登場人物それぞれの、どうしようもなさ、やりきれなさが、すべてのエピソード群にこれ以上ないほどに詰まっている。わんわん泣くようなタイプの作品ではないけれども、2 巻を読んでいて、気づいたら涙がこぼれていた。自分でも最初は気づかなかったほど、静かに。
主要な主人公は 2 人の少年。どちらも母親不在の状態で、父親との確執を抱えている。互いに足りない部分を補いながら、始終べったりというわけではなく、けれども、心の底から信頼できる相手なのだろうと思う。アールとその父親とが、ある種の溝を抱えながらも、率直に語り合える時間が幾許なりとももてるようになったように、ランディにも細くていいから光が見える時間が欲しい。アールが再建しようとしている、亡き母親の跡を継ぐようなケーキ店が、ふたりの未来の光となるのだろうか。なってほしいと強く思う。
アールの父親の気持ちが、わかりすぎて辛い。アールとのあいだに齟齬ができてしまうのも仕方なかったのだろうと思う。見えているものが違うのだから。アールのもつ辛さを、この父親ではカバーできない。けれども、歩み寄りを見せていくこのふたりの関係が、愛しいと思う。願わくはこのふたりにも、これ以上の酷いことが起こりませんようにと祈る。
1 巻、2 巻とも、多田さんのあとがきが圧巻だった。多田さんがずっと、どうしようもない酷さと辛さとを抱えたまま生きている登場人物たちを描き続けてはること、それこそ、魂を削るようにして描き続けてはること、そして、それをわたしたちがお金を払って読んでいることについて、考える。できればこのまま続刊を読み続けたい。読み続けられる環境が保証されるようにと、切に思う。