すごかった。描かれているひとつひとつの短編は、何らかの怪異や妖怪の姿をしている者たちの話だけれども、内容はまったく今現在に生きている私たちのこの社会のエピソードであり、怪異をあいだに挟むことにより、客観的に読めそうな構築が施してありながら、まったく他人事として読めない生々しさが、これがあなたが生きているそのままの世界ですが、と力をもって語りかけてくる。殊に「追燈」がすさまじい。多くの参考文献からの引用が、息をするのも苦しいぐらいの圧倒さをもって、所狭しと語りかけてくる。表題作の「ようきなやつら」が、エンディングでひとつひとつの物語をつなぐ役割を果たしており、読み終わったあと、自分はいまどこにいて、現実に自分の目に入ってくることどもは一体どういったことを意味するものなのかと考えながら、やはり苦しい息を吐いた。絵のもつ描写力と言葉のもつ説得力とが読み手に強く訴えかけてくる、すごい作品集でした。読めてよかったと思うし、現実は苦しいものだとも思う。それでも、目を逸らすことはなく、少しでも明るいほうへ。