白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」 (中公新書) [Kindle]

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  • 中央公論新社
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感想・レビュー・書評

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  • アメリカで展開されているBLM運動が日本でもニュースになる中、「彼らは何と戦っているのか?」と気になって手に取った本書。一面的に語られる白人ナショナリズムについて、実際に張本人たちと関わることで実態に迫っており説得力が強かった。ただの過激派と割り切らず、その実態は多様であり、了解可能な部分と理解できない部分とが絡み合っていた。実際の取材が多くあるため、一方では個人や団体へのフォーカスが強く、人名や団体名、関係で混乱することもあった。白人ナショナリズムについて概論を知るためにはとても良い本だった。

  • 現在の「白人ナショナリズム」と言われる人たちがどのようなスタンスで、どのような成り立ちを経てきたのか、その背景についてある程度の見通しが立った。
    また、一括りに白人ナショナリストといえど、様々な集団・グループ・カテゴリーに分化しており、背景には様々なイデオロギーや価値観の差異が多数のレイヤーとなって、形成されていること、白人ナショナリストの代表格であるKKKは当初は黒人よりもユダヤ人を標的としていたこと等が紹介されており、大変参考になった。

    一方で「アメリカにおける人種差別」がどのような歴史的背景をもってなりなってきたのか、またマイノリティを差別する社会的な構造がどのように再生産されてきたのかについては本書の主題ではないため、このカテゴリについて勉強を始めた自分の中でまだ疑問が残った。

    なので今後の課題としてはアメリカ建国から黒人奴隷の成り立ち・南北戦争から解放宣言、公民権運動へとつながる一連の流れを把握する事、黒人以外の移民に焦点を当てる、「今でも」残っている人種差別の社会制度、そしてそれが自分の住む国・地域においてはどのような形を取っているのか?について調べてみたいと思う。

    今後、そういった基本的な情報を身につけた上で本書を読むとまた違った発見があると思う。
    アメリカを発端として世界中で人種差別に対するデモが盛り上がる中、「ちょうどいいタイミング!」と思って手に取った本書だったが、自分の無知に気付かせてくれた良書。

  • ふむ

  • アメリカの大統領選挙でトランプ氏が当選したときに、その背景にあった白人層の存在。それが当否に影響があったのは、ニュース等でよく見たりした記憶があるのですが、詳細具体的に何だったのかについては良く分かっていませんでした。本書では、いまのアメリカにある「白人ナショナリズム」について、著者の実体験も交えながら解説されています。白人はそれ以外と何が違うのか。社会的に置かれた立場などもヒントに、それゆえに「ナショナリズム」を声高に叫ぶことの出来ない、逆にそれ故に結束して訴え出る。その複雑な心境や境遇を知ることから、ニュースなどで見聞きする、一見不可解な現象について理解するヒントを得ることができます。アメリカで今何が起こっているのかを、本書から得た知識から理解することが出来るのではと思います。

  • 一口に白人ナショナリストと云っても立ち位置や主義に多様と差異がある。その変遷と思想背景を丁寧に辿った内容でアメリカのいまが分かる。

  • トランプ政権誕生以降、白人至上主義と自国第一主義が結びついた「白人ナショナリズム」が注目されるようになった。テレビを見ていると、同思想において過激な団体が取り上げられることもしばしばあるが、実際には、学歴も高く紳士的な人も少なからずおり、彼らはポリティカルコレクトネスによって表現の自由等が制限されているという主張を述べている。この考えは、現在日本における在日朝鮮人等マイノリティーの問題と共通するところがある。アメリカ社会のリベラリズムと保守主義の対立以外の潮流を知ることができて参考になった。

  • 週刊ダイヤモンド2020711掲載

  • 白人ナショナリズムという分断が生まれた背景を歴史的、構造的に説明した本。

    白人ナショナリズムといっても様々な種類があり、反ユダヤ主義から陰謀論、反グローバリズムなど、多様なイデオロギーが存在ふる。

    様々な思想形態の説明がされており、分野に疎い自分には参考になった。

    近年民主主義国家にとける分断が嫌でも目につくが、中でも深刻なのがアメリカだ。
    この事態を対岸の火事では受け取められない自分がいる。僕らはどこまで理性的であれるんだろうか。

  • 【新着図書ピックアップ】2020年上半期、世界はパンデミックに翻弄されている。その感染拡大の”中心地”となっているアメリカで5月25日、白人警官による黒人男性の窒息死事件が起こり、これを機に #BlackLivesMatter 運動が拡大。更なる混乱と混迷が深まっている。そのような最中に発刊された本書『白人ナショナリズム』。この本には今回の事件も含め、アメリカが長年繰り返してきた白人によるアフリカ系アメリカ人に対する人種差別の背景が、具体例を交えて一気に紹介されている。さらに、著者あとがきには、本書の内容に付加すべきこととして、米国の人種問題を見つめる日本からのまなざしについて、そして現在のコロナ禍が米国社会の分断と恐怖を煽る風潮が先鋭化する可能性についても触れられている。このような内容から、2020年の今、このタイミングで読むにふさわしい一冊ではないだろうか。そして可能であれば、米国の出来事を「対岸の火事」とせず、我が事として受け止める想像力を持つステップに繋げることが本書を読むもうひとつの意義になるのではないか。

  • あとがきにある様に、白人ナショナリストの価値判断よりも分析を、評論よりも記述を重視した一冊。
    その為、内容の大部は淡々と進み物足りなさを感じる人もあるかと思うが、各章の末尾やあとがきには著者の評論が書かれている。
    まずそこを読んだ上で、通して読むか否かを判断するのもいいかも。

    白人ナショナリズムを時代に逆行するものとして一笑に付すのは簡単だが、いざ自分達が将来似たような立場に置かれた時、果たして彼らと同じ行動を取らないと言い切れるのか。その様な仮定を念頭に置きながら読み進めるといいねかも。

    ジュンク堂書店難波店にて購入。

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著者プロフィール

渡辺靖

慶應義塾大学SFC教授。1967年(昭和42年)、札幌市に生まれる。97年ハーバード大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。オクスフォード大学シニア・アソシエート、ケンブリッジ大学フェローなどを経て、99年より慶應義塾大学SFC助教授、2005年より現職。専攻、アメリカ研究、文化政策論。2004年度日本学士院学術奨励賞受賞。著書に『アフター・アメリカ』(サントリー学芸賞・アメリカ学会清水博賞受賞)、『アメリカン・コミュニティ』『アメリカン・センター』『アメリカン・デモクラシーの逆説』『文化と外交』『アメリカのジレンマ』『沈まぬアメリカ』『〈文化〉を捉え直す』など。

「2020年 『白人ナショナリズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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