5000日後の世界 すべてがAIと接続された「ミラーワールド」が訪れる (PHP新書) [Kindle]

制作 : 大野 和基 
  • PHP研究所
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#AI

感想・レビュー・書評

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  • 新年から良書と出会えた。
    ビジョナリーと言われる著者であるが、単に未来予測する人なのではない。
    結局、物事の本質が見えているから、未来が見えるのだ。
    逆に言うと、未来に向けての判断を間違う人が多いのは、現在の物事の本質が見えてないからに他ならない。
    本書を読むと改めてそう気付かされる。
    だからこそ本質を見極めろということなのだ。
    単純に「本質」と言っても、様々なものがある。
    一つは「学び」。
    これからの時代、学べる人とそうでない人とは大きな差がついていくだろう。
    これだけ人間の寿命が延び、おそらく軽く50年間以上仕事をし続けることになるのではないか。
    そんな中で一つのキャリアだけで、大学などで勉強した一つのことだけでずっと稼ぎ続けられることはあり得ない。
    だからこそ学生時代は特に専門分野の勉強をするのではなく、広く一般教養を学ぶべきだという。
    これは非常に納得がいく。
    一般教養は決して雑学なんかじゃない。
    人間の本質に迫る哲学や歴史、地政学だって当然。もちろん数学・科学は基礎に限らず押さえる必要がある。
    大切なのは、興味ある好きな専門分野を学ぶことだけでなく、これら一見興味を引かない一般教養についても「学んでみる」ということなのだ。
    これは一種の訓練の事を指している。
    これこそが筆者が説く「学び方を学ぶ」ということなのだ。
    何度も繰り返すが、これからは人生で何度も学び直しが必要だ。
    過去きちんと「学び方を学んでいた人」は、この先何度でも学び直しが出来る。
    一方で「何となく塾に行っていたら、点数が取れるようになって大学に合格した」みたいな人は、これからは相当に苦労をするということなのだ。
    自分自身で「学びのスタイル」を確立できているかどうか。
    これについては周囲を見ていても気が付く点が多い。
    学びのスタイルを確立出来ていない人は、やはり学習スキルが低い。
    作業はそこそこ出来るのであるが、本質を理解していないから、応用ができない。
    何かのトラブルがあると途端に作業がストップし、自分では対処が出来なくなってしまう。
    今現在ですら、分からないことがあれば検索してすぐに答えが出てくる時代。
    それでも確かに乗り切れる。しかし検索しても出てこない問いが出た際はどうするのか。
    これだけ不安定で不確実な時代に、検索した答えだけで生き残れるはずがないのだ。
    何度でも何度でも学び直しが必要なこれからの時代に「何をどうやって学ぶのか」これはものすごく大切なスキルだと思う。
    もう一つの本質が「自己理解」。
    これもまた意外かもしれないが、これこそが本質。
    自分自身を正しく理解していない人は、これからは本当に苦労するだろう。
    AIが台頭し、ほとんどの仕事をAIが奪うという。
    しかし筆者は楽観的に「AIが逆に新たな仕事も生み出す」とも言っている。
    AIに出来て、人間に出来ないことは何なのか。その逆は何なのか。
    その時に自分はどうしたいのか。自分はその時に何ができるのか。
    嫌でも自分自身と向き合わざるを得なくなる。
    だからこその自己理解。
    これはスキルの棚卸とかそういうことではない。
    お金を稼ぐとすれば、いくらほしいのか。
    それでどういう生活をしたいのか。
    それであなたは幸せになれるのか。
    常にそんな問いに対して、自分で答えを見つけていくという作業が発生する。
    そう考えると、常に考える力は本当に必要なのだろう。
    それと上記とは別となるが、本書で非常に共感した内容がある。
    「テクノロジーの進化に耳を傾けることが大切」
    「新技術とは、51%がポジティブ。49%がネガティブなもの」
    これも筆者が本質を見極めていると感じた点だ。
    新技術は確かにネガティブ面が表に出ると、「そんな技術は無駄だ」と評価されてしまう。
    しかし実際はそうではない。
    新技術とは常に表裏一体の関係であり、しかしながら全体としては必ずポジティブが少しだけ上回る。だからこそ数年、数十年単位で複利で考えてみれば、この数%の差が後々大きなポジティブの差となって広がっていく。
    これは確かだ。
    絶対にテクノロジーの進化は必要だし、私もその進化こそが人を幸せにすると信じている。
    それ故にテクノロジーの進化に耳を傾ける。
    興味が無いと切り捨てるのではなく、きちんと本質を見極めないといけない。
    ものすごく示唆に富む内容の本書だった。
    (2022/1/8)

