テスカトリポカ (角川書店単行本) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 本の分厚さと 文字の量の多さで読むのに
    時間かかりましたぁ〜
    暴力的な内容で 過激で 容赦ないって感じですね。メキシコの治安の悪さにも驚かせられました。
    銃撃戦や人殺しが当たり前にある地域があるなんて思わなかったから
    平和な日本に暮らせて どんなに幸せなんだろうと感じました。今の日常生活が当たり前じゃないんですよねぇ
    裏社会の事を フィクションですが 詳しく
    知れて とても興味深かったです。
    登場人物は 皆 残虐性が強く
    拷問シーンは目をそむけたくなります。
    あと 主人公コシモの 純粋さ バブロの優しさには 心を打たれました。
    ラストは 賛否両論があると思いますが
    私は良かったと思います。
    カフェで読んでましたが また泣いてしまったよ… 
    暴力シーンや残虐なシーンに抵抗ない方は
    読むのをオススメしたいです。
    裏社会の事が詳しくなります。

  • 賞も取ったし話題になっていたのは知っていたけど、わたしが読むジャンルではないな、っていう思い込みがあってまったくスルーしていたんだけど、最近、「国内小説でも海外まで広がりのあるもの」みたいなのを読みたいと思っているので読んでみたら、まさに圧倒されて茫然とした。スケールが大きいし、すごく引き込まれるし、今の社会についていろいろ考えさせられたし。麻薬組織の話なんかはドン・ウィンズロウかと。いや残酷さやグロさはドン・ウィンズロウより上かも?っていうくらい。まあその残酷さやグロさは強烈すぎて薄目でしか読めない感じもあって、むしろわたしは臓器売買の話が興味深かった。興味深いとかいうと語弊があるけど、いやこんなことまさか…と思うけど意外とリアルで現実にありそうで恐ろしすぎた。臓器売買、臓器移植ビジネスって究極の資本主義ビジネス……。資本主義のなれの果てというか、金儲け主義の行きつく果てを見た気がする……。結局、お金のある人が弱者を犠牲にしてなんでも思いどおりにするような恐ろしさ……。しかもお金があれば罪悪感を抱かないまでいけるような恐ろしさ……。
    最初わたしは愚かにも、麻薬組織の話と臓器売買の話にどういうつながりが?って思ったんだけど、臓器移植ビジネスと麻薬組織、裏社会が結びつくっていうのも考えてみればそうだよねと思った。著者のインタビューで、日本で大麻関連の事件があっても、大麻くらい、っていう人もいるけれど、麻薬のせいでメキシコなどでどれだけ多くの人たちが犠牲になって死んだりしているか、って言っているのを読んだけど、確かにそのとおりだし、そして麻薬組織の金がほかのどんな恐ろしいビジネスにまわっているのかって考えると、たかが大麻、とか思えないっていう。こんなふうに、本を読むことで、世界を広く知ることができる、広い視野をもつみたいなことができるってすごいとかまで思ったり。
    麻薬組織の話とかってちょっと「悪の美」とか「家族の絆」みたいなちょっと美しげな話にもなったりするんだけど、そういう要素はこの小説ではわたしは感じなくて、ひたすら「悪」としか思えなかった。アステカ文明の話で、神に捧げるいけにえとかもその文明の貴ぶべく伝統みたいに美化されるのもどうなのか、とか思ったけど、でも、人間が群れをなして生きていくには、人間の集団に必ず生じる連鎖する憎悪や殺意を消すためにいけにえが必要、っていうのは、なんだかすごく納得した。残虐に人を殺す人たちの憎悪や怒りが黒い煙となって吸い取られていく、みたいな描写が印象的だった。
    で、わたしはどうしてもこの麻薬組織ファミリーは応援する気にはならなくて、だからこの結末には救われた気がして涙が出た。コシモのナイフづくりの師匠だったパブロの良心に救われた。なんというか浅い善意みたいなものではなくて、魂の良心、みたいなものを感じた。私はキリスト教も聖書もまったく詳しくないけど、「『わたしが求めるのは憐みであって、いけにえではない』とはどういう意味か、行って学びなさい」、っていうのに心打たれた。

