たゆたえども沈まず (幻冬舎文庫) [Kindle]

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  • 幻冬舎
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感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。。解説も含めて。

    ゴッホ兄弟と画商の日本人2人。
    タンギーおじさんもゴーギャンも登場。

    原田マハさんの本を早くに読んでいたら、もっと絵画のことが好きになっていたのに。
    それにしても画家一人一人のキャラクターが理解でき、作品一つ一つの思いを感じさせられます。

    よい本に出会うと幸せを感じる、そんな一冊でした。

    • mayutochibu9さん
      コロナで絵画展は見送りましたが、知っている作品でもぼーと絵を前から横から、色々な角度から見ると、楽しめます。
      ちょとお金はかかりますが、音...
      コロナで絵画展は見送りましたが、知っている作品でもぼーと絵を前から横から、色々な角度から見ると、楽しめます。
      ちょとお金はかかりますが、音声案内も楽しめます。子供曰く。
      2020/12/11
    • いるかさん
      mayutochibu9さん

      コメントありがとうございます。
      私は今まで芸術とは無縁の世界でいましたが、原田マハさんの作品を読んで...
      mayutochibu9さん

      コメントありがとうございます。
      私は今まで芸術とは無縁の世界でいましたが、原田マハさんの作品を読んで興味ができました。
      一度ゆっくり絵画を見てみたいと思っています。
      ありがとうございます。
      2020/12/12
  • ゴッホと、彼を支えた弟のテオを、日本美術商でテオの友人である重吉を通して、描いたストーリー。

    重吉自体は架空の人物のようだが、当時、日本人美術商がすでにパリで活動しており、ゴッホを始め、印象派の画家たちに大きな影響を与えていたということを知って、なんだか感慨深いものを感じた。
    そして、改めて、ゴッホの作品を見たくなった。

  • 精神を病む天才画家フィンセント(兄)とその兄を健気に支える弟テオドルス(テオ)のファン・ゴッホ兄弟、そのファン・ゴッホ兄弟と深く交流し心の支えともなったパリ在住の日本人二人(日本美術を扱う美術商 林忠正とその腹心の部下 加納重吉(架空の人物))を巡る物語。

    タイトルの「たゆたえども沈まず」は、度重なる洪水の被害に遭いながらも街を愛する人々の手で復興してきたパリの姿を表した言葉。「パリは、いかなる苦境に追い込まれようと、たゆたいこそすれ、決して沈まない。まるで、セーヌの中心に浮かんでいるシテ島のように」、パリの街は「どんなときであれ、何度でも。流れに逆らわず、激流に身を委ね、決して沈まず、やがて立ち上がる」。

    時代は、やっと印象派の画家達が認められ出した、19世紀末。印象派の次を担うゴーギャン、スーラ、セザンヌ達はまだまだ無名だった(もちろんゴッホも)。彼らは食っていくのすら大変で、タンギー爺さんらよき理解者に支えられて何とか活動していた。

    画に異彩を放つフィンセントは、人一倍傷つきやすく、繊細でもろいガラス細工のような精神の持ち主。本作ではフィンセントの心の内面を深く描いていないが、常に悲観的で厭世的、自己愛が強い根っからの寂しがりや、といったところか。

    フィンセントは、財政的にも精神的にもテオにおんぶにだっこで、しかもテオに感謝の言葉一つない。要するに甘えが酷いのだ。そんな兄を、まるで自分の体の一部であるかのように慈しみ、時に反発しつつも(切り捨てることができず)献身的に支えたテオの姿が悲劇的だった。

    「親友というよりは、むしろ――互いを自分の半身であると感じる双子のような不思議な結びつきが、二人の間にはあった。兄と自分は分かち難い関係なのだ――と、二十歳になる頃には、すでにテオは自覚していた」

    テオはもちろん、画家としての兄の才能を愛してもいただろうが、幼少期に刷り込まれた兄への憧れがテオを強く呪縛し続けた。何もそこまですることないじゃないか、とも思うが、後世の我々がゴッホの数々の作品を今見ることができるのがテオの献身(犠牲)のお陰だとすると、テオに感謝すべきなんだろうな。

    パリに巻き起こった「ジャポニズム」旋風のことを伺い知ることができて良かった。ゴッホの死の謎を描いたミステリー「リボルバー」も読まなきゃ!

