貧乏国ニッポン ますます転落する国でどう生きるか (幻冬舎新書) [Kindle]

著者 :
  • 幻冬舎
3.75
  • (2)
  • (12)
  • (5)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 103
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (176ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • この20年間日本の実質賃金が上がっていないのは周知。まともに仕事をしていても、生活できないワーキングプア―問題、労働人口の減少と高齢化による公的年金維持の困難さ、サプライチェーン変化と流通コスト上昇、次年度からの輸入依存のエネルギーコスト上昇。生活実感は暮らしにくくなっているなあ、ということだと思います。

    ”デフレ脱却により生活を豊かに”、”量的緩和によるインフレ誘導”など政府諸策も有効に機能していません。なぜ日本が一人負けしているのだろう? どこが間違っているのか? 今までの政府説明、各マスメディアの論説をベースに考えていたのですが、本書を読んで判断ベースが揺らいでしまいました。

    製造業に身を置くものとして、生産性向上はコスト低減、競争力維持のために不可欠です。ただ、日本全体の経済構造が輸出依存の製造業に偏っていたのは、これも事実です。この間主要先進国は経済構造を変え、より付加価値生産性の高い事業構造に変化していました。

    新興のアジア諸国も国内GDPの上昇により、実質物価水準、労働賃金が徐々に上がってきているのは肌に感じていました。東南アジア、ベトナム、カンボジアでさえ毎年7%の成長率、やや陰りは見えるとはいえ、中国では10%近い成長率です。

    日本がデフレ基調から何を刺激しても立ち上がらない、この根底に企業活動の機能不全があるとする主張は納得できます。政府の政策によるのではなく、我々企業のビジネスモデルが変わらないと、経済成長率も戻らないし、豊かな国も維持できないというのは非常事態です。

  • 〜以下はレビューではなく感想〜

    日本は貧乏臭い国になった。はっきりとそう感じるようになったのはここ数年のことだ。

    海外では高級でもなんでもないランチで2000円もしたりする一方、国内では今やコンビニ弁当が(コンビニでない弁当でも)400円前後で買えるようになってたりする。90年代にヨーロッパに旅行したときは何でも安く感じたが、今ではすっかり様変わりだ。

    これまでも不景気とか失われた10年(そして20年、さらには30年)とかで停滞感はあったとしても、日本は曲りなりにも先進国であるというのは、疑うことのない前提として存在していた。

    だが、かつては一人あたりのGDPで先進国トップだった日本は徐々にランクを落とし、気がつけば先進国最低レベル。それどころか、中国その他の新興国の都市部中間層にも追いつかれ、貧困が静かに広がっている。

    本書は日本がすでに貧乏な国であること、先進国で最低レベル、いやもはや先進国から脱落しているということをデータを交えながらはっきり示している。うすうすそうだろうとは思っていたが、改めて事実として突きつけられるといささか衝撃だ。

    普通に職があって働いているのにまともな生活ができないワーキングプアのような現象も、もはや先進国じゃないと考えればある意味納得できる。

    本書にはなぜ日本がここまで安くなってしまったのか、その原因を考察し、これから取るべき対策まで書かれている。ただ現状を省みるに、日本が今後復活することはないだろう。やれることは個々人が自己防衛することくらいだ。

  • (2022/324)新型コロナの感染拡大が始まった頃の著書だが、それから2年半ほどが経ち、ロシアによるウクライナ侵攻などというとんでもないことが起きたことも重なり、遂に賃金上昇の伴わない(多少ベアあったんだっけか)インフレが現実的に。東南アジアに住んで10年を超えたが、著者の主張は実感を持って分かる。先ずは自国に対する幻想を改めて現実を正しく認識することが大事。

  • 小物はダイソー、服はワークマンかユニクロ、家具はニトリかIKEA、スーパーはOK、外食はサイゼかくら寿司、家電はネットで最安値、なんならAli。こんだけ節約しても旅行なんて滅多に行けないし高級フランス料理なんて食えない。これで日本終わってるって言うと堀江からお前が終わってるんだとか言われる始末。いきなり知らないおっさんから「お前」呼ばわりされるとは、女の人もびっくりしただろうね。

    お前に言われたくねーわ。

    まぁ日本は貧乏になったよ。もともとそんなでもなかったけどさらに。その理由がほんとうによくわかる。わかりやすかった。

  • 結構現実的な話をしていると思いました。個人レベルで何ができるのかを検討することが、すぐに始められる対策かと思いますが、個人よりももう少し大きなスモールビジネスとか地域で何か出来たらいいなと漠然と思いました。

  • 海外では物価以上に賃金も上昇しているが、日本は賃金が安いままで貧困化している。日本経済が低迷から脱却できない最大の理由は、日本企業のビジネスモデルが薄利多売をベースにした昭和型の形態から脱却できておらず、競争力が低いままだから。景気が悪い状態でインフレに進むとスタグフレーションに陥ってしまう。ではどうすれば良いか。日本は輸出大国という前提を捨て、国内消費で経済が回る国に転換すべき。一方で、個人は海外に投資すべき。

  • ★4.6(4.00)2020年5月発行。あまり認めたく内容だが、事実を的確に解説。サンフランシスコでは年収1400万円以下は低所得、グーグルやアップルの新入社員の年収は1500万円程度だと。日本はこれまで一人当たりGDPもトップクラスと思っていたのが、今や先進国の中では下位の方へ。世界では、この20年給与も大幅にアップしているのに、日本だけは昇給ゼロ。これでは、日本人が海外旅行に行っても全てが高く、今やディズニーランは日本が世界で最安値。日本は大国幻想を棄てて、強みを活かす工夫をしないと益々転落・・・。

  • 日本と海外の経済や格差、為替の現状を様々なエビデンスをもとに分かりやすく解説してあり、非常に参考になった。また、日本の悪い部分を述べるだけでなく、これからどうするべきかという善後策がそれぞれに提示されているところも良かった。
    私たちの見ている表面的な数字をそのまま受け入れず、実質的に考えて行動に移すこと。当たり前の今に危機感を覚えること。それらが、一歩一歩着実に前に進んでいくためのひとつの方法だと思う。

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

経済評論家。仙台市生まれ。1993年東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在、「ニューズウィーク(日本版本誌)」「現代ビジネス」など多くの媒体で連載を持つほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。著書に『新富裕層の研究』(祥伝社新書)、『戦争の値段』(祥伝社黄金文庫)、『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『縮小ニッポンの再興戦略』(マガジンハウス新書)など多数。

「2022年 『スタグフレーションーー生活を直撃する経済危機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

加谷珪一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×