ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • アメリカのPR企業「ルーダー・フィン」社が、どうやってセルビアを悪者に仕立て上げ、どうやってボスニア・ヘルツェゴビビナを善者に仕立て上げたか、を克明に取材したNHKスペシャルの書籍版。

  • 自分がメディアに翻弄されたくなければ、こういった事実があることを知るべき内容。

    詳細は下記
    https://note.com/t06901ky/n/n6271d9849725

  • 民族紛争は世界各地で起きている。紛争に苦しむ子供は世界中にいる。ボスニア・ヘルツェゴビナの子供たちだけが不幸では無い。競争の激しいマーケットで、顧客のメッセージをライバルに打ち勝って伝えてゆく。唯一の超大国アメリカの注目を集めることができるのは、どの地域の紛争か。民族紛争が世界各地で頻繁に起きる時代において、紛争に苦しむ地域同士のPR競争が起きる。そしてボスニアにはハーフがいた。

  • 世論とは多数決の原則をもとに形成される民主主義的なものと思っていたが、こんなにもいちPR企業により操作可能なものとは知らなかった。世論が動く時は裏で動かしている人の思惑に注目したい。

  • 3.5

  • PR会社が戦争を左右している、という話で、どんなものかと読んでみた。
    実際にものすごい作為のある話で、その手法や顛末ともに参考になった。著者はこうしたPRが戦争を左右することに否定的で、直接的にそう書かれてはいないが、皮肉めいた記述がところどころあった。

    カナダの将軍だったり、攻撃され身持ちを崩した人の話も面白い。

    最後のお金のやり取りのところを見て、ハーフ(ルーダー・フィン社)とシライジッチは実際は仲悪かったんだろうな、と思った。

    現代はメディア(SNS含むコミュニケーション)による影響は増大している一方、それはあらゆるプロパガンダ勢力が直接的に振るい、また一般人による同時発生的な、つまりはミーム的な流行も大きくなっている。その一方で、単独PR会社の影響力は減衰している可能性があり、本書の事例は1992年という、冷戦が終わった混沌のはじまりにおいて、米国資本主義の象徴たるPR会社が活躍した点で、エポックメイキングな例となったのだろう。

  • 【文章】
    とても読みやすい
    【ハマり】
     ★★★★・
    【気付き】
     ★★★★・

    ボスニア紛争において、ボスニア・ヘルツェゴビナに有利な国際世論をどのようにして作り上げたか。

    国際紛争であっても、大衆に狙ったイメージを抱かせる(事実がどうであれ)ように仕向けるのは、商品やサービスに対する広告をうつのと変わらない。

    今現在のロシア・ウクライナ紛争においては、ウクライナに有利な国際世論が形成されているように感じるが、これもまた戦争広告代理店によって仕込まれているということなのだろうか。

  • 本書の題材はボスニア紛争中にボスニア・ヘルツェゴニア政府を代表したアメリカのPR社ルーダー・フィン(Ruder Finn)と担当者のジム・ハーフ(Jim Harff) の活躍。
    この本を読んで驚いたのはPRという仕事の地道さ。アメリカ人が興味のない国際事情ましてや東ヨーロッパの辺境の紛争を世論の中心にまで祭り上げるのなら、もっと派手に出まかせを流したのかと思いきや、ジム・ハーフの主な仕事内容は、DCのメディアや議員への根回し、ボスニア政府のスポークスマンのシュライヴィッチ外務総理大臣のためにテレビインタビューや記者会見前に行うコーチング、そしてボスニア政府要人の英語のスピーチの草案など地味な裏仕事ばかり。だが、このような忍耐強い根回し作業をこなせるプロの手と、事実はともかく「民族浄化」ethnic cleansing というキャッチーなコピーをいち早く貼ったことと、この紛争に対するアメリカ国務省の方針が偶然にもボスニア側にとって有利な方向であった、という偶然がうまく重なってセルビア側の評判を貶めることができた。「戦争広告」というスキャンダラスな題名のわりに、ことの成り行き自体はどちらかと言うと呆気ないものである。
    たまに日本人がアメリカに関した題材を緻密に取材したルポ作品があるのだが、『戦争広告代理店』もその一つである。ざっと調べたところ、アメリカ人の記者や国際政治研究者によるのボスニア戦争関連の書籍の中に、ルーダー・フィン社の関わりについてこの本ほど詳細に書かれたものはないようだ。コロンビア大政治学部で受講した民族紛争研究のセミナーでも一切触れられなかった。なぜ自国でこのような世論操作があったことが議論されないのか。薄気味悪く感じる。ルーダー・フィン社がボスニア・ヘルツェゴニア政府を代表していた間にアメリカが軍事支援まで深く関与しなかったとはいえ、セルビアがナチスに匹敵するほどの悪者、というレッテルを貼ったジム・ハーフと彼のチームの成果はかなりのものである。アメリカの知見者もほとんど知らないようなことを学べて、この本に出会えてよかったと思う。

