旅する練習 [Kindle]

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  • 講談社
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感想・レビュー・書評

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  • サッカー少女と小説家の叔父が、歩いて千葉の手賀沼から茨城の鹿嶋を目指す。
    旅をしながら、サッカー少女が成長していく様は、さわやかで、読んでいて心地よい感じがした。
    最後はえっ、ってなった。
    次の旅を楽しみに読み終わると思いきや、、
    ぜひ、ぜひ、次の旅をしてほしい。

  • まず、なんでこれが芥川賞をとらなかったのか不思議。

    小説を読んでぽろぽろと涙をこぼしたのはすごく久々な気がする。とはいえ泣ける小説が良い小説というわけではないのだけど。

    語り手の「私」は作家。新型コロナが拡大し緊急事態宣言が発令される少し前、彼は姪っ子の亜美(あび)と徒歩旅行に出る。一応、亜美が鹿島市にあるサッカーの合宿所から持って帰ってきてしまった本を返しにいくという目的がある。
    またこの度は、二人にとって「練習」の旅でもある。「私」にとっては、風景描写の練習の旅。亜美にとってはリフティングの練習の旅だ。
    道中、みどりさんという鹿島アントラーズファンでジーコを尊敬している大学生と旅をともにし、練習の旅はいっそう忘れがたいものになっていくーー

    鳥や植物、地形や地名、そして亜美の様子などが、ときに衒学的にすぎると思われるような筆致で、端正に、克明に、描かれるわけだけれど、それよりも気になったのは、ちょっと感傷的すぎるのではないかということだった。

    ところが、それには理由があった。いささか唐突にその事実は明かされるが、感情を抑えた、格調があることでかえって滑稽でさえある文体でそれを描かれると、たまらなく切ない。
    それなら仕方がない。よくここまで語りきったね、と語り手を応援したくもなったり、とにかくいろんな気持ちが交錯して胸いっぱいだ。

    この読書体験を大切にしたいので、同じ著者の作品はとうぶん読まないようにする。

    • まきとさん
      読まないのはもったいないですよ。ここまで作者を理解されているんだから、作者の成長を受け入れてあげて、本当にファンになってあげて欲しいものです...
      読まないのはもったいないですよ。ここまで作者を理解されているんだから、作者の成長を受け入れてあげて、本当にファンになってあげて欲しいものです。何か僕の言いたかったことを上手に表現してくださって感謝です。
      2022/02/21
    • ouiさん
      まきとさん
      ありがとうございます!そろそろ読もうと思っているんですが、そしてますます読みたくなってもきましたが、どれもタイトルが良すぎて決め...
      まきとさん
      ありがとうございます!そろそろ読もうと思っているんですが、そしてますます読みたくなってもきましたが、どれもタイトルが良すぎて決めかねてます笑 消費するように次々と読みたくない作家でもありますので、がまんして「その時」をじっくり待つことにします。
      2022/02/22
  • amazonレビュー済、下記内容にて。

    芥川賞候補作という事で、特に何も期待せずに読んでみた。ただ、作者は以前にも「最高の任務」で同賞の候補作に選ばれたこともある、という事をのちに知った。

    主人公(著者本人であろうか?)と、小学校6年生になる姪っ子のふたりが、コロナ過で外出ままならない(多分2020年春ころと思われる)中で、サッカーボールを転がしながら都内から?、鹿島市(アントラーズの本拠地である)を歩いて目指すというよくあるロードムービー的な小説である。

    同行する姪っ子(亜美という)のいかにも子供らしい言動、行動にほのぼのとしながら読み進めていける。途中、未熟な女子大生との出会いと別れ、そして再会等あるが、それほどの抑揚もなく物語は進んでいくように感じられた。ただ、随所で歩くことによってのみ得られる情景の感動的な記述(さまざまな種類の野鳥を見る事とか、川面の流れ、樹々のざわめきを眺めるとか…)がなされており、また、かつての歌人、小説家、の創作が訪れた地域の情景とともに引用、紹介、解説されており、その地域を一度でも訪れたことがある人ならばより感銘することが多かったのでは無いかとも思う。

    淡々とした物語は姪っ子の時としてハラハラさせる行動もありながら進んでいき、感動的なしかしあっけないゴールにたどり着く。まさに「旅する練習」とは、この小学生、亜美、にとっての人生の第一歩でもあったのだなぁ…とも感じさせてくれる。

    そしてラスト1ページで記述された内容は…何ともせつない、悲しいものである。事実であれば、この「旅した記録」をこのような形で記していく事、により、その悲しみに寄り添うこと、また残された者の心の中に、より深く残っていくこと、ができるのではないか…とも感じた。

