「トランプ信者」潜入一年 ~私の目の前で民主主義が死んだ~ [Kindle]

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  • 小学館
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感想・レビュー・書評

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  • 2016年大統領選の際にNYに駐在していたこともあり、それ以降、アメリカの政治、勿論、2020年大統領選も追っていたので、本著に書かれている事柄については、略理解、認識していた。
    その意味では、自分自身、新しい発見はないのだが、日本で(日本語としてメディア等で紹介される)、このような内容が纏まっているものは貴重かもしれないので、先ずは、多くの方に読んでいただく必要があると思った。(日本のメディアが比較的、好意的にトランプ政権を取り上げている感もあり)

    この本のスコープではないものの、なぜ、多くの米国人が、こうも合理的ではないような判断をするのか、真実をこうも簡単に捻じ曲げることができるか、その原因、ルーツを知ることも重要。
    それには、アメリカの国の成り立ちや、選挙の仕組み(実質的に、資金を幾らでも投入できる、ロビイストの影響力の大きさ)等、理解する必要がある。

  • 最初から最後まで、とても興味深く読むことができた。
    また、筆者の根気強い潜入調査には、いつものことながら全く頭が下がる。
    自分が現場にいるような、そんな熱気を読みながら感じることができた。
    日本から見るアメリカと、実際のアメリカは大きな乖離がある、ということを、改めて認識させられた。

  • 一気に読ませる。おそらく筆者もこの展開は予想していなかったであろう連邦議事堂襲撃。20世紀の夢と希望にあふれたアメリカはどこに行ってしまったのか?

  • これを書くのは大変だっただろうと思う。ご本人も作中で書いているが、ファクトチェックが当たり前のルポルタージュで、トランプやトランプ信者&支持者の語ることに事実でないものがあまりに多過ぎるので、全てにおいてチェックするのは作業が膨大だったことだろう。この点だけにおいても脱帽といった感じ。途中、命の危険をも感じながら潜入調査してこの本を出してくれたことに感謝。日本のニュースだけでしか知らなかったトランプ氏だが、この本によりトランプ氏の危険さがよくわかった(恥ずかしながら、それまでは、
    対岸の火事とでもいうような感覚で、むしろ「何この暴走爺さん、おもしろー」ぐらいのイメージだった)。

  • トランプの復権が怖い。

  • アメリカに一年いたからこそ書ける内容だなぁ。なぜトランプがあんなに支持されるのかも少しわかった。政治家として怖いなあ。

  • 横田増生さんの本は初めて読んだが、現地に潜入し調査するルポ本はやはり文献を基にして書かれた本より生の声を掲載できるところが読み手としてとても面白い。

    トランプの動向やアメリカ国内の混乱などは自分にとって対岸の火事だったけど、読んでみると思ったより民主主義が崩壊していてすごい国だなと思った。
    陰謀論に次ぐ陰謀論の連鎖でゲシュタルト崩壊しかけた。
    24年の大統領選挙にはトランプは出馬するという意見が濃厚であると本書の最後で綴られていたが、個人的にはさらに国内の混沌を増してしまいそうなので辞めていただきたいと思った、笑。

  • ふむ

  • 2022/04/17(日)記述

    トランプ信者潜入1年
    私の目の前で民主主義が死んだ

    2022年2月28日電子書籍版発行
    底本2022年3月5日初版第1刷発行
    本書は「フォーサイト、スローニュース、週刊ポスト」での連載記事に大幅な
    加筆修正をしたものです。

    横田増生氏による著作。
    横田増生・・1965年福岡県生まれ。
    関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、(英語を3年教える)
    アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。
    1993年に帰国後、物流業界「輸送経済」の記者、編集長を務める。
    1999年よりフリーランスとして活躍。

    今回はアメリカ大統領選挙の現場、最前線に潜入した。
    とは言え、割とあっさり潜入できているなと感じた。
    以前のユニクロ店舗への潜入とはさすがに違うか。

