感想・レビュー・書評

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  • AIとロボットにまつわるアンソロジー。どの話もとても濃厚で、人間と新しい他者であるAI・ロボットの関係を哲学的に描いている。もちろん、SF的なギミックの知識と説明の面でも満足度が高い。
    特に好きなのは以下の5篇。

    ・働く種族のための手引き…AI同士のチャット形式の小説で、カフェで働く女性型AIとなにやら物騒な仕事に従事する男性?AIの軽快な逃走劇。AIたちが飼い犬の魅力で意気投合するのが可愛い。

    ・もっと大事なこと…アシモフの「ロボット三原則」には、実は第0原則がある。それを思い出させるようなミステリー仕立ての小説。大富豪が風呂場で感電死…その真相は?

    ・痛みのパターン…AIのディープラーニングはたくさんのデータを与えて共通点を覚えさせることだが、それに恣意的なバイアスをかけて血なまぐさい金儲けを考えたなら…という話。実際今でもありそうだし、これから一層AIの教師としての人間の善性が問われる時代だよね。

    ・人形芝居…新天地を目指す豪華旅客宇宙船の乗客が脳死し、残されたロボットたちが処分を免れるために奮闘する。最初は人間の演技をしようとするけれどやはり完全にはできず、考えた末にとった方法は?
    話それ自体より、宝石の名前を持つロボットたちの個性や知能レベルに基づく微妙な上下関係が面白かった。

    ・赤字の明暗法…一番好きな話。ロボットを株式形式で多数のオーナーが分権的に所有して、ロボットの労働対価をベーシックインカムとして得るという経済モデルが面白い。
    ストーリーとしては、1体のおんぼろロボットの100%株主となってしまった学生がそのケアに奔走する。ロボットと少年の交流はさらりとしているが、少年が壊れかけの機体に徐々に愛着を持っていくのが微笑ましい。そして不良箇所をちゃんと修理された少年のロボットが、他のロボットにいじめられ?る様子は、オーナーからの手厚い施しに嫉妬されているよう。
    生活に困らない所得がありながら生産性のない日々を送るルームメイトの兄弟や、頭のキレる女友達の存在を交え、「働く」ことがロボットの役割となった世界での労働への意識の個人差も感じられ、近未来の若者たちの心境を垣間見た気持ちになる。そして何より、読後感がさわやか!

  • ロボットやAIをテーマに作家たちが書いた短編のアンソロジー。様々なニュアンスでロボットや機械知性を扱っていて、巻末の解説で分かりやすく分類してくれている。ロボットが人間を助ける道具として扱われ、心を持ったロボット達がそれに抗うといった話が多いが、機械に宿る知性が人間と同じ感情を持つといった発想には限界を感じる。無意識に他者を見下し優越感に浸ろうとする人間の愚かさを表すのにはちょうど良いテーマだろうけど。そういう意味でもピーター•ワッツ「生存本能」は、人類とは全く異なる知性の発現の可能性を感じてワクワクした。

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