  • 【動かしたい物があれば直接的ではなく間接的に】
    PRの一種、パブリックアフェアーズを学ぶために読了。
    パブリックアフェアーズでは、単純なパブリシティにとどまらず、人の心を動かし、応援してもらう社会構造づくりが必要となる。
    世論を形成し、政治家に新しく政策を作ってもらうこともある。
    一企業が、一団体が、どうすれば自分たちの目標達成に有利な方向に世論を動かせるか。
    一般人だったら普通「国を動かすなんて無理」と思うかも知れないが、本書の主人公、アメリカのPRコンサルタントのハーフはやってのけた。
    アメリカ議会、国民だけでなく、世界中の国々の意志を、持っていきたい空気の方向に動かした。
    その方法の重要なポイントは「動かしたい物があれば直接的ではなく間接的に」だ。
    本書には以下のような表現がある。

    「アメリカ政府を味方にしたければ世論を、世論を味方にしたければメディアを動かせ」
    「ワシントンは政権、連邦議会、メディアの三つで構成されている。どれか一つを動かしたければ他の二つを動かせばいい」

    つまり、いきなり世論を動かそうとはせず、世論を動かせる要素に手を加えればいい。
    これを読んで「急がば回れ」「テコの原理」あたりのキーワードが浮かんだ。

    じゃあどうすればそのメディアなどを動かせるかと言えば、戦略的なメッセージ作りとその構成、印象的なコピーライティングなどだ。
    メディアの読者・視聴者は、生活者だ。その生活者の心から逆算して、刺さるメッセージを作成することで可能になってくる。

    本書ではそのほかに、パブリックアフェアーズに限らず通常のPRにも役立つテクニック・精神がいくつも記載されている。広報PR初心者よりは、大企業の広報・中堅レベルの広報に刺さる気がする。

  • 戦争の裏になにがあるのかを知りたくて手に取った。
    広告代理店ーのような会社を雇い、自分達は悪くないのに、セルビアが悪い、残虐だ!という世論操作を主にアメリカで行い、世界を味方につけていくというアプローチ。一方、セルビアはメディアに負けたという事実。
    第二次世界大戦中は、蒋介石がやってたはず。日本はやられたという面もあるのだろう。
    今は、クロアチアがやっているのだろう。
    世界の裏側が垣間見える。
    でも、ちょっと読みにくい。

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著者プロフィール

1965年、東京生まれ。1990年、東京大学文学部卒業後、NHK入局。ディレクターとして数々の大型番組を手がける。NHKスペシャル「民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕」「バーミアン 大仏はなぜ破壊されたのか」「情報聖戦~アルカイダ 謎のメディア戦略~」「パール判事は何を問いかけたのか~東京裁判・知られざる攻防~」「インドの衝撃」「沸騰都市」など。番組をもとに執筆した『ドキュメント 戦争広告代理店』(講談社文庫)で講談社ノンフィクション賞・新潮ドキュメント賞をダブル受賞。二作目の『大仏破壊』(文春文庫)では大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。

「2014年 『国際メディア情報戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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