時間は存在しない [Kindle]

  • NHK出版
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感想・レビュー・書評

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  • 「ループ量子重力理論」主導者の一人、著名な理論物理学者が物理学的・哲学的に時間の謎に挑んだ書。ずっと気になっていた書だった。やっと読めた。

    「ループ量子重力論には時間の変数がないという意味で時間は存在しない。しかし人間はエントロピーの増大する方向に時間を認識し、脳は過去の記憶を集めそれを使って未来を予測するので、人間には時間が存在する」(AmazonのKEIZさんのレビュータイトルが本書をコンパクトにまとめていて素晴らしかったので、引用させてもらいました)

    本書の始めの方に出てくる、相対性理論に基づく時間や空間の概念、知識としては知っていることが多かった。ただ、どういう事なのか具体的にイメージできず、理解しているとは言い難かった。本書は、その理解をほんの少し深めてくれた。第一部の途中からは、難易度が高くなり、理解が追いつかなくなった。そして、後半はどんどん哲学的になっていく。

    重力の作用について、「物体は、周囲の時間を減速させる。…物が落ちるのは、この時間の減速のせいなのだ。…物体はごく自然に、時間がゆっくり経過するほうに向けて動くことになる」ってのどういう事なんだろう。時間が進む速さと引力ってどう関係するのかな??

    エントロピー増大の法則が「過去と未来を区別することができる、ただ一つの基本的物理法則」、「ほかのどの法則においても、過去と未来は区別できない」というのは、エントロピー増大の法則のみが不可逆的だって意味なのかか。エントロピー増大則は熱の移動に関する基本法則だから、「時間と熱には深いつながりがあり、過去と未来の違いが現れる場合は決まって熱が関係してくる」というのは分かる。「過去の痕跡があるのに未来の痕跡が存在しないのは、ひとえに過去のエントロピーが低かったからだ。ほかに理由はない。なぜなら過去と未来の差を生み出すものは、かつてエントロピーが低かったという事実以外にないからだ。 痕跡を残すには、何かが止まる、つまり動くのをやめる必要がある。ところがこれは非可逆な過程で、エネルギーが熱へと劣化するときに限って起きる」ということと符合しているんだな。

    「過去のエントロピーのほうが低いという見方は、自然を近似的、統計的に記述したときにはじめて生じるもの」、「過去と未来の違いは、結局のところこのぼやけ〔粗視化〕と深く結びついている」ってどういう意味なんだろう? ミクロで見ると、過去も現在も未来も、そこには順序があるわけではなく、それぞれが同じ確率で存在し得る状態の一つ一つをとっているに過ぎないってことなのかな?

    ビッグバンに始まる昔エントロピーが低かったことについては、「わたしたちが物理系として相互作用してきた変数の部分集合に関してのみ、エントロピーが低く見えているのかもしれない」、すなわち広大な宇宙の中で我々が属する一部分がたまたま局所的にエントロピー極小の状態にあっただけ、というのが著者の仮説。突飛な考え方に思えるけど、多元宇宙論と相通じるところかがあるのかな。

    ループ量子重力理論では、時間が量子化され、「時間には最小幅が存在する。その代わり値に満たないところでは、時間の概念は存在しない」、「過去と未来の違いも揺れ動くのだ。したがって、ある出来事がほかの出来事の前でありながら後でもあり得る」。この世界を記述する基本方程式に時間という変数はなく「存在するのは、出来事と関係だけ」、という。そして、「時間の核には、この二つのぼやけの起源──物理系がおびただしい数の粒子からなっているという事実と、量子的な不確定性──があ」り、「そのようなぼやけが生じるのは、わたしたちがこの世界のミクロな詳細を知らないからだ」、「物理学における「時間」はけっきょくのところ、わたしたちがこの世界について無知であることの表れなのである。時とは、無知なり」。うっ、さっぱり分からん!!

    「世界を動かしているのはエネルギー資源ではなく、低いエントロピーの資源なのだ。低いエントロピーがなければ、エネルギーは薄まって一様な熱となり、この世界は熱平衡状態になって眠りにつく。もはや過去と未来の区別はなく、何も起こらなくなる」。「百億の昼ところが千億の夜」で描かれていた「完全な熱的死」「エネルギーの完全な平衡状態」だな。これは分かる。

    結局、消化不良のまま読み終わってしまった。「一つでもなく、方向もなく、事物と切っても切り離せず、「今」もなく、連続でもない」時間。(実生活には何ら影響しない、ミクロな時間ないし悠久の時の話ではあるものの)時間って一体何なんだろう、気になるなあ。

