恋するアダム (新潮クレスト・ブックス) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  •  aiの進化は加速度的に進んでいる。最近話題のチャットGPTも最初目にした時大変驚いたが、今はもう当たり前の感がある。この進化はものすごい勢いで進むことだろう。
    この小説は、歴史改変SFである。コンピューター技術が高度に発展した、もう一つの世界の物語だ。フォークランド紛争が起こった時(1982年)にはもう人造人間が開発され、第1号が家庭用に販売されている。その第1号アンドロイドを購入した男性がこの小説の主人公だ。
    イアン・マキューアンの作品はどれも期待を裏切らないが、この小説ももちろんそうだ。アンドロイドを通して、人間が見える。「人」とは確かに、統一した論理がなく矛盾に抱えながら破綻することなく生きている。アンドロイドにはこれができない。矛盾を抱えながら存在することができない。この不統一、矛盾は大きな負担となり自殺をしたり、自ら脳死状態に追いやるアンドロイドが次々現れる。でも主人公と暮らすアンドロイドはそうした破綻することなく存在し続ける…その理由はどうやら愛のようなのだ。アンドロイドにも愛という感情を持つことができるのかはさておき、物語は愛ゆえのアンドロイドの突飛な行動が描かれている。アンドロイドとの生活はきっとこんな風になるにちがいないと、リアルに思える小説だった。

  • 自宅にPepperが来たら、ではなく「人間のようなロボット」が来たら、という話。「汎用AI」は、AIの技術進歩で実現できそうな無理そうな、微妙な近さと遠さが両立するテーマなので、マキューアンをもってしても扱いづらい印象を受けた。
    アダムのようなロボットを買って、ぼんやりと思索にふけらせるなんてもったいないが、金を稼がせることやロボットに怪我をさせられることの問題はスルーできない。子供という存在が重要になったり、ロボット達の行く末が緩慢な死という成り行きはいまひとつ新鮮味はない。
    とはいえ、舞台がチューリングが生きて汎用AIの開発に寄与するパラレルワールドであり、アダムのキャラクターや文学論などにはマキューアンの遊び心が伺え、楽しかった。
    表紙が若いトビー・マグワイアのような男性で、映画化してほしい。

  • 自我を持つ機械が日常生活に入り込んできたとき、人は彼らとどのように接するべきなのだろう。刺激的な一冊。

  • どうも最初っから人間の男の主人公が、駄目人間で好きになれなかった。対してアダムは、冷酷だけどクレバー、でもなんか無駄なところがあり、機械だからか単純なところもあって嫌いになれない。
    で、結局人間は自分の欲に忠実のまま、正義とかなんかは自分の利益が阻害されればどっか行っちゃう。
    アダムが動かなくなったところで涙が出た。映画のブレードランナーを思い出す。人間とアンドロイドは共存できないんだろうか。
    読み終わったばかりで、考えがまとまらないけど、ものすごく深い何かを呼び覚まされた気がする。

  •  もし、あなたが、アンドロイドを購入し、初期設定の入力をするとしたら、協調性、外向性、知性、勤勉性、情緒安定性等、性格を形成するパラメーターは、どうバランスをとって設定しますか。そもそも希望するのは男ですか女ですか。その自ら性格設定したアンドロイドが、知識と経験を蓄積し、ディープラーニングし、自分の恋人に恋をし、セックスまでするようになったら、あなたは何を想いますか。
     アンドロイド・人口知能が、今後どう進化していくのかは、まだSFの世界も、そのアンドロイドが、もし自らの意志をもつようになったら、「自分の電源をかってに切られないようにする。ほとんどが自殺をする」という想定は哀しい。心がやどるとしたら、それはもはやアンドロイドではないのだから…。
     近未来の物語でありながら、天才数学者やフォークランド紛争を取り上げ、過去のありえたかもしれないもう一つの過去も描く。イアン・マキューアンの挑戦作。

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著者プロフィール

イアン・マキューアン1948年英国ハンプシャー生まれ。75年デビュー作『最初の恋、最後の儀式』でサマセット・モーム賞受賞後、現代イギリス文学を代表する小説家として不動の地位を保つ。『セメント・ガーデン』『イノセント』、『アムステルダム』『贖罪』『恋するアダム』等邦訳多数。

「2023年 『夢みるピーターの七つの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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