  • 長い間、積読してた本。やっと読み終わりました。
    美術の一般知識がなくて読むと素晴らしさ半減なのかもしれません。
    最後まで読んで、最初に戻って、あーそーか、となりました。

  • ゴッホの生涯を日本の美術商である林忠正の生涯と絡めながら描いた小説。

    フィクションが多分にあるのだろうが、当時の情景、登場人物達の苦悩が色濃く伝わってきて、リアリティを感じさせる物語だった。

    美術というものに全く興味なかったし、技術的なことはわからないけど、バックグラウンドに思いを馳せながら鑑賞してみたいかも、と思わされた。作者の力量を凄く感じた作品でした。

  • 19世紀後半の印象派の歴史を史実とフィクションを混じえた形で知ることができる小説。
    常に俯瞰した視点で文章が書かれている点が個人的には感情移入しにくくて読みにくい。
    ただ、原田マハさんの美術歴史にまつわる本を読むときは9割知識欲で読んでいるので、読みにくくても面白くなくてもオーケー。

  • ゴッホが不遇な画家で死後に評価された事は知っていた。自分の耳を切り落とし、最後は自殺した事も。その程度の事前知識だ。
    原田マハさんの作品は美術作品の様々な背景を知る事が出来るだけでなく、それに携わった人々の人間模様がとても生き生きと描写されている。
    本作も19世紀末のパリの様子がリアルに描かれており、また林忠正という重要人物の事も知る事ができた。
    小説自体も良かったが、表紙に使われている「星月夜」を読後に見てみると今までとは違った感慨に浸れて心に沁みた。

  • 19世紀のフランスを舞台にした歴史小説。画家フィンセント・ファン・ゴッホとその弟テオ、 日本人の美術商である林忠正と加藤重吉を主軸として話は進む。ゴッホ兄弟はオランダ人で、フランスでは4人とも外国人だ。時代や文化の違いに翻弄されながら懸命に生きる外国人同士が、美術を通して共感し、心を通わせていく過程がこの小説の面白さだと思う。

    物語のテンポが良く、キャラクターも明快で分かりやすい。脇役として他の画家が登場するが、 ゴーギャンやモネといった豪華な面々で、当時のパリはどれだけ華やかな場所だったのだろうか。そして、美術が全盛の時代にまるで評価されないフィンセントの無念もどれほどだったろうか。ただでさえ繊細な気質の持ち主にとって、かなりのストレスになったことは想像に難くない。

    ゴッホは自分の耳を切り落としたことがある、というエピソードだけは聞いたことがあったが、それは何の脈絡もない出来事ではなくて、長く精神を患っていたという背景があったようだ。フィンセントは仕事も金もなく、弟に援助を受けてはアルコールに溺れ、身を持ち崩していった。そんな自分が弟に迷惑をかけているという自覚と、強い自責の念もあった。心が弱いために自分自身を立て直せず、自己嫌悪しては繊細さゆえにますます傷付いて、孤独を深めていくという状態だったのかもしれない。

    ゴッホは自分の手で生涯を閉じる。兄を追いかけるようにテオも死んでしまい、後には妻と子が残される。普通であれば悲劇になりそうな話だが、テオが担ってきた仕事は妻ヨハンヌに引き継がれ、フィンセントの絵は未来に託されることが描かれている。もちろん読者はその後、フィンセントが世界有数の画家として認められることが分かっている。前途は決して暗くなく、読後感は爽やかだ。タイトルの「たゆたえども沈まず」が良く似合う物語だった。

  • 小説としては非常に面白かった。
    もちろんフィクションのため史実と異なる部分も多く、ゴッホの人生を知りたいと言う人にはあまりお勧め出来ない。
    Kindle unlimited の世界の名画集のゴッホ版や、Googleで絵を確認しながら読むのがお勧め。

  • 今年読んだ本で1番泣いてしまった。
    最後は泣きすぎて喉が痛くなるほど泣いた。
    涙が溢れて苦しくて切なくて…兄弟の絆が尊くて。

    美術や絵画に関心がない人でも、ゴッホという画家を知らない者はいないだろう。
    絵を見たことがなかったとしても、その名前だけは一度くらい聞いたことがあるのではないだろうか。
    この物語は、ゴッホと彼を支えた弟の半生を描いたものである。

    私は美術も絵画も昔から大好きであるため、ゴッホがどれほど悲惨な人生を送ったのかをある程度は知っていた。
    この作品は、弟とその親友目線でゴッホの生き様を語るものであった。
    ノンフィクションとフィクションが非常に上手く調和しており、悲劇的なラストを知っていても号泣してしまうストーリーであった。
    間違いなく素晴らしい作品。
    でも大泣きしちゃうからもう読めないなw

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

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