  • 真夜中に吹く真冬の風のような小説だ。
    冷たく私の口から流れ込み、そっと私のコラソンにナイフを突きつけられた感覚だ。

  • 圧倒的な情報量と知識量、そして容赦無い暴力描写が詰まりに詰まった圧巻の560ページ。その重量は正に鈍器。

    アングラな世界で暗躍する人間達の群像劇。こんな事が日本で起こるわけないでしょ!?というフィクション性も、ページをめくる度に説得力が垣間見えてゾワゾワ。

    こうしてスマホを弄ってる今現在も、どこかで本書のような事が行われている可能性は0ではない。正義の反対は別の正義。

    読み応え抜群で疲労困憊ですorz

    補足
    メキシコ麻薬戦争を読むと更に興味深く読める。とか言っとく。

  • コカイン、麻薬密売、人身売買、違法な臓器移植…アンダーグラウンドな世界にどっぷり浸かった暗い魅力に惹きこまれる物語でした。

    テスカトリポカとは、多神教のアステカ王国において信仰されていた強大な神の1人です。闇を支配するこの神を祝う祭りでは、人の心臓を供物に捧げていたとのことで、キリスト教圏では邪信教として扱われることもあるようです。
    そんなアステカ文明に魅せられた者たちの闇に生きる物語でした。

    元々私自身がアステカ文明に興味があったので、非常に楽しく読むことができました。
    また、アンダーグラウンドな世界を物語の中で垣間見る背徳感も大好きなので、本作はとても満足感が高いものでした。

    すごくおもしろかったです。
    おもしろい作品は内容についてあまり触れたくありません。
    ネタバレ絶対したくない。とにかく読んでください。
    本当におもしろかったです。
    さすが山本周五郎賞受賞作品!

  •  あまりにも壮絶な内容で、感想をまとめることが難しい。この話がフィクションだと理解しつつ、麻薬や臓器売買の闇が、自分の想像よりもはるかに凄まじく、実際に起きていることのように錯覚して恐怖を感じた。怖いのにやめられず、読了後は放心した。
     著者は、どのようにしてこの作品を作り上げたのか?

  • 恐るべき傑作。数多くの物語が籠められている。主軸はバルミノ、末永、コシモの物語だが、リベルタの物語でも、アステカの神々の物語でも、そして登場人物全ての物語でもある。その幾多の物語が接点を持ちつつ、別々の方向を向いた物語となっている。復讐のためにファミリアを作る男の物語であり、クライムノベルであり、ビルドゥングスロマンでもあり、滅ぼされたアステカの呪詛でもあり、すぐれた幻想小説の面もある。また淡々と遠くから語りつつ、読者を飽きさせずぐいぐい引っ張っていく文体がいい。「読書メーター」の感想・レビューを見ていると「残虐」「グロい」「こんなこと本当にあるんだろうか」みたいな皮相な感想があるけれど、ここに描かれた臓器密売ビジネスを絵空事で嫌悪すべきものとして忌避するのでは意味がない。これはフィクションゆえに描くことができた資本主義の本質――強者が弱者の血をすすって肥え太る――である。よくぞ描いた!

  • 第34回山本周五郎賞
    第165回直木三十五賞

    アステカ文明、臓器売買、麻薬密売と、どれも未知て小説でなければ出会うこともない世界へ小旅行して帰ってきたような疲れを感じました(笑)
    決して心地よい疲れではありませんが、しばらくこの不思議な世界から抜け出せず余韻が冷めません。

    命の危険がある状況に身を置きながらも、リスクのある行動をとる頭のおかしい登場人物だらけ。あまりにも命が軽く、闇が深い。実際にあることなのだろうとは思うけど、残酷すぎて自分には現実味がなくむしろ淡々と読めた。