    • ストレンジャーさん
      けんけんさんのレビュー見て
      共感します。この本は私に
      衝撃的な読後体験を与えてくれた本です。なんていうか、本当に
      最後1ページ読み終わったあ...
      けんけんさんのレビュー見て
      共感します。この本は私に
      衝撃的な読後体験を与えてくれた本です。なんていうか、本当に
      最後1ページ読み終わったあと
      置き去りにされ、夜中読了したにもかかわらず、えんえんと泣きました。悔しくて、やりきれなくて
      泣きました。
      練習の旅ではなく、旅する練習って言葉の意味がなんとなく理解できました。野鳥センター?アビと行きたかったであろう、叔父さんの深い後悔の念を思い、大好きなサッカーを
      もっとしたかったであろう、アビの想いを思って胸が苦しくなりました。この本を思い出す度、大人になったアビの眩しすぎるゴールパフォーマンスがいつも思い浮かびます。
      2023/01/11
  • 自然描写とかルートの詳細などがその土地の人にはよくわかるだろうと鹿嶋に住む知人の方におすすめしちゃおうかなぁ、とか考えていたのに、なんで、ハッピーエンドにしなかったのかな。がっかり

  • 植本一子さんが帯文を書かれてたいたので手にした。昨年のコロナ禍が出始めの3月、学校が休校になった姪と作家の甥の徒歩旅。手賀沼から鹿島スタジアム近辺まで。これは…、わたしの実家への徒歩旅といっても過言ではないじゃないか。と、やや興奮気味に読んだ。利根川がいつもそばにある。旅の風景や地名を記録すること。その時の思い出が織り込まれれた風景描写や地名は、私たちの中にある記憶(いまはもう失われた場所や人)をすこしでも長生きさせてくれる。記憶の中を旅できた一冊。

  • 学生時代に測量をしていたので地形のことが描かれているところ、うまい表現だなあと思いました。
    鹿島の土地勘が伝わってきました。広い関東平野を流れている利根川も多くの支流を集めているんですね。曲がり角で道路を渡るだけのことに、精緻に描写されているのもありありと人物が浮かびました。
    人物としてはみどりさんの決心に心打たれました。亜美とみどりさんの関係。出会ったばかりなのに心打ちとけていく。同じベッドで寝れるのも子供と大学生と言う関係かな。大人ではそうはいかない。それぞれが練習をしている旅なのに、題名が旅する練習になっている意味を考えさせられました。また、俳句を土地土地で残していった松尾芭蕉の「奥の細道」にも通じる。私の風景の描写は僕も真似てみたいと思いました。

  • 話題になっていたので手に取ったが、趣味に合わないのか、おもしろくない。
    スケッチするように景色を書く、というのも気取った印象しか受けない。
    うーん、、、残念。

  • 新型コロナの臨時休校中に、もうすぐ中学生になるサッカー少女の姪と叔父が千葉の我孫子から利根川の堤防道を歩きながら鹿島アントラーズの本拠地を目指す、という話。

    叔父は歩き、姪はリフティングしつつゆっくり鳥や自然をウォッチャーしながらの旅。

    ゴールに着いた時に”本当に大切なことを見つけて、
    それに自分を合わせて生きるのって、
    すっごく楽しい”という考え方につい、共感して
    「いい話だったなぁ」と思ったのに・・・

    結末がちょっとつらすぎました。

  • 亜美(アビ)と自分が手賀沼(我孫子)から鹿島アントワーズの合宿所までリフティングをしながら合宿所から持ってきた本を返す話である。場所ごとに亜美の学校に提出する日記の文章がある。日記の前には真言を唱えている。ロードムービーの小説版である。地図がついていないのがざんねんである。地図の挿絵があればもっと楽しめたであろう。帯には芥川賞候補作とある。朝日新聞の千葉県紀行の紹介本である。

  • いやあ、読みにくかった!笑
    風景描写が多いからもうほんとに進まなくて正直諦めかけたけど、読み終わった達成感たら!!

    叔父さんの姪に対する愛おしさは存分に伝わってきた。

    亜美ちゃんの子どもらしい生意気さや憎めなさ、子どもっぽくない気遣いの上手さや周りを明るくする力。

    亜美ちゃんの存在そのものに、叔父さんの世界が照らされてたんだなってちょっと泣ける。

    ラストはハッピーエンドで終わってほしかったなあ。
    オムライス食べたくなる。

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著者プロフィール

1986年北海道生まれ。法政大学社会学部メディア社会学科卒業。2015年『十七八より』で「群像新人賞」を受賞し、デビュー。18年『本物の読書家』で「野間文芸新人賞」を受賞する。23年『それは誠』が「芥川賞」候補作となる。その他著書に、『十七八より』『本物の読書家』『最高の任務』『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』等がある。

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