取材・執筆・推敲――書く人の教科書 [Kindle]

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  • ダイヤモンド社
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感想・レビュー・書評

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  • ライターの筆者が、ライターという物書きになるための教科書のようなものを目指して書いたもの。

    文章の書き方、などのような技術的な本ではなく、ライターとして文章を書くための心構えみたいなものを中心に記載している。

    「ライター」のための本というのがまた良い設定で、小説家なんかの、自分でコンテンツを0から生み出す人にはなれないと思っていた自分にとって、非常に響く内容であった。

    下記のような記載が本書にはある。

    ひと言でいってぼくは「ほんとうに言いたいことなど、なにもない」人間だったのだ。
    p.128
    浅学非才で、からっぽのライターだからこそ、おおいに驚き、おおいに感動することができるのだ。さらにその感動が、読者にも伝わっていくのだ。
    p.131

    これには非常に共感できた。
    自分は0からものを生み出すというよりも、素晴らしいコンテンツを体験して、それに対する考え・感想を言語化し、多くの人に伝えたいと考えていた。そして、それで人を感動させることができればなお良いと。
    そんな自分のやんわりとした願いに対する励ましにもなった。そしてそれに対するHowもこの本では学べた。

    取材やら執筆やらに入る前に、そもそも文章とはなんぞやみたいな前提論だったり、他の文章やコンテンツにふれるときの意識の話があるのだが、これも面白かった。

    まずは「読者としての自分」を鍛えていこう。本を、映画を、人を、世界を、常に読む人であろう。あなたの原稿がつまらないとしたら、それは「書き手としてのあなた」が悪いのではなく、「読者としてのあなた」が甘いのだ。

    (p.50)

    とき。「なぜ、こう書いたのか?」だけではなく、「なぜ、こう書かなかったのか?」まで考えよう。
    (p.56)

    いい文章は「最初からそのかたちで存在していたとしか思えない」のだ。
    (p.65)

    みずからの「嫌い」を分析的に、ことばゆたかに語る。たとえ直感的・生理的に思える嫌悪感であっても、そこにある「嫌い」は分解できるし、言語化可能なものだ。
    (p.68)

    わかりにくい文章とは、書き手自身が「わかっていない」文章なのだ。
    (p.109)



    具体の取材のパートについては、正直趣味でやっていく部分にはちょっとタスクとして重すぎるが、心構えとしては非常に勉強になった。さすがに1つの記事を書くのに、本を50冊読むのとかは厳しいので。



    「執筆」のところも非常に面白かった。完全に目からウロコの内容というよりは、自分の中でボンヤリと思っていたことを明確に言語化してくれた感じ。以下面白いなと思ったところ。
    ・課題(題材)を共有することが大事。そのために簡潔で分かりやすい文章の記載が必要
    ・論理の構造、共感性を考えて場面を絞ることが大事。(書かないことの決定)
    ・エッセイとコラムの違い(時事ネタなど、自己の外部にあるものを記載するのがコラム、逆に内面を書くのがエッセイ)
    ・エッセイストには、自己の感情を冷静にみる落ち着きがある。
    ・句読点は明治までなかった(これは雑学)
    ・比喩は遠距離のほうが面白い。


    また、推敲もやはり大事なことを再認識させられた。
    やはりプロは異常なくらい推敲を大事にしている。自分もこの意識の高さは見習おうと思う。迷ったら削る。


    また、下記の締めくくり方も痺れる。こう言い切れる文章を自分も書いてみたいものだ。

    「わたし」を主語とせず、「わたしたち」を主語に生きようとする書き手の総称が、すなわちライターなのだ。
    (p.425)

  • 本書は、文章をどうつくるかに焦点を当てた貴重な一冊です。

    著者は、“つくる人”という言葉を使い、その意味を強調しています。

    文章を書くことは、単なる文字を綴る作業ではなく、アイデアや感情を編み込み、読者の心を動かす創造の過程なのです。

    エンターテインメントの精神を持ちながら文章をつくること―これが大切な要素です。

    文章は単なる情報の羅列ではなく、読者を楽しませ、感動させ、考えさせるものでなければなりません。

    本書はその視点から文章のクリエーションを探求しています。

    https://takamyu.com/book/%e7%b4%b9%e4%bb%8b%e6%9c%ac%e3%80%80%e3%80%8e%e5%8f%96%e6%9d%90%e3%83%bb%e5%9f%b7%e7%ad%86%e3%83%bb%e6%8e%a8%e6%95%b2%e3%80%80%e6%9b%b8%e3%81%8f%e4%ba%ba%e3%81%ae%e6%95%99%e7%a7%91%e6%9b%b8%e3%80%8f/