    他のレビュアーの方オススメの「時間とはなんだろう」もを読んでみたい。

  • 「わたしたちは物語なのだ」

    今とは、時間とは、人生とは何か?詩情溢れる筆致で、難解な物理学が気持ち良く胸の真ん中にストンと落ちる。

    「わたし」はただの出来事でなく、記憶と言う名の特殊な糸で自分の過去としっかり結び付けられている。

  • タイトル通り時間なんて存在しないということを物理学的に哲学的にあるいは神話や宗教的に解説している。時間は存在せず、存在するのは出来事と関係だけと著者は主張する。物事をどの観点で捉えるかの考え方の違いのような気もしたが、物理・数学的に時間がなくても事象を表現できるらしく、時間は存在しないものらしい。一方で一般人の感覚として、時間という概念は身に染みこんでいる。時間に縛られ、時間に追われて生活している人はたくさんいるだろう。そのあたりの整合性も説明しているようだが、私はよく分からなかった。著者の「すごい物理学講義」も面白いらしいのでこちらにも挑戦しようと思う。

  • 量子重力理論に基づく時間論についての啓蒙書。
    科学啓蒙書としてはなかなか良い。
    後半1/3は転じて哲学的思索が展開されている。
    著者としては書かずにはいられなかったのだろうが、本書には含めない方が私にとっては好ましく思えた。

  •  時間はニュートンが考えたように「宇宙のどこでも同じように流れる」わけではない。時間は空間と一体化した広がりであり、それ自体が物理現象を担う実体であるというアインシュタインが明らかにした事実を説明してくれる……ところまではよくわかった。〈わたしたちの「現在」は、宇宙全体には広がらない。「現在」は、自分たちを囲む泡のようなものなのだ〉という説明で納得しよう。
    「時間」には方向がないことの説明は、エントロピーとの関係で示される。エントロピー増大則は、常にエントロピーが低い状態から高い状態への一方通行である。これが過去から未来への感覚をつくる。ところがエントロピーというものは〈宇宙を近似的なぼんやりとした見方で眺めたときに、はじめて生まれるもの〉であり、〈過去と未来が違うのは、ひとえにこの世界を見ているわたしたち自身の視界が曖昧だからである〉とされる。ぼんやりとではなく、厳密に見たとき、時間の方向性は消える。
     さて、それから先のループ重力理論のほうは、ちょっとさらっと読んだだけではよくわからない。さらにわからないのは第11章で〈世界を動かしているのはエネルギー資源ではなく、低いエントロピーの資源なのだ〉というところから、〈過去が現在の中に痕跡を残す〉〈痕跡を残すには、何かが止まる、つまり動くのをやめる必要がある。ところがこれは非可逆な過程で、エネルギーが熱へと劣化するときに限って起こる〉〈過去の痕跡が豊富だからこそ、「過去は定まっている」というおなじみの感覚が生じる〉と、エントロピーを主役になにかの言い換えを行っていくところで、そういう言い方をしなくても脳のしくみによって過去と現在と未来の感覚が生まれるということの説明はできるのではないかと思う。
     結局、時間というものは絶対ではない。空間といっしょに伸び縮みするもので、ある限られた範囲内でおおまかに共有されるものだということである。そして時間の「方向」さえ、量子力学的世界では消え失せる。流れているように見えるのは、世界をおおざっぱに記述するときであり、その原動力はエントロピーにあり、エントロピーを持ち出すということは「世界をおおざっぱに記述する」ということなのだ、という説明であると理解した。
     半分はとてもおもしろく、半分はかなりまわりくどい。でも、ちょっとわくわくするというか、自分が無意識のうちに当たり前と考えていることにくさびを打ってくれる感覚はあった。

  • むずかし〜〜〜!
    ということで、途中まで読んだんですが、積んでおくことにします。いつの日にか読もう…読むかな…

  • 自分の読解力が試されるなと思いつつ、数学的、物理学概念を節々で詩的な文章で表現している部分を追うだけで読み終えることができた。

  • 「すごい物理学講義」も読んだけれども、著者のとなえるループ量子重力理論よりは超弦理論の方が説得力がある。本書も叙事詩的な表現で過去の物理学者や哲学者を登場させて叙述するが、なんら物理的検証もないため眠たいだけである。
    もっと超弦理論を読んでみたい。

  • 直感に反するのでなんかだまされているようないないような。

  • 福岡伸一的「10代におすすめのSTEAM的好奇心を刺激する3冊」
    https://fasu.jp/series/steambook/vol2/#2

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著者プロフィール

1956年、イタリア生まれ。ボローニャ大学からパドヴァ大学大学院へ進む。ローマ大学、イェール大学などを経てエクス=マルセイユ大学で教える。専門はループ量子重力理論。 『すごい物理学講義』など。

「2022年 『カルロ・ロヴェッリの 科学とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

カルロ・ロヴェッリの作品

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