はじめてのスピノザ 自由へのエチカ (講談社現代新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 『スピノザの診察室』夏川草介著のスピノザとは何か知りたくて読んでみた。
    「人間も自然の一部である」ということかな。

    「神即自然」
    →「神すなわち自然」
    →「人間も自然の一部」
    →「人間も神の一部」

    スピノザの考えを理解するには、コンピュータに例えるとOSを変更しないと難しいというような内容が書かれていたけれども、私にとったら自然と受け入れられる思想だったので、私の脳みそ(OS)は現代からはかけ離れているのかもしれない。
    人間の自由意志を否定する考えにも、そうだよねと思える。

    AIについても興味深かった。私は、哲学とAIはすごく相性がいいと思っている。
    スピノザとは関係ないけれど、プラトンのイデア論はディープラーニングに近い考えじゃないかと思うし。

    スピノザについて、結局はよく理解できていないけれど、嫌いじゃないなという感想。

  • 『エチカ』を主として、スピノザの思想をコンパクトに伝える新書、約170ページ。NHK「100分de名著」に新章を加えた増補改訂版となっている。

    著者によれば、スピノザの思想は「ありえたかもしれない、もうひとつの近代」を含み、他の思想家と違ってOSそのものが違うため、理解することが難しい。そのための橋渡しを買って出たのが本書ということになる。

    第一章では、「汎神論」の概念が説明される。ここでは神には外部がないというスピノザにとっての神は、宇宙や自然のようなイメージである(だからこそ当時、無神論的だとして非難された)。そして、そのような神(宇宙・自然)の一部としてしか存在しない我々にとって、完全/不完全や善悪といった区別は「組み合わせ」としてしかありえないという認識を知らされる。
    つづく第二章では、「コナトゥス」という哲学用語が話題の中心になる。コナトゥスは人間を含む各個体が状態を維持しようとして働く力のことで(恒常性に近い)、そのもの(人)の本質を守り維持するためにある力だといえる。ここではあわせて、デカルトの「心身二元論」と対置する形で、スピノザの「心身並行論」が紹介される。スピノザの「心身並行論」では「精神が身体を操縦している」というイメージを斥け、それぞれ(心身)を独立した要素ではなく"属性"として捉える。

    サブタイトルと同じ見出し名を与えられた第三章は本書の核であり、ピークといえる。これまでの章で登場した「汎神論」「組み合わせとしての善悪」「コナトゥス」「心身並行論」といった考え方も、本章にてスピノザにとっての「自由」を知るために必要な前提となっている。そして、「『エチカ』が目指す最終目標はとてもシンプルで、「人間の自由」に他ならない」。

    「自己の本性の必然性のみによって存在し・自己自身のみによって行動に決定されるものは自由であると言われる。これに反してある一定の様式において存在し・作用するように他から決定されるものは必然的である、あるいはむしろ強制されると言われる。(第一部定義七)」

    スピノザにとっての自由は「自由意思」や「自発性」ではなく、先の「コナトゥス」からくるような必然性として考えられる。前述の善悪や神への捉え方からもわかる通り、人間を含む全ての存在にとって、制約がない完全な自由などはそもそも存在せず、そのような私たちにおいては個々の必然性に従うことこそを自由と定める。反対に、「必然性に従うこと」=「本質」を踏みにじるような力が、「自由」の反対にあたる「強制」に該当する。
    つまり、「自分に与えられている条件のもとで、その条件にしたがって、自分の力をうまく発揮できること。それこそがスピノザの考える自由の状態」ということになる。

    第四章では、「真理」がどのようにして得られるかに焦点が移る。ここでも、近代哲学の方向性を作ったと言われるデカルトとの対比でスピノザの認識の特徴が描かれ、「ある意味で密教的」という比喩が理解しやすい。
    つづく第五章は、ここまで何度もスピノザとは対照的、かつ批判の対象として参照されたデカルトの再評価のためにある。本書全体の流れからいえば補足にあたり、おそらく新装版として書き加えられたとされている一章がこの章だろう。全五章でもっとも短い。

    本書から与えられるスピノザの主だった印象としては、一種の直感主義のように映る点は挙げられる。それだけに読み手によっては、オカルトじみてうさん臭いものとして敬遠する向きもあるかもしれない。ただ、私自身としては違和感なく肯定的に受け取ることができた。
    そして本書の何よりのポイントはやはり、サブタイトルや帯文でも謳われている、「自由」のあり方についてであり、深く共感できるものだった。著者の解説を通して、先の「第一部定義七」にあるスピノザにとっての「自由」を理解することは、著者も指摘する現代的な「意志」の強迫観念に取り憑かれた人びとの心を軽くしてくれるのではないだろうか。
    第四章・五章の一部で披露される、AIと人間の未来に関する考察も面白かった。