  •  私は、かなり早くからブログを書き始めた。上海にいるときに楽天で「面白すぎるぜ 中国で農業」と言うタイトルで書いた。それが、ライブドアで「大きな国で」「うろたえる紙魚は泳ぐ」「雑草の都合」などいくつものブログを書いていた。仕事においても、まとめた報告をいくつも書いた。本やプライムビデオをアマゾンレビューに書き、書いたレビューは4000を超えた。頭で考えていることと文章を書くスピードがずれていて、スッキリかくと言うのがなかなかできなかった。それでも、私は、駄文を書くのは好きなのだ。
     それで、先月から、農業技術通信社の月刊誌「農業経営者」の提携ライターとなった。先週第1弾をかなり苦しんで書き上げた。農業経営者の人間臭さとぶざまさを描きたいと思い書いた。また、読んで感銘を受けた「ブランド米開発競争」の著者熊野孝文氏へインタビューもした。
     提携ライターって、意外と大変だと思っていたら、古賀史健による「取材・執筆・推敲」と言う本が、2021年4月7日に発行された。実に480ページもある大作だった。なんか、私がライターになるために書いてくれたような本である。書かれている内容は、「プロのライターになるための教科書」である。古賀史健って、全く知らないと思っていたら、「嫌われる勇気」のライターだった。その本の心憎いほどの編集構成に驚いた。あぁ。こんな本をかけるんだと思った。「トラウマとは 言い訳にしかすぎない」と言う指摘に目からウロコで、嫌われると言う意味を解明した著者だ。編著書累計93冊、発行総計部数1100万部超。と言う怪物ライターでもある。
     ライターとは何か?の定義から始まる。著者は言う「ライターとは、コンテンツを作る人である。雑文家である。そして、からっぽの存在であり、だから取材する。取材して、取材した人の想いを伝える人である。」と定義する。なるほど、今回農業経営者に書いた宮崎のひなたいちご園社長へのレポは、そう書いたなぁ。とりあえず、本筋は間違っていなかった。コンテンツは「ここでしか読めない何かが含まれたときに、初めて本質的な価値を手にする。」と言う。ライターは、一冊の本を読むように、人を読み、世界を読む。ライターはなによりも読む人なのだ。
     さて、インタビュアーとは、聞く人であるが聞くにはHear,Listen,Askがあり、訊くと言うAskが大切。質問する力を磨く。そこから、情報の希少性が生まれる。ありきたりの情報を聞いただけでは、インタビューは成り立たない。その人が言いそうなことから、仮説を立てて、本音を聞き出す。
     知らなかった言うことを引き出すことだ。
    古賀史健は「ぼくにとっての取材とは、対象を『知る』ところから出発して、『わかる』にたどり着くまでの知的冒険だ」と言う。
     倫理的な正しさと論理的な正しさは違う。説得と納得も違う。説得はされるもので、納得はするものである。読者を説得にかかり、読者を論破してしまってはいけない。ふーむ。そうだ!
     会話の中では、意味よりも感情を伝えることが大切。
    「ぼくは、いつも翻案に踏み込み、創作にまで踏み込んでいく。」
    そして、何を書くかではなく、何を書かないかを考える。
    「構造の頑強性、情報の希少性、話題の鏡面性」を追求する。
     桃太郎の童話の画面の選び方、話の構成は百貨店のようであるべきと言うのは、面白い。
    とりわけ、推敲についてのやり方については、非常に参考になった。推敲するのが難しいのは、自分の文章であることだと言うのが、納得。縦書きを横書きにしたり、フォントを変えたりしてチェックする。まさに、プロのライターになるための教科書としてよくねられている。
     古賀史健のライターとしての「秘伝のたれ」が、緻密に具体的書かれていて、これを読んだら、私はプロのライターになっていると錯覚させるほどの本だった。いいねぇ。

  • 本書は、ベストセラー『嫌われる勇気』などの著者として知られるライター・古賀史健氏による、プロの「書く人」を目指すための決定版ガイドブックです。

    全10章、約500ページにわたって、「取材」「執筆」「推敲」の三部構成で、文章を書くための本質的な心得とテクニックが丁寧に解説されています。単なる小手先の技術ではなく、どのようにすればより多くの読者に届く原稿を作ることができるのかという根本的な問いに真摯に向き合っている点が印象的です。

    「取材」の章では、世界を読み解く力、質問力、調査力などを鍛える方法が、「執筆」の章では、文章の基本構造、構成力、原稿のスタイルなどについて、豊富な実例を交えながら説明されています。「推敲」の章では、自分の原稿を客観的に見つめ直し、磨き上げていくプロセスが詳述されています。