  • 書くことは考えるために最良の方法。興味を持ったことを徹底的に調べて書いてみよう。

  • これからの5000日には何が起きるのだろうかという話をコロナの影響で2年に渡ってまとめたのがこの本になります。
    AIに関してはやや抽象的な面もありますが、書いてあることは技術的なこともまっとうな印象を持ちました。
    10年後を考えているという意味で有意義な一冊だと考えます。

  • 著者のケヴィン・ケリーは、『Wired』誌の創刊編集長で『ホールアース(Whole Earth)』誌の元編集者兼出版責任者だった人だ。現在は、作家、写真家、環境保護活動家として名乗っているらしい。そういいう意味で、技術屋さんなのかなとおもうところもあるが、Wikipediaを見ると地学を先行していたようだし、サイバネティクスにも興味を持っていたと書いてあるので、もともと技術的な興味が深い人なのだろう。
    ケヴィン・ケリーは、「テクノロジーに耳を傾ければ未来がわかる」という。テクノロジーは人間と関係なくわが道を行く。中には悪用されるテクノロジーもあるが、ケヴィンは良い面が51%、悪い面が49%だという。たとえ1%でも、良い面が蓄積されていく。これが掛け算式に可能性を増やす場合があり、これを観察していると未来が見えるという。確かにそうかもしれない。InternetでもSNSでも、自分の想像を超えてあっという間に社会に広まり、思いもかけない影響力を示した。ケヴィンは、こうした観察の中で、AI、VR/ARの技術は大きく世界を変えるだろうと予測している。ケヴィンがいうならば、やはりAI、VR/AR技術動向には注目しなければいけないかな、と思ったり。
    最後に、ケヴィンが大切にしていること、大切になることをメモとしてまとめておく。
    1.AIはこれから50年間にわたって、オートメーション化や産業革命に匹敵する、もっとも大きなトレンドになる。
    2.アジャイル開発は、普段からなるべく小さな失敗を重ねておいて、それが溜まって大きな失敗につながらないようにするという事。
    3.書くことは考えるための方法の一つ。
    4.今後は「常に問い続ける」という習慣が、人間にとって価値のある活動になっていくだろう。人の仕事は問いを投げかける、そして不確実性を扱うというものになっていく。
    ・これからの5,000日(≒14年)は、今までの5,000日よりもっと大きな変化が起きる。

    2022/09/24記録

  • ビジネス環境の変容(脱炭素の規制)から来るレジリエンスの観点が抜けているのが議論の全体をフワッとさせてしまっている気がした。
    技術それ自体の進化や方向性については納得。

  • 『Wired』創刊編集長であるケヴィンケリーの「5000日後の世界」を読んだ。インターネットが出てきてから5000日後、スマートフォンが出てきた、スマートフォンがでて、ちょうど5000日後のいま、メタワールドことミラーワールドが登場してきた。
    インターネット時代、スマートフォン時代、VR・AI時代にわけて考えていきたい。いまはスマートフォン時代の終わり、VR・AI時代の入り口にいる。
    私はもうWEBは終わると考えている。いままでWEBで行ってきたECや情報はすべて今から5000日以内にミラーワールドに代替されるだろう。もちろん、すぐに切り替わるわけではない。ただ、ミラーワールドへの準備をしていない会社は淘汰されていくと思う。
    いまだにインターネットにも対応できていない日本のIT技術は、ここでレガシーを切り捨て、ミラーワールドへの大胆な変革をすれば、周回遅れを取り戻すチャンスとも言える。
    この本の中でケヴィン・ケリーは学び方を学ぶことが何より重要と語っている。そして、最も大きな学びは失敗から得られるとも語っている。失敗を恐れる日本文化にも警鐘を鳴らしている。失敗こそ最高の教師。挑戦こと成功の第一歩。そして大企業は日本に限らず、必ず保守的になる、だからこそ、今後の5000日を生き残るのは難しい。アマゾンですら厳しいと語る。FACEBOOKは危険とも言っていたが、FACEBOOKはいち早くMETAに社名を変え、変革に対して先んじているの私はMETAこそ勝利者になると考えている。
    問題なのはインターネット時代からいるIBMあたりじゃないか。NECも十分に危険だし、HITACHIもその対象内だ。
    WEB3.0はWEB2.0を切り捨てる勇気のある会社だけが生き残る、そんな大変革時代になるんじゃないかと思う。

