『医療ミステリー小説で、国立がんセンターで癌研究の経験を持つ岩木一麻さんが著者です。この物語は、余命半年の宣告を受けた肺腺がん患者が、リビングニーズ特約で生前給付金を受け取った後も生存し、その病巣が消え去ってしまうという現象を描いています。
この奇妙ながん消失の謎に、呼吸器内科医の夏目と、同僚の羽島、生命保険会社の森川が挑みます。彼らは、治療不能なはずの末期がんを、いかにして寛解(完全に治癒すること)に導いたのかを解明しようとします。
この小説は、癌の基礎研究をかなり本格的に行った専門家でないと決して書けない内容で、癌の性質や治療、実験に関する説明や、医療現場を取り巻く情勢の描写は驚くほど的確です1。また、二転三転するストーリーや衝撃的なラストなど、ミステリー小説としてかなり完成度が高く、最後の1行まで読者は翻弄されます。
ただし、実際には、アレルギーの治療と偽って投与できるほど少ない量の免疫抑制剤では、他人の癌細胞の移植はまず不可能で、免疫抑制剤をやめるだけで、すなわち自分の免疫力だけで癌を消滅させられるかという問題もあります。このような現実的な視点からも、この小説は非常に興味深い内容となっています。』
培養されたがん細胞を注射することで、がんを発症させてがんで殺害するという方法。
トリック分類表の武器部門に新しいエントリーだ。
がんの成分から体内で発生したものか外部からもちこまれたものかわかるのだそうだ。
この小説では、さらに注射した記憶がないのにがんが注入されているというナゾ解きになる。
新しいことは認めるが、いかにも専門家が書きましたという文章で、ときにペダントリーチックで説明重視の記述になって出来がいいとは思えない。
このミス2017 P110「あの本読みました?」の中で、このミスで大賞で一番面白い/大森