    そして裏社会以上に全く理解できない生贄という古代の風習。あまりにも無駄すぎる。やっていることの見当違いな方向性に苛立ちすら感じてしまいますが、滅亡したアステカ文明の気味の悪さが更にこの小説を重く暗くミステリアスにしています。

    どう物語が終結するのか謎でしたが、後半は緊迫感があり一気読み。この物語を仕上げた作者の技量に感服です。

  • メキシコの麻薬密売組織、臓器移植、宗教的なアステカの習わしがマッチした恐ろしいビジネスに巻き込まれる日本人とメキシコ人のハーフの少年が主人公となる結構ダークな内容の物語。舞台はメキシコ、インドネシア、日本とそれぞれの登場人物のバックボーンが紹介されながら展開していく。
    暴力的な描写も多く、好き嫌いがはっきり分かれそう。
    内容は嫌いではないが、3月、4月のバタバタな最中に聴いたので余り物語に没頭できず…

  • まず、物語の重厚さがすごい。
    巻末の参考文献の量がそれを裏付けている。
    物語は複数の人物に寄り添った視点で書かれている。
    けれども決して人物と同一の視点ではない。それは絶えず一定の距離を置いて人物を描写し、心情を伝え、目に見えているものを読者に明示する。
    主題の力のなせるところなのか、それは文字通りの、「神の視点」と言っていいもののような気がする。
    単なる三人称の神の視点ではない、血の通った、血なまぐさい息を吐く、黒い煙をまとった神の姿を想像してしまう。
    重厚な作品であるがゆえに、いかようにも切り取り方があるだろうが、いくつか私のなかで強く感じたものをざっくばらんに記しておく。

    1)成長
    一人の人間が成長するにあたって、親への全幅の信頼、尊敬、懐疑、反抗、そして巣立ちを経験するように、コシモもまた人として必要なステップを踏んでいく。はじめはそのステップが環境のせいで乏しく、それゆえに成長も感じず、人間性も感じにくい、いわば読者に感情移入を許しにくい主人公像だったものが、社会性を取り戻すステップのなかで、明らかに変わっていく。後半になってぐっと魅力的になってくる。しかしながらそれは反社会的な道へと進んだことで実現してくる。間違いなく彼をはぐくんだのは「父性」であるし、また「ソモス・ファミリア」という言葉の呪縛なのだろうと思う。

    2)信仰
    いわずもがなだが、明確な信仰がこの物語を、強固な屋台骨として支え、この物語ならではの空気を醸し出している。嗅いだこともないコパリの香りが鼻腔を通して脳内に届き、見たこともない煙が漆黒の暗闇に漂うのが眼球の裏から脳内に映像で見える。
    おもしろいのはその伝承が口伝を主にしているということだ。リベルタからバルミロたち4人の兄弟へ、バルミロからコシモへ。言葉を通してその世界が描かれ、その精神性も伝えられていく。煙と香の匂い、暗闇、ジャガー、鏡など、現実に置かれた道具たちがその頭のなかに作られる世界を強くしている。絵や地図などはもちろんとっかかりとして存在するが、バルミロやコシモの頭のなかに、いまはない、あったはずの世界が克明に描写され、その精神性も完全に理解したうえで、信仰は人の心に、脳に、大きな影響を与えていく。
    それを対照的に明らかにしているのが、崔岩寺であり、パブロの父の聖書、そしてマタイの福音書9章である。
    口伝で伝えられる信仰ほど神秘的に心に宿るものはない。

    物語はひとつの終わりを迎えたが、果たしてこの物語はここで終わるのだろうか。
    もしかしたらシリーズ化するかもしれない。してもいいと思うし、してほしいとも思う。

    夜と風は目には見えない。
    煙を吐く鏡の今後の物語を怖いもの見たさでまた覗いてみたい気持ちになる。

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著者プロフィール

1977年福岡県生まれ。2004年、佐藤憲胤名義で書いた『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となり、デビュー。2016年『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。『Ank: a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞、第39回吉川英治文学新人賞を、『テスカトリポカ』で第34回山本周五郎賞、第165回直木賞を受賞。

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