  • 多分口述筆記で書かれた作りとしては雑な本で、入門書として読んでこれは!と思ったらテクニウムに進むのが良いと思う。テクニウムで紹介された内容、例えばカリフォルニア的技術楽観論であるとか、アーミッシュにおける技術導入をケーススタディして技術への態度を明らかにするとかがやっぱり印象深い。特にカリフォルニア的技術楽観論をきちんとコンセプトに落とし込んだ「技術は51%よくで49%わるい」このちょっとだけ良いということで進むと複利で効くから世の中良くなっているんだけど、newsは悪いことを伝えるものだから良くなってると感じないよね。ってのは何度読んでも良いね。

  • 衆議院選挙が始まって、各党がバラマキ政策を掲げて有権者の関心をひこうとしている。その一方でこれからの日本をどうやって行くのかというヴィジョンが見えない。





    そんな中で手に取ったのが今回の本だ。著者のケヴィン・ケリーは、1993年に「WIRED」という雑誌を創刊して編集長を務めた。





    ケヴィンは、いわゆるGAFAと言われる巨大IT企業による「勝者総取り」状態や、あらゆるものがタダになるフリーミアム経済の到来などを予測し、的中させてきた。





    そんな著者が見ているのは「ミラーワールド」だ。ミラーワールドと言われてもよく分からないが、AI(人工知能)とつながり、デジタルと融合する形で生まれるAR(拡張現実)の世界を指す。





    世界中の人々がバーチャルな空間で共に働く時代が来る。






    ミラーワールドでは「歴史は動詞化」すると述べている。「空間に手をかざしてさっと振るようにスワイプするだけで、時間をさかのぼってその場所に以前にあったものを呼び出せる」ようになるそうだ。




    これは一例だが、ミラーワールドには無限の可能性があるなあ。






    このミラーワールドは新たな力と富を生み出すが、必ずしもGAFAがミラーワールドの勝者になるとは限らないと指摘している。





    残念ながらな日本企業が勝者になるとは述べていない。この本を読み進めていくと日本企業に明るい未来が見えてこないなあ。





    アメリカ、中国、インドにはミラーワールドの恩恵がありそうだな。中国とインドに関しては「世界の趨勢を左右すニ大プレイヤー」になると述べている。





    テクノロジーの世界は歩みを止めない。この先、どんなテクノロジーが世の中に出てくるのか楽しみでもあり、怖いとも思う今日この頃だ。

  • p.187 書くことは考えるための最良の方法
    ・ブログをたくさん書く。書くとわかっていないことがわかり、調べる。
    p.190 AI時代には「問いを考える」ことが人の仕事になる
    ・常識に対して疑問を持つ
    ・エビデンスを探す
    (前著)テクニウム
    生命とテクノロジーは同じレベルで議論してもかまわない。

  • ケビィン・ケリーの言葉はわかりやすく入ってくる。ときに以下のようにはっきりと言い切るところも好き。
    「大きいことに対して皆がアレルギーを起こしているのは、間違っているし誤解だと思います。大きいことは良いことでありうるのに、大きいということ自体がともかく嫌いで、何でも悪だと言う人がいますが、やみくもに反対するべきではない」「オートメーションもAIも選択の余地はない」「我々が仕事と呼んでいるものの再定義」「学び方を学ぶスキルが必要だ」

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著者プロフィール

現在は雑誌「Wired」の「上級一匹狼」という役職についている。1993年にWiredを共同で設立し、その創刊から1999年まで編集長を務めた。最近の著書としては、バイキング/ペンギン社から“What Technology Wants”という本を2010年10月18日に出版した。また、毎月50万人のユニークビジター(重複を除外した利用者数)があるウェブサイト「Cool Tools」の編集者兼発行人でもある。1984年から1990年まで非正統的技術情報の専門誌「Whole Earth Review」の発行人兼編集者だった。今も続くハッカーズ・カンファレンスの共同創設者であり、また、1985年に始まった先駆的なオンラインサービス 「WELL」 の設立に関与した。ベストセラーとなった書籍“New Rules for the New Economy”(邦訳『ニューエコノミー勝者の条件―ウィナー・テイク・オール時代のマーケティング10則』1999年、ダイヤモンド社)、分散化した創発的システムに関する古典的作品“Out of Control”(邦訳『「複雑系」を超えて―システムを永久進化させる9つの法則』1999年、アスキー)などの著書がある。
※ケヴィン・ケリーのブログ(http://www.kk.org/biography.php)で公開されているプロフィールを堺屋七左衛門が翻訳

「2012年 『ケヴィン・ケリー著作選集 1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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