    色々感じる所はたくさんある。
    以前の書籍に横田増生氏も書いていていたのだが、値段以上の仕事をするようにいつも心がけているという。
    今回もその例に漏れない良い出来の本だったと思う。
    ユニクロの店舗で思わず英語を話してしまい・・・という場面があった。
    横田増生氏はずっと英語放送を聞き続け英語力が錆びつかないようにしていた。
    横田氏の勤勉さを感じる所だ。

    本書を読んでいて一番大切なのは、伝統的なメディアの報道することはまず受け入れろということ。
    もちろん彼らもある種の世論誘導的な事を
    することもあるが、全てのメディアが同じ世論誘導をするわけではない。
    ネット発の裏付け取材も何もないものを盲信しては決していけない。
    特定の人物の盲信もよくない。
    どんな優秀な人でも間違うことはあるし、(良くも悪くも)人は変わる。
    日本に住んでいるなら、まずNHKの報道はそのまま受け止めよう。
    受信契約を結んでいなくとも、NHKオンラインはニュースがあふれている。
    これはまず信用した上で他の報道、SNSなどを参考にすることだろう。
    こんなごく初歩的な当たり前のことができない人が大勢いる。
    カエサルは「人間は見たい現実を見る」と指摘した。
    自分も含め放っておくと人間は自分にとって都合のよい情報ばかり
    集めてしまう傾向があると肝に銘じておこう。

    間違いばかりを発信するドナルド・トランプの支持率が下がりきらない所には岩盤な支持層があったわけだが、その中でも全てメディアは嘘と思いこんでしまう
    人々を見ていて、日本もそれに似た状況があったなと感じた。
    安倍自民の支持率は一定程度までしか下がりきらない岩盤さがあった。
    2020年からの新型コロナ騒動が無ければ、未だにトランプや安倍が大統領、総理大臣のままではなかったか。
    その意味ではコロナによってそれぞれの国は救われたとも思える。

    トランプ氏のような人物も時にはあたっている指摘をすることもある。
    しかし、膨大な間違い発言とその事実確認に膨大な時間がとられることから考えても許されることではない。
    経歴詐称をして業界から追放されたショーンK氏と同じである。
    経歴をごまかす人は他の部分でも嘘、間違いが多くあり、それを全て確認している時間などないからだ。


    印象に残った点

    民主主義の脆弱性を説いた「民主主義の死に方」は以下の4点の特徴がある
    政治家には要注意だと説く。
    1民主主義のルールを否定・軽視する
    2政治的な対立相手の正当性を否定する
    3暴力を許容・促進する
    4メディアを含む対立相手の市民的な自由を率先して奪おうとする
    トランプは4つの条件を全て満たすが、日本の政界でも、似たような傾向を
    持つ政治家は少なくない。

    キリスト教と陰謀論には親和性がある。
    キリスト教では、この世界の背後には神という目には見えない支配者がいて自らの意思で宇宙全体を導き、計画を実行しているというのが、その基本的な考え方。
    現実世界で見えている点と点を結ぶと、いつの間にか
    大きな絵が浮かび上がってくる。
    これは陰謀論と同じ構図だ。
    アメリカは近代の合理主義と啓蒙主義から生まれた国なので、物事は全て合理的に進むという歴史的認識がある。
    だから、少しでも不合理なことや、意図せざる物事が起き始めると何かがおかしいのではないか、誰かが良からぬことを企んでいるのではないかという論理が自然に発生する。

    主要メディアがバイデンの当確を報道した(2020年)11月7日以降、トランプ信者の間で顕著になってきたのが、ニュースソースの変化である。
    それまでFOXニュースが、トランプ支持者が情報を得る主要メディアであったがFOXが意外にもまともなニュース機関であるのに気づき失望した。
    トランプ信者にとっては、FOXもCNNと同じで、トランプの敵に過ぎなかった。
    嘘を平気で流すOANNやニュースマックスという新興ネットワークが、トランプ信者の新たなニュースソースとなりつつあった。
    またフェイスブックやツイッターなどから自分の気に入った情報だけを選り分ける人も少なくなかった。

