みんなの民俗学 (平凡社新書0960) [Kindle]

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  • 平凡社
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  • 「ヴァナキュラー」=「俗」を軸にした、現代民俗学の紹介本。

    家庭内ルール、大学キャンパス、各職業、喫茶店モーニング文化、B級グルメなど、私たちの生活に身近なところから、習慣や文化をまとめた事例紹介になっています。

    生きた事例紹介という意味ではとても面白い内容ですが、そういう口頭伝承がなぜ成り立ったのかや、それがあることによってコミュニティへの影響がどうあるのかなど、もう少し踏み込んだ分析、考察を読んでみたい気がしました。

    サブタイトルにある「ヴァナキュラー」にしても、支配的権力、啓蒙主義的合理性、普通、主流、中心といった価値観やシステムになじまないものとありますが、この定義でいくと、支配的権力等に対するアンチテーゼ的な意味合いが強くなってしまうのかなと思いました。
    確かに、柳田国男が「遠野物語」で書いた「願はくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ」というのは、近代化に対するアンチテーゼですし、南方熊楠などは明治政府の行う神社合祀への反対運動に身を投じていましたが、そもそも二項対立で語ること自体が、民俗学に合わなくなってきているのではないかと思いました。

    本書で取り上げられている「B級グルメ」も、もはやある意味ではブランド化してますし、働く人たちのヴァナキュラーでいうと、職場の口頭伝承のどこまでが「俗」で、どこからが業務に必要な経済合理性を語ったものなのか、切り分けが難しいものもあると思います。

    二項対立で語れない、曖昧模糊としたものを語る切り口として、現代民俗学やヴァナキュラーは有効な手段のひとつだと思います。

    現代社会で起こっている事象をすべて飲み込む、民俗学の懐の広さを知る上では、民俗学に興味を持つための入り口として、よい本だと思います。

  • ヴァナキュラー!なんか響きが良い。

    学校の七不思議、OLたちのバレンタイン、裁判官の飲みニケーション、北国の水道マンのノウハウ、駅にある小さい池、トラックドライバー同士の挨拶、関西喫茶店のモーニング、B級グルメ、パワーストーン、どれもこれも民俗学であるのだという、考現学めいた自分にうってつけな本。
    学術的にも、興味的にも楽しかった。

    学術的な話だと、民俗学は赤瀬川原平の路上観察学でだいぶゆるい方向に理解が上書きされてしまっていたが、啓蒙主義の対局にいるしっかりとした学問だという考え方は初めて知った。
    そもそも啓蒙主義は無知蒙昧な人々を合理的な知識で導いていくという学問。良いところはあるが、社会に固有な暮らしや、日常の言葉などこそが啓蒙していく対象だと否定していくという、その考え方に対する「対啓蒙主義」として作り出したのが18世紀のドイツのヨハン・ゴットフリート・ヘルダー。
    しかも同じ時期にいたグリム兄弟がまた物語の収集という形で民俗学をしていた。
    グリム兄弟が民俗学!おもしろい。

    興味的にはジンギスカンは北海道だけじゃなく、遠野でも人気。
    おせち料理を元旦に食べず、大晦日に食べるところもある。これは一日の始まり終わりが0時ではなく、日の出日の入りで考えると大晦日の日没後にはもうおせち料理を食べるということになるとかそういう。

    また、紹介される関連書籍がどれもこれも楽しそう。

  • 天地の事象はすべて、民俗学の対象?
    モーニングもアマビエも。
    底深いな、ヴァナキュラー。

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著者プロフィール

1967年生まれ。関西学院大学社会学部長、教授。専門は、現代民俗学、民俗学理論。著書に、『みんなの民俗学』(平凡社新書、2020年)、『民俗学を生きる』(晃洋書房、2020年)、『〈生きる方法〉の民俗誌』(関西学院大学出版会、2010年)などがある。

「2023年 『クィアの民俗学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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