贈与論 他二篇 (岩波文庫) [Kindle]

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  • レヴィ=ストロースがモースの『贈与論』にヒントを得て、未開社会における女性の交換システムを定式化し、これによって構造主義革命を広めた。このことが本書を有名にしたのだが、本書の意義は構造主義への影響にとどまるものではなく、それを遥かに凌駕する起爆力を持っている。贈与は返礼の義務を伴い、贈り、贈られる関係、即ち「互酬性」に基づく社会構成原理の不可欠な要素だ。重要なことは、この「互酬性」が単にモノの交換という経済的なものではなく「社会的交換」に基づいているということだ。それは簡単に言えば、モノの贈与によって尊敬という精神的価値を得ることだ。このことが重要なのは、現代社会における「社会的交換」とは、お中元やお歳暮といった慣行に遺物のごとく残るものだけではなく、通常の経済取引に多かれ少なかれ随伴する極めて普遍的な現象であるからだ。長期雇用やサービスといった明示的な対価を特定しにくい給付がそれだ。この場合の反対給付は忠誠や信用といった精神的価値である。経済取引が「社会的交換」を前近代の遺物として削ぎ落としていくのが合理的で進歩であるなどというのは大きな錯覚だ。「社会的交換」は経済取引が円滑に行われる条件であるとさえ言える。正統派経済学がモノの交換のみを分析対象とし、それと不可分な「社会的交換」を捨象してしまったことこそが問題なのだ。

  • 市場原理だけで行われるのではない未開社会の贈与の習慣にもお返しの義務がある。優位に立つための贈与であり競争という側面もある。一方で、モノに持ち主に戻る力が内在しているという見方もある。市場原理一辺倒ではないモノの交換の価値について考えさせられる。

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