国商 最後のフィクサー葛西敬之 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 瀬島と同じく、松崎についてもまた、多くの説明はいらないだろう。(P.88)

    こんな本読む人には常識なのかもしれないが、結局この文に違和感ない人におすすめ。JR東海元社長の葛西敬之の行動を通じて、国鉄分割民営化、企業内左翼活動、官邸・霞ヶ関からNHKの人事、リニア計画まで幅広く描く。著者の調査範囲もなかなかのもの。

    著者は葛西を”国士か政商か”、”自ら進める事業や政治への介入が日本の国益になると信じて疑わない。しかし、現実には当人の願いが本当に正しいのか、疑わしい場面を多々見受けた。葛西の言動は単純に国士という賛辞だけで片づけられない。強いてその実像を表せば、政商ではなく、国商とでもいうべきではないだろうか”(P.196)とする。
    単に政商とするには、国政に強い影響を保持し、単に国士とするには、国鉄民営化かJR東海での実績は、やはり一台の傑物と言える。
    活動範囲が多岐にわたるため、取材範囲も表から裏まで多岐にわたるが、そこは著者の強みで網羅されている。実名大目で、直近の一連の時代的案件を追えている良書。
    NHKや霞ヶ関人事のあたりが、個人的には新情報。面白かった。

  •  国鉄民営化で名を挙げ、JR東海を率いてきた葛西氏の後半生というかもう一つの面に着目して描いた本である。それは題名にもなっているが、政治との強い結びつきを通して自分の考え・思想を政治面からも実現しようとする姿である。
     古くは児玉誉士夫や瀬島龍三などが思い出されるが、そのようなニュアンスで国商を作者は名付けている。実際に瀬島龍三に面識があり指南を受け、また与謝野薫と大学同期の好みで安倍晋三や菅義偉を知り、国鉄民営化に取り組む中で政治家や官僚との接点が増えたという。それを活用して国策としてのリニア計画を推進したと述べている。
     そのような政商、国商としての姿はあまり知られていなかったように思うので、現代にもそのような人物がいたことがおもしろかった。単に優秀なビジネスマンあるいは経営者で済まずに、政治をも動かす力を持つに至ることは稀だと思う。なぜ葛西氏にはできたのか、できなかったと思われる人との対比でもいいが、もっと深く突っ込んでほしかった。多くの関係者に話を聞くなど調査力の高い作者だけに、といったらないものねだりかもしれない。
     一方で、終章で作者は国鉄民営化の是非論に言及しており、否定的な考えを持っているようだが、これは葛西氏の人物伝とは別の話であり、本書には不要だったと思う。
     それでも、葛西氏が存命中に途中まででもいいから本書を読みたかったなあと思いました。
     

  • 伝記にしては誉めてないが、タブロイドほど貶してもない。こういう人だったというのには濃すぎる。

  • 葛西敬之という人、国鉄民営化の立役者、JR東海の元トップというくらいしか認識がなかった。これまでの経歴とその裏側、政界との繋がり・政治への働きかけが丁寧に書かれていて、人物像を掴むことができた。リニアの章は筆者の主観も入っているような気もする。

  • 2022年に逝去したJR東海のトップとしてリニア新幹線を推進していた人物。東大から旧国鉄に入社し、中曽根政権下で行われた国鉄民営化を若手キーマンとして革マルが牛耳る労働組合を手駒につかいつつ推進。JR発足後に出世を重ねながら、官僚や政治家との付き合いを深め、NHK人事や政権の人事に影響力を保持。特に安倍晋三シンパの財界人の中心的人物となった。JRでの仕上げの仕事であるリニア新幹線は静岡県の川勝知事の横やりで南アルプスのトンネル工事がストップしているが、本書の後半はこの話題。組合人事、NHK人事の記述は冗長だった。

    湯島のすし初で友人S君に教えてもらった本。

  • この本を読んでしぞーか県のリニア問題についてちょっとわかった気になった素人の感想。「権力闘争ってそんなに面白いかあ」。
    あと、この本ほぼ唯一の女性登場人物、スキャンダル相手の大学教授夫人はこの後対外的に家庭的に無事だったのだろうか。この本にそこまで求めるのは違うとわかっているけれども、私はそれが気になっている。

  • 著者はどういうスタンスでこの本を書いたのだろう
    取材を積み重ね、淡々と、国鉄時代から亡くなるまでの葛西を
    追い続けている。JR東海のドン。安倍菅の盟友。

