時間と自己 (中公新書) [Kindle]

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  • 中央公論新社
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  • memo

    ・主語的な自己と自己の述語作用とは、互いに一方が他方の成立の根拠となっているような関係のうちにある
    →「私が~~する」がなければ、「~~は私である」というための手がかりが存在しないが, 「~~は私である」という作用が存在しなければ、「私が~~する」とはいえない

    →自己が自己であり続けるためには、まず、すでにあらかじめ自己が自己であること(被投性)、そして、これから自己が自己自身へ到来すること(投企)が必要
    前者を信用できないのが分裂病で、未来志向になる
    後者を信用できないのがうつ病で、保守的になる
    (舞台の比喩をつかった主観と客観の説明のくだりは, 安部公房『壁』のマネキンの射映機らへんと似ている)

    癲癇・躁状態:イントラ・フェストゥム的狂気
    ・現在が圧倒的に優位
    ・永遠の現在が出現する
    ・いまが以前と以後、いままでといまから、ひいては過去と未来という互いに交換不可能な二つの方向に分極し、そのことによって絶えず走り去るものとして意識されるのは、いまを意識しているわれわれの個別的生命の有限性のためである。なんらかの事情によってこの有限性が止揚され、個別的生命が無限の普遍的生命に触れる瞬間には、いまはもはやそのような前後の方向を失って、なにものも到来せずなにものも過ぎ去ることのない瞬間として、永遠の停止として意識されるに違いない。


    あとがき
    p191
    私はつねづね, 人間に関するいかなる思索も, 死を真正面から見つめたものでなければ, 生きた現実を捉えた思索にはなりえないのではないかと思っている.

  •  タイトルを見て思い描いていた内容と違っていた。確かに精神病理を通して時間を考えているのだ。すごい。こんなことを考えている人間がいるんだ・・・というのが率直な感想。
    精神分裂病(現在の統合失調症)、鬱病、双極性障害の患者から見た世界について精緻な表現で伝えてくれる。そこに見えてくる時間と自己の認識の関係。
     統合失調症に関しては、親からの影響が少なからずあるというところでハッとした。
     病気というのは、社会の中で大多数よりちょっと範囲からはみ出したときに疾患として名前がつけられただけで、誰にもあり得ることなのだ。本の中でも、病名がついてない人でもどれかの「傾向」があるとのこと。自分はどっちかというと統合失調症寄りかもしれないなあと感じる。遺伝子が関係する病気というのもあるだろうし、後天的な経験によるものもあるだろう。いずれにせよ、こういうものを患うということは誰にでもあることなんだなと改めて思った。
     自分は双極性障害、統合失調症を抱えた人と接していた。ある意味現在進行形もある。
     鉄格子のある病院で、その人の見ている世界の話しを聴いた。自分の見ているものと違うのだなと。そのあと、どうしてこうなってしまったんだと歎く周囲の人の言葉をきく。なぜだろう。自分は鉄格子のある病院できいた世界の話しの方が、ほんととじゃない?それって人間の本当の姿を見ているんじゃないか?と思ってしまった。
     それほど自分の見ている世界は自分価値感でしか成立していないのだなと思うのだ。普通ってなんだよ、まともってなんだよ、と。
     ハイデガー読んでいるとこの本はよりずんっと来ると思う。
     科学的な普通の文章を読んでいるのに自分っていったいなんやろうと揺さぶられる一冊。

  • .

  • 再読です。ぼくは元ハイデガー研究者なので、この本を読むと、「ハイデガーの理論はこんなふうに応用できるんだ」という驚きと、「ハイデガーの議論を都合よく利用しているにすぎないんじゃないかなあ」という感想とが入り混じります。前回読んだときは前者の驚きが強く、今回は、後者の感想のほうが強かったように思います。
    今回読んだみて、「この本の議論は、かなり細かいところを端折って書いているように見えるので、詳しく書いているのを読んだら印象が変わるかもしれない」と思い、『自己・あいだ・時間』を読もうとしてみましたが、こちらは長すぎて、途中で断念してしまいました。【2021年4月18日読了】

  •  今日バイトが早く終わったので、ブックカフェに寄って読んだ。木村敏の本は以前『関係としての自己』を読んだことがあっておもしろいと思ったから、同著者が書いた他の本も読んでみたかった。
     この本では精神病を患っている人が時間をどう捉えているのか考察している。今日はあまり読書に集中できなかったのと、この本で語られている内容が著者の専門である精神病理学だけでなく、哲学も踏まえた内容だったので、難しくなかなか頭に入らなかった。記憶に残ったのは、なぜアナログ時計からデジタル時計に変わると使いにくいように感じるのかで、それはデジタルで表示されるピンポイントの時間だけでなく、目的の時間までどれくらいの時間が残っているのかなどの情報を人は知りたいと思っているからという答えになるほどと思った。そうするとアナログ時計の方が都合がよく、愛用する人がいなくならない。

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著者プロフィール

1931年生まれ。京都大学名誉教授。著書に『木村敏著作集』全8巻(弘文堂)、『臨床哲学講義』(創元社)、共訳書にヴァイツゼカー『ゲシュタルトクライス』(みすず書房)ほか。

「2020年 『自然と精神/出会いと決断』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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