    潜入取材において、千載一遇のチャンスは突然わいてきて、それが泡のように消え去ることがある


    真実の誇張という言葉は、その後のトランプを理解する上でのキーワードとなる。
    トランプにとって事実かどうかは重要ではなく、自分がよくみられるのなら多少の嘘は許される。
    嘘も繰り返し言えば、人々はそれを信じるようになる、
    と考える。

    その人の政治的な立ち位置が右寄りであろうと左寄りであろうと、陰謀論やウソは、物事を判断するのに邪魔となる。
    そうした挟殺物をできるだけ取り除かなければ、真実には近づけない。

    トランプはさらに(2020年)4月下旬の記者会見で、塩素を含む消毒剤を体内に注射してはどうか、と言い出した。
    「俺は、消毒剤が病原菌を1分で消滅させることを知っているんだ。
     これを体内に注射することで体内を浄化することを可能にする方法はあるんだろうか。試してみることは興味深いことだ」と記者会見で言った。
    新型コロナに関して、トランプが放った最も愚かで危険な一言だっただろう。
    塩素を体内に注射するのは、命を落とすこともあり得るほど危険なことである
    のは素人でも分かる。しかし、トランプは、そうした常識さえ持ち合わせていない。
    それどころか、同じ記者会見で、「俺は医者じゃないが、身体にいいことを知っているんだ」と自慢げに語っている。

    トランプのウソは次元が違う。その回数と頻度、また、自分の再選に有利と考えれば、たとえ、ウソであることが指摘されても、何度でもウソを繰り返すという性向において、他の政治家とは次元を異にするのだ。

    記者から突っ込まれることもなく、言いたい放題言える支援者集会というのはトランプが好きなだけウソを拡散できる場だったのだ。
    支持者はそのウソを鵜呑みにして、この国の未来は明るい、と誤解してしまう。
    そのウソが、私が次回取材する時、支持者から聞く話に紛れ込んでくる。
    トランプと支持者の間で、ウソが悪循環する仕組みとして、集会が使われている。

    トランプの大統領就任以来、その発言を事実確認し続けてきたワシントン・ポスト紙によると、ミルウォーキーで演説したこの日1日で、76ヶ所のトランプの発言が
    事実確認され、間違いやウソ、誤解を招くと判定されている。
    前回のトレドの集会の時は1日で117ヶ所が指摘されている。
    政権発足時からの累計となると、1万6000回を超えている。

    白人がここまで熱狂的にトランプを支持する理由の背景には、2045年を転機に、白人の全人口に占める割合が5割を割り込み、その後も白人の割合は減り続けるという予測が影響している、といわれる。

    支援者集会の本来の目的は、支持者の気持ちを固めたり、新たな支持者を掘り起こしたりすることにあるだろう。しかし、トランプの場合、自分が心行くまで話し倒すことで自分自身の活力を得ているようにみえた。
    集会で一番楽しんでいるのはトランプ本人なのだ。

    トランプは約1時間半の演説の間、原稿を読むこともなく、プロンプターを見ることも無かった。言葉を噛むことなく、数字や固有名詞も間違えず、よどみなくしゃべる。
    緩急をつけた話術は、聴衆の心をつかみ、飽きさせることがなかった。
    なかなかのエンターテイナーである。
    しかし、オバマのように聴衆を惹き付ける華麗な演説とは違う。
    トランプの演説は、大衆の感情を煽り立て、不安につけこみ、怒りに火をつける扇動者を連想させる。

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著者プロフィール

横田増生

一九六五年、福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。九三年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。九九年よりフリーランスとして活躍。二〇二〇年、『潜入ルポ amazon帝国』で第一九回新潮ドキュメント賞を受賞。著書に『ユニクロ潜入一年』『「トランプ信者」潜入一年』など。

「2022年 『評伝 ナンシー関』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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