    オーナー社長の出世物語は読んでいてワクワクするが、
    こうした、政権に密着、癒着した人物の武勇伝?は面白くもなんともない。

    葛西は中曽根政権下の国鉄の分割民営化に功績を残したという。
    田中角栄は大反対だったという。
    田中が正しかった。
    北海道、四国は死にかけている。
    というか、地方が切り捨てられている。
    つながっていてこその鉄道。
    新幹線が通って第三セクターになって本数が増やせず、、、
    肩や新幹線はトンネルばかりで旅の醍醐味などまるでなし。
    このうえ大深部を通るリニアに何の意味があろうか。
    葛西のリニアへの執着も意味不明だ。

    少子化は先進国の常とはいうが、
    今の日本人の生活はもはや先進国のそれではない。
    五公五民で国民から搾り上げ、その公金を意味不明なものにつぎ込む。
    つぎ込む過程で公益法人の天下り役人が潤う。世襲議員が地盤を強固にする。
    その結果の、若者のテロとしての少子化ではないか。
    日本人を殺すことはないが、日本人を生まないのだ。同じことだ。
    数十年先には日本人は人口五千万を切るという。
    その形に合ったシステムにすればいいものを、それもしない。
    今まで通りのやり方で、今まで通りに甘い汁を吸おうとする。

    この本の主人公もその仲間の一人と思うと、
    読んでいて楽しくなかった。つまらなかった。
    こういう場合は本をどう評価すればいいのか。

    著者の取材努力、文章力は優れているが、
    テーマ、対象がつまらない。

    やはり本としてはつまらん、ということになるかな。



    国策づくり
    鉄道人生の原点
    国鉄改革三人組それぞれの闘い
    「革マル」松崎明との蜜月時代
    動労切り
    ドル箱「東海道新幹線」の飛躍
    安倍政権に送り込んだ「官邸官僚」たち
    首相官邸と通じたメディア支配
    美しい国づくりを目指した国家観
    リニア新幹線実現への執念
    「最後の夢」リニア計画に垂れ込める暗雲
    覚悟の死
    国益とビジネスの結合

    ・政策は小料理屋で動く
    ・靖国神社総代と日本会議中央委員という役割
    ・国鉄改革三人組それぞれの闘い
    ・「革マル」松崎明との蜜月時代
    ・覆された新会社のトップ人事
    ・鉄パイプ全身殴打事件
    ・ばら撒かれた「不倫写真」
    ・頼った警察・検察とのパイプ
    ・品川駅開業の舞台裏
    ・名古屋の葛西では満足できない
    ・安倍総理実現を目指した「四季の会」
    ・メディアの左傾化を忌み嫌う理由
    ・傀儡をNHKトップに据えた
    ・「菅さまのNHK」
    ・安倍政権に送り込んだ「官邸官僚」たち
    ・池の平温泉スキー場の「秘密謀議」
    ・杉田官房副長官誕生の裏事情
    ・政治問題化したリニア建設計画
    ・JR東日本とJR東海の覇権争い
    ・安倍と葛西で決めた「3兆円財政投融資」
    ・品川本社に財務省のエースが日参
    ・「最後の夢」リニア計画に垂れ込める暗雲
    ・JR東海の態度に地元住民が激怒
    ・「リニア研究会」という名の利権
    ・安倍晋三への遺言
    ・大間違いだった分割民営化
    ・国士か政商か
    ・覚悟の死

  • 新聞評価が高かったので読んでみたが、私には難しく感じた。人間関係や役職名が多く頭の中で人間関係がまとめきれなかったが、国鉄の分割、JR東海の発展、リニアモーターカーの歴史と今後が理解できる内容ではあった。

  • JR東海の会長が、安倍政権のフィクサーだった話。前半の国鉄民営化の部分は少し冗長的だったけど、パッパと読み進めると国をハックする仕組みが分かってとても面白い。

    これに気付いて、どこまでできるか、時間との戦いでもあり、国を動かす人生って難しいなとも感じる。ハックの仕方はスポーツ団体にも通づるところがあり面白かった。2023/05/01読了

  • 勉強会

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著者プロフィール

森 功(もり・いさお) 
1961年、福岡県生まれ。ノンフィクション作家。岡山大学文学部卒業後、伊勢新聞社、「週刊新潮」編集部などを経て、2003年に独立。2008年、2009年に2年連続で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を受賞。2018年には『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞受賞。『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』『官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪』『ならずもの 井上雅博伝――ヤフーを作った男』『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』など著書多数。


「2022年 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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