    著者の長年の経験と知見に裏打ちされた内容は、ライターを目指す人はもちろん、より良い文章を書きたいと願うすべての人にとって、大いに示唆に富むものでしょう。

    一方で、初心者にとっては少し難解に感じられる部分もあるかもしれません。本書を十分に理解するためには、ある程度の文章力と経験が求められると言えます。

    とはいえ、プロの視点から文章の本質を学べる貴重な一冊であることは間違いありません。文章を書くことで自分と世界を変えたいと願うすべての人に、ぜひ手に取ってもらいたい良書です。

  • 良かった気がするのでもう一度読みたい

  • (筆者の自称)【文章本の決定版教科書】を読みきった。分厚かった。何度も寝落ちした。そういう意味では確かに【教科書】だ。うん。最後まで頑張ったわたし。

    前半に参考になることが多かったかな。

  • 〈ガイダンス〉
    「ライターの編集」とは記事の構成を練ること。文章で読者に娯楽を提供する。
    そのために「情報の希少性」「課題の鏡面性」「構造の頑強性」がそろった面白いと思える記事を作る。
    「情報の希少性」:ここでしか読めない未知の情報
    「課題の鏡面性」:未知の情報でありながらも、テーマが自分事のように感じられる。
    「構造の頑強性」:論理構成がきちんとしている。
    取材源の情報に対して自分が思った事・感動した事を書く ← ライター

    〈取材〉
    1 能動的な読書
    対象を観察し、得られた情報から「推論」を重ね、自分なりの「仮説」を立てるところまで、考えを進める。
    ①この人にあったら何を聞くかを考えながら読む
    ②「なぜこう書かなかったのか?」を考えて読む
    ③第三者にどう紹介するかを考えながら読む
    ④主人公を入れ替えて読む
    今という時間に、ここでしかできない事をする

    2 取材について
    良い「聞き手」は7割「聴く」3割「訊く」。どうすれば「聴く」姿勢になれるか。
    ①相手の話が面白い ← 制御不可
    ②相手のことが大好き
    ③自分にとって、ものすごく大切な話
    だから、取材前には相手を入念に下調べする。下調べができない相手には、「こんな人だろうな」と想像する。
    相手の話を受けて「ということは」に続く問いを考える。
    質問を投げかける。→ 仮説とのギャップにより「そうだったのか!」と驚きが生まれる。→ 相手の話を身を乗り出して訊くようになる。

    3 調べること、考えること
    「自分が理解できていない」文章を書いてはいけない。分かるとは「自分の言葉で考えたかどうか」。
    今回の取材、自分はどう思って、どう感じたのか?追想。
    「面白そう!」=動機
    「知らなかった!」=驚き
    「わかった!」=理解
    「もったいない!」=衝動(何故これが世に知られていないのか?知らせたい!)

    〈執筆〉
    4 執筆
    ライターの機能は
    <録音>文字情報を残して伝達。
    <拡声>「より遠くに」「できるだけそのままの声を」届ける。
    <翻訳>感情の震えや揺れを言葉にする。

    論理的な文章:主張 ― 理由 ― 事実(「データ・数字」または「実例・類例」)
    読者に必要なのは、説得という「受動」ではなく、納得という「能動」。そのために「課題の共有」が必要。

    ●起転承結 
    どんでん返し的なおもしろさはあるが主語と述語が遠くて非論理的な「起承転結」と、
    論理的だが納得感の薄い(説得感の強い)「序本論」のいいとこ取り。

    5 構成
    文章は何かしらの設計図を引いたうえで書いた方がいい。まず「何を書かないか」考える。
    何を残し、何を残さないか。それを知るためには、絵本を教材にして構成を学ぶ。
    絵本は話を最小限の絵でしか表さない。
    ●絵本思考:どの場面の絵を残すのか
    ①「構造の頑強性」を考える
    話をシークエンス単位で区切る。構造の頑強性を保つためには、各シークエンスから最低1枚の絵を残さないと、話が飛躍する。
    ②情報の希少性を考える
    「他とは違うところ」「ここでしか読めないもの」を残す。
    ③課題の鏡面性を考える
    読者が自分事のように考え感情移入する絵、時代を超えて受け継がれる主題を残す。

