いやーもうアレですよ、アレですわコレは。
2020年時点にて。
第92回アカデミー賞にて、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞を受賞。で、非英語作品の作品賞受賞は、史上初めてだった。という事実。
第72回カンヌ国際映画祭にて、韓国映画初となるパルム・ドールの受賞、という事実。
アカデミー作品賞とカンヌの最高賞を同時に受賞した作品は「マーティ」(1955年)以来、65年ぶり、という事実。
綺羅星の如き途轍もない結果を出した作品、ということでね。そらもうね、否が応でも期待しまくりですやんか。そらもう。だって、とんでもねえやんコレ。案外、俺、権威に弱いし。こらもうとんでもねえな、という期待バンバンで観ました。
で、観終わった感想ですが。うむ。コレ、あれだ。ファンタジーですね。自分にとっては、ファンタジー映画、っていう認識です。うむ。なんというか、、、極上のファンタジーだな。と。社会派?現実の韓国の現代格差社会を喝破した問題作?コレが目を背けてはならない紛れもない今の社会の現実なのだ?イヤ違うな、と。これは、ファンタジー映画だ。しかも極上の。って認識。お見事なファンタジー映画でした。
正直に言います。前半から中盤あたりは、正直、おもんなかった。質の悪いブラックコメディーギャグ映画やん、、、って思いながら観てましてね。死ぬほど生意気な無茶苦茶を言いますが、これでアカデミー受賞?カンヌでパルムドール?マジかよ勘弁してよ、って思いながら観てました。ホンマにすみません。
後半。僕にとってはこの後半の30分ほど?の怒涛の勢い。あっこらへん。あっこらへんこそが、この映画の魅力のほぼ全部。でした。アレですね。パク一家が、息子のダソンの誕生日お祝いパーティーを庭で開催しまっす!ってなってからの、怒涛のアッコからのアレ。いやもう、本当に凄かった。
臭い。におい。ニオイ。臭いって、凄いな。とね、シミジミ思う。とある、なんらかの臭い。それは人が生死を問わず「存在する」限り、かならず、あるのだ。その臭いは、きっと、全てをコントロールしているのだ、人間のDNAの奥深いところで。とかね。嗅覚、という表現。嗅覚、という認識器官。それは、凄い。凄いよ嗅覚。ま、嗅覚が、超重要だな、とか思ったんだよ俺は。いやあ嗅覚。ああ嗅覚。
アレですね。凄く似た雰囲気を感じたものは、宮部みゆきの社会派よりの小説の数々。日本映画で言うと、是枝裕和監督と西川美和監督の作品の流れ、に、すげえなんというか、近い雰囲気だな、と。西川監督でいうと「夢売る二人」とか「ディア・ドクター」の最終盤の雰囲気に凄い近いな。と。現実感バリバリの場面じゃなくて、「ああ、この映画、ファンタジーだね」って分かる場面当たりの雰囲気がホンマに似てるなあ、って。同じ方向を向いているんだろうなあ。
ポン・ジュノ監督、西川美和監督の「すばらしき世界」が公開された時も、推薦文?みたいなの寄せてましたもんね。感性が、眼差しが、うむ。近いんだろうなあ~、ってね、思いました。
キム一家の息子、ギウ役。チェ・ウシク。俺の好きな「新感染 ファイナル・エクスプレス」に出演してたんだ!すまん!気づかんかった、、、ゴメン。アレか?野球部の主将役?かな?
同じくキム一家の娘、ギジョン役。パク・ソダム。あの酷薄そうなドSっぽい顔立ちとガラ悪い系の役柄。好きです。いやあ、この女優さん、好きです、うん。
パク一家の妻、ヨンギョ役。チョ・ヨジョン。めっちゃ黒木瞳やんか笑。とか思ったね。そっくりだと思うぞ、うん。
あと、ウィキペディア情報なのですが、ポン・ジュノ監督のコメントで、凄く好きなコメントがありまして。2019年4月29日、カンヌのコンペ入りを受け、ソウル市内のホテルで行われた会見での発言らしいのですが、
「おそらく、海外の観客はこの作品を100%理解することはできないだろう。この作品はあまりにも韓国的で、韓国の観客が見てようやく理解できるディティールが散りばめられている。」
という事を発言されているようなんです。分かる。この気持ちは、なんだか、ものすごく分かる。自分は日本でずっと生活してきた今までの人生ですが、邦画だからこそ、無条件で分かってしまう「何か」って、絶対にある、と思っている派なのですよね。邦画のあの何らかの「あの雰囲気」としか言いようのないものが、どうしても、ある、と思う。それって、驚くほど、ホントに何の条件も留保もなく「分かってしまう」んですよ。自分にとっては。
最近だとクエンティン・タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を観て、あの作品はアレはアレで楽しめたんですが、どうしても、なんらかの「なんだか超えられない壁。ホンマのホンマのところではこの映画を理解できないであろう自分」みたいなんも、痛いほど感じたんですよね。その「何か」。その映画が撮られた場所で長年生活してこないと決して理解できない「何か」。
その認識を、ポン・ジュノ監督も、持っている、という事が理解できたと思えたことが、なんだか、すごく嬉しかったですね。ま、共感、ってヤツですよね。
いやしかし、お見事な映画でした。うん。お見事な映画でした。