えています。直木賞作家の黒川博行さんの『キャッツアイころがった』などの作品には大阪をはじめ、関西の地名が頻繁に出てきて親近感を覚えます。登場人物が移動する際の距離や時間の感覚とか、その場所の雰囲気などを共有できます。
初心者向けの講座などで私は「能は室町時代のホラー」などと聴講者に語りかけます。演じる時に、時空を越えて人物に没入する感覚と、読書に熱中する体験は似ているかもしれません。
600年以上の伝統を誇る能も時代の流れでIT(情報技術)化している。
かつては小型辞書のような「観世流謡曲百番集」やたもとに入る演目ごとの袖珍(しゅうちん)本で勉強したものです。たまに開くと若き日に書き入れた振り仮名があって懐かしい。覚えた謡曲は今も50番程度は「やれ」と言われれば、すぐできます。
しかし、現代はスマートフォンをなぞれば、詞章が見られる時代。修業の雰囲気もだいぶ変わりました。わたしも演目をわかりやすく伝えるアプリなどを友人のブルガリア人、ペトコ氏と開発し、子どもらや外国人はじめ、多くの方に楽しんでもらっています。
「冷たい芸能」と称される能ですが、2025年の大阪万博に向け、世界中の人に、魅力をわかりやすく伝えられるようつとめたいと思います。
(聞き手は編集委員 毛糠秀樹)
【私の読書遍歴】
《座右の書》
『恐山』(南直哉著、新潮新書)
《その他愛読書など》
(1)『自分をみつめる禅問答』(南直哉著、角川ソフィア文庫)。「私とは」「生きるとは」といった根源的な問いを読者とともに考えてくれる。
(2)『役に立つ古典』(安田登著、NHK出版)
(3)『三流のすすめ』(安田登著、ミシマ社)。安田さんには能に関する著書もあり、多才さに触れ、いつも発見がある。
(4)『お経で読む仏教』(釈徹宗著、NHK出版)。膨大な経典のエッセンスや「縁起」「慈悲」などの言葉の由来を平易に教える。
(5)『キャッツアイころがった』(黒川博行著、創元推理文庫)。人気作家の出世作で、関西が舞台。
(6)『観世流謡曲百番集』『同続百番集』(観世左近著、檜書店)。修業時代から使い、表紙などは傷みが激しく、修復した。
やまもと・あきひろ 1960年大阪市生まれ。観世流シテ方。能の若い世代への普及につとめ、上方芸能の紹介にも尽力。東欧などで公演し国際親善にも貢献する。
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『古事記』『論語』『おくのほそ道』『中庸』、4つの古典の読み解きを通して、古典を読む意義についてわかりやすく解説した本。
古典は腑に落ちるまで読むと、人生をより良く生きるためのヒントが見えてきます。