    6 出版物を作るときには
    ●いかにして体験をつくるか?「百貨店」をイメージ。
    1階…化粧品売り場:まず一章には世界観の提示を盛り込んでいく。
    2階…レディースフロア:導入で提示したテーマや世界観を、より具体的に、よりおもしろく、展開していく。
    3階…カジュアル・ユニセックスフロア:「手に取りやすい」話を提供。課題が共有され、よりおもしろくなっていく。
    4階…メンズフロア:新章に突入。視点を変えた第2部の始まり。
    5階…インテリアと専門店フロア:専門的な話題を扱う。読み飛ばされることを覚悟。
    6階…レストランフロア:今までの議論を踏まえてこそ語ることのできる、もう一段上の議論。
    屋上…新しい景色を見せる:あとがき
    ●コラムとエッセイ
    コラムは持論の展開と論理性が鍵。エッセイは感覚的文章で、対象への観察眼と描写力が必要。

    7 原稿の文章表現
    ●リズム
    書いた文章を音読し、自分が気持ちいいと思うまで繰り返し確認。
    自分が気持ちいいと感じる文章を筆写。
    → 読点の位置、語尾や文末表現に「自分とは異なるリズム」を発見、自分の癖やリズムを再確認。

    文章をずっとandで繋いでいては主観=私の気持ちだけしか伝えない独りよがりのものになる。
    自分の語りたいことを、ふたつのB(but,because:しかし、なぜなら)を使って語れるように。

    視覚的読みやすさを重視。句読点の打ち方、改行のタイミング、漢字とひらがな・カタカナのバランスを整える。

    ●レトリック
    ①具体的・映像的であること。曖昧な比喩ではなく、より具体的に描写。
    ②普遍的・一般的であること。「読者にも見えるわかりやすい比喩」を意識。
    ③遠距離であること。意外な類似性を提示できれば、比喩はぐっと面白くなる。

    類似を見て取る力。→「〇〇のような」よりも大きな単位のたとえ話を作る力が、文章に納得感を生む。

    ●ストーリー
    論文は小説と違って、時間軸を持ち込んではいけない。
    「時の流れ」に代わり「論の流れ」を描く。「導入から結末まで距離を置く」

    〈推敲〉
    8 推敲
    ①音読
    ②異読(縦書きを横書きに、明朝体をゴシック体に変えて読み直す)
    ③ペン読(朱入れ)

    ●論理矛盾を見抜く
    箇条書きで論点を整理し直す。
    長めの原稿を書くときは、まず箇条書きで流れを定めてから書き始める。

    ●原稿の過不足を推敲でチェック
    対象への思いが強いほど「盛り」が生まれる。→ 嘘や誇張、煽情が混じってしまい客観性を欠く。
    対象について調べれば調べるほど知識が増え、基礎知識を自明のものとして省いてしまう。→「漏れ」

    ●自信
    推敲で追い求めたいのは「ゆたかな文章」→ 語彙がゆたか、展開がゆたか、事例がゆたか、レトリックがゆたか。
    一本調子で書かれておらず、さまざまな表現が盛り込まれた文章。→「表現の希少性」にすぐれた文章。
    最後の出来栄えを決めるのは「自信」。迷いのない文章を書き、自分を信じて推敲に臨む。
    自信が「いい原稿」や「面白い原稿」を生み出す。

    9 いつ筆を置くか
    推敲が終わるのは原稿が「最初からこのかたちで存在していたとしか思えない文章」になったとき。
    ライターであるわたしと、取材に協力してくれたあなたが「わたしたち」として溶け合い
    「わたしからあなたへ」のプライベート・レター(返事)は、
    「わたしたちから読者へ」のコンテンツ(手紙)として完成をみる。

  • Twitterで何人かがオススメされていたので読みました。
    > 「書き手としての自分」がダメなのではない。「読者としての自分」が鋭いという証拠なのだ。

    書くことの哲学とエールが詰まっていた。早速、仕事でも捉え方がパワーアップしたかんじがします。

  • これはいい本。
    というのを3倍に希釈したような本。

    新書一冊にまとまりそうなものを、専門書レベルのサイズにかさ増ししている。
    おそらくだが、流行りにのって書店の売り場で目立たせる作戦なのだろう。

    ただ、希釈されていはいるものの、ちゃんとした実用的な内容もある。どんなに薄いカルピスでも、水とは違う味がする。(教えに習って例えを使ってみる)

    https://www.naozari.com/2021/11/blog-post_22.html

  • 自分の言葉を究極にブラッシュアップできるのは、自分だけ。

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著者プロフィール

●古賀史健(こが ふみたけ)
 1973年、福岡県生まれ。ライター、株式会社バトンズ代表。『取材・執筆・推敲』『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(共著・岸見一郎)、『20歳の自分に受けさせたい文章講義』ほか著書多数。2014年「ビジネス書大賞・審査員特別賞」受賞。構成に幡野広志さんの思いをまとめた『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』(ポプラ社)など。

「2021年 『雨は五分後にやんで 異人と同人Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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