  • 組み合わせとしての善悪、力としての本質、必然性としての自由、力の表現としての能動、主体の変容をもたらす真理の獲得、認識する力の認識…これらのスピノザの概念を知るだけでも、この社会の問題点を理解するヒントになるはずだ。

  • 非常にわかりやすい。ところどころギリギリ話についていけたな....というところもあるが、それでも基本的にスピノザをかなり噛み砕いて説明してくれている。

    神即自然というスピノザの考えが好きで、スピノザの考えをもっとよく知りたいと思っていたので、平易な入門書があって助かった。スピノザの考えは東洋的だなという印象をもった。スピノザと東洋思想のつながりについて論じている本があれば、是非読んでみたい。
    また、ドゥルーズなどの現代哲学にも触れられていたので、そこあたりも今後深掘りしてみたい。

    以下、気になった箇所の要約。

    ◎神即自然
    すべてが神(自然)そのものであり、それゆえ不完全なものは存在しない。あるのは小なる完全、大なる完全という区別のみであり、善悪は組み合わせで決まる。

    ◎自由について
    自由とはある条件の制限下で自分の力を発揮することである。
    行為の原因が自分の中にあってこそ行為は自由で能動的といえるのであり、原因が外部にあっては自由とはいえない。その意味で、カツアゲや拒食や自殺は原因が外部にあるため、能動的な自由ではなく、受動的であり、強制である。

    もちろん、完全な自由は存在しないが、すこしずつ自由の度合いを高めていくことはできる。

    ひとに自由意志は存在しなく、それは意識の自由がないという意味ではない。行為はいつも多元的に決定づけられるのであって、意志が行為のすべてを決めてしまうわけではない。
    現代は意志が全てを決定づけるような思い込みが多いが(「意志が弱いから学校にいけない」「意志が弱いからアルコール依存になる」)、この意志信仰の呪縛から解放される必要があるかもしれない。

    ◎真理について
    スピノザの語る「真理」は、「真理にであえばそれが真理だと分かる」というものであり、デカルトの「我思う、ゆえに我あり」のような他人を説得できるような類のものではない。
    スピノザは、真理とそれに向かう自分との関係だけが問題にしており、デカルトのように誰からみても明晰であるようなものではない。
    そのため、スピノザの真理の定理は近代科学に抵触し、密教的とも言える。現代の人間がスピノザの哲学を理解するにはそももそもの思考のOSを切り替える必要がある。

  • 「はじめてのスピノザ」というだけあって、用語の説明から丁寧に解説しているが、スピノザ哲学という内容のため、抽象的で、頭に入るようで入らない。噛み砕くと、人は、自らが原因となって何かをなすときに能動となり、自らを自由にする。そうすることで個性(コナトゥス)が高められる、ということ。マズローのモチベーションやフロムが言う主体性にも通じる。主体的に・自由に生きていくことの尊さを学べた

  • 非常に難解であろうスピノザ哲学を、飽きることなく通読できるようにうまくまとめられている。『暇と退屈の倫理学』の根底にスピノザがあったんだなということがよくわかった。

  • 相変わらず読みやすい文章でした。
    デカルトとの比較で、スピノザの考え方についてのお話し。自由な意志など存在しない、万物は神の様態である、主体の変容と真理の獲得、のところが最も興味を持って読めました。

  • スピノザの哲学について、その主著である「エチカ」を中心に説明されています。近代に確立した考え方や認識について、それが現代にまで影響しており、私達がそれに囚われていること。そのためにスピノザの考え方を理解することが難しくなっていることを知ることができます。著者はそれをOSという言い方で説明されていますが、これはとても分かりやすい考え方だと思いました。近代に確立されたOSについて、その立役者だったデカルトの考え方についても分かりやすく書かれています。そしてスピノザのOSはどういうものなのか。それを知るということが自身にどのような変化をもたらし、それがスピノザの哲学を学ぶ上でどのように影響するのか。現代において、今までの常識などの考え方が通じなくなる局面が増えてきている中、違う視点で物事を見るとはどういうことなのか、視界が開けるように感じました。スピノザの入門書として非常に分かりやすく読ませていただきました。

  • タイトル通りはじめての人のためのスピノザ本でした。
    本当にはじめの一歩という感じで難しい概念も噛み砕かれており、コツコツと読めました。

    骨子としてスピノザは現代とは考え方の枠組みが違うというものです。

    著者の他の本も読んでみたくなりました。

  • 薄い本だが、ライトに意外性を感じさせるのを上手く実現している。

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著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科准教授

「2020年 『責任の生成 中動態と当事者研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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