- Amazon.co.jp ・電子書籍 (449ページ)
感想・レビュー・書評
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解説は浅井りょうさん。
そう、この小説はヘビーなのである。それは恋愛や婚活にまつわる紆余曲折が描かれているから---というよりも、何か・誰かを”選ぶ”とき、私たちの身に起きていることを極限まで解像度を高めて描写することを主題としているからだ。
約500ページあるこの作品。
人の内面を本当に細かく描写している。
その表現に追い込まれていく。
残り少なくなって、これで終われるのか?と心配になりつつ、なるほどそういう終わり方に持って行くか、という感じ。
読後感もよく、良い作品だった。
やっぱり自分が頑張らないと状況は変わらない。
そしておばあさんのこの一言。
「あんだら、大恋愛なんだな。」
シビれました。。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白かったー。正に辻村ワールドでした。
誰しもが心当たりはあるのではないでしょうか?善良さ故に隠すというか表に出さず内に秘めるというか、読み進めるに連れ身震いする瞬間がありました。
親の気持ち子の気持ち、人は誰の物でもなく個であるものの、感性や感覚は周りの環境に大きく左右される。
そして、自己評価ほど当てにならないものはないとつくづく思う。 -
善良とは何なのか。
あの人は善良か、善良でないかで人を見たことが無かったので「善良」の言葉にピンとこなかった。
自分のことを善良だと思っていたら、それは傲慢だと思うし。自分が善良でありたい、あるべきと思ったことも正直ないし、善良っぽそうな人は、本当かなぁー、無理していないかなぁとは思ってしまうたち。
善良である自分が好きなのかなとか。
基本的にどっちでもいいかなと思ってしまう。
結構読み進めるのははじめから大変だった。
架にも真実にも感情移入できず、何度か断念しそうになる。
が、最後の真実のターンになってからはいろいろ共感できた。
美奈子の方がよっぽどひどい。
真実のお母さん陽子のようににならないようにしないとなと、親目線で読んでしまった。
気をつけなければ、、。
ただ、最後真実のターンを読んでいるうちに、自分も行動起こしてみようかと思えてくる。
あんなに、読むのを断念しそうだったのに。
さすがの辻村さん。
文庫の解説が朝井リョウさんで、それも面白かった。
若いうちはみんな多かれ少なかれ傲慢な気がする。
傷みを知って、傲慢さがとれる。
傷みを知らないまま、大人になったり、高齢になると、きっと周りの人が大変。
どの程度を傷みとして認識するかも人それぞれだし、俺はこのぐらいの傷みを耐えたんだから、お前も耐えろ、となっても大変だし。
なかなか難しい。
傷みを知っていると思っていても、知らず知らずのうちに「私は知っている傲慢」もやってくるだろし、そうやってまた傷ついて、傲慢がとれるのか。。
エンドレス。 -
長らく積読してしまった本作。
映画化されるとのことでそろそろ読まねば...と思い手に取りましたが、思い当たることがある人には非常に鈍く深く刺さる内容で、気分が明るいときに読めばよかったと若干後悔しました。笑
率直な感想としては、真実がものすごく嫌いです。
架も架の女友達にも少なかれ傲慢さはあるけれど、真実に比べたら全然だと思う。
親が嫌いだと感じておきながら、親に経済的にも精神的にもに頼っていて、それでいて自分がこうなってしまったのは親のせいだと言う。
もちろん真実の親が過干渉すぎ且つ狭い視野しか持っていないのは理解できるし、その環境で育ってしまったことは可哀そうだとは思う。
でも経済的に恵まれていなければ、30過ぎて実家にお金も入れずに、親に結婚相談所のお金も出してもらうなんてことできない。
経済面でも恋愛・婚活面でも自分で何もできず、謙虚なふりして自己評価ばかりが高い。
最後の最後に至ってさえも、言葉とは裏腹に、真美の中では架はきっと許してくれるだろうと高を括っている感じがにじみ出ていて、更に嫌いになった。
でも何より嫌いなのが、そんな真実を嫌いだと思ってしまう自分。
多かれ少なかれ真実と重なる部分もあるくせに、そういう所は見て見ぬ振りをしている自分自身に何より腹が立つ。
おそらく(という枕詞をつけちゃうあたりより一層)私は真実より傲慢です。反省。
と、当てもなくイライラをぶちまけておいてなんですが、最後の朝井リョウさんの解説がめちゃめちゃ的を得てる(と思う)ので、普段解説を読まれない方も是非解説まで読んでみられることをお勧めします!!!! -
知らず知らずのうちに自分が傲慢だったことにじわじわ気づく。
話はとても面白いが、主人公たちのことは好きになれない。 -
辻村さんの作品は言い表せない心情を上手く表していて文章一つ一つがとても心に突き刺さる。
人に選ばれ選ぶことは婚活以外の場面でもあることだし、人が表に出さない心の壁の書き方が絶妙だなと。
「かがみの孤城」などに比べると大人向けではあるけど私が好きな辻村深月さんの文章がそこにあったので満足な一冊だった。 -
ストーカー被害にあっていると訴えていた婚約者が突然失踪してしまう。謎を追って婚約者の両親や姉、更に面識のあった人々を訪ね歩く。まるでミステリーのような展開がすすむ。ところが一転して後半は失踪したことになっていた婚約者側から同じ展開の別の側面が描かれていく。これらのストーリーを繋ぎ合わせるキーワードが作品名でもある『傲慢』と『善良』であり、登場人物達それぞれの傲慢と善良が明らかになってゆく…
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読みながら、女性は怖い、と思った。
美奈子たちが真実の嘘を(何ということもなく)見抜いてしまうこと、そしてそれを本人に伝えてしまうこと。
こんな世界で生きていかなくてはならないのだから、女性は大変だとつくづく感じた。
男性にしては気が利く方だと思う架ですら、真実(女性にしては鈍い方)に「とても鈍感なのだ」と思われてしまう。
架以上に鈍感な自分はいったい女性にどう評価されているのだろうと怖くなった。
まあ、美奈子たちが真実に嘘を指摘するところが一番おもしろい(正直怖かった)ところだった。
女性向けの本だろうが、男に生まれてよかった、と思いたい男性にもお勧め(笑)
(抜粋)
皆が行くから大学に行き、親が決めたから就職し、そういうものだからと婚活する。
そこに自分の意思や希望はないのに、好みやプライドと……小さな世界の自己愛があるから、自由になれない。いつまでも苦しい。
しかし、この世の中に、「自分の意思」がある人間が果たしてどれだけいるだろう。真実を責めることができる人間が、いったいどれほどいるというのだろうか。