未来力 「10年後の世界」を読み解く51の思考法 (文春e-book) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 楽天の三木谷氏が、自分の考えを述べた本。時期的には、『突き抜けろ』と同じ頃書かれたのだと思うけど、自分の言葉で述べている分、本書の方が、考え方を理解しやすい。発想も素晴らしいが、実行力、行動力がすごい。三木谷氏から見たとき、日本には様々な問題があり、発展を阻害していることがわかる。勉強になった。

    「(イーロン・マスクが日本に進出しなかった理由)日本には様々な規制があって、自動運転にしても、シェアリングエコノミーにしても、彼(イーロン・マスク)が思い描くような自由なイノベーションが起こりそうもない。多くの規制に合わせた車のカスタマイズも必要なので、テスラにとってはあまり魅力的なマーケットではなかったのだろう」p53
    「こつこつと問題点を見つけ出し、少しずつ製品を改良し、より良いものを作っていこうとするとき、経験や歴史の積み重ねがものを言うだろう。だけど、時代が大きく移り変わっていくときには、その経験や歴史が自由なものの見方を阻害してしまうことがある。それらが作り出す既成概念に、彼ら自身が縛られてしまうからだ。」p54
    「日本における財団から研究開発に向けられている資金規模は数千億円程度。アメリカでは30兆~40兆円といった規模の寄付的な資金が、「財団」を通して幅広い研究開発分野に流れ込んでいる」p63
    「(大学への寄付)日本では個人や企業が東京大学や京都大学の研究を支援しようとしても、10億円の寄付をすれば、その大学への補助金が逆に10億円減ってしまう。これでは応援したくなる研究があっても、大学に対して個人が寄付をしようという気にならない」p66
    「日本は国土に山地と河川が多く、周囲は海に囲まれ、火山もあちこちにある。広大な砂漠や平原がどこまでも続く国とは異なり、その複雑な地形や気象条件を活かしながら、様々な発電手法を組み合わせてエネルギーのポートフォリオを作っていけるのだ」p70
    「日本では旧来のシステムがこれまた、ありとあらゆる分野で強固に存在している。古い仕組みがそこかしこにあり、イノベーションを阻んでいるのだ。そうした旧来のシステムを刷新するには、どうしても大きなスイッチングコストがかかってしまう。結果、それを避けようとして、既得権益が温存される。これが、世界の中で日本の成長だけが止まっている背景の一つだ」p94
    「日本に決定的に欠けているのは、「インベンション(発明)」と「R&D」。その2つの間に生まれる「新しい技術を使った世界に通用するサービス」を生み出す力だ。海外で成功したビジネスモデルの「日本版」をいくら作っても、そこに生み出される市場は、14億人の中国とは違って、たかだか1億2000万人という規模に過ぎない。そうではなく、これからの日本は、70億人という世界のマーケットを相手に先進的なサービスの発信地になるべきだ」p102
    「資源のない日本という国で、電力コストが高いままではそのうち立ち行かなくなるのは間違いない」p105
    「政治家や官僚と話をしていて思うのは、あまりに「未来」を見ていない人が多いことだ。例えば、自動車産業の「未来」を見据えた時、間違いなくガソリン車は消えていく運命にある。ビジネスの世界ににいる僕からすれば、それは必然的な「時代の流れ」だ」p109
    「日本がいま抱えている問題は「格差」ではない。むしろ「低すぎる生産性」だ。「金は天下の回りもの」と言われるように、適切な投資が成長を生み、さらにそれが投資を生むという循環こそがキャピタリズムの原則。成長や投資は若者のチャレンジ精神を刺激し、新しいイノベーションが生まれる土壌となる。そうして経済が成長していくことで、自然と分配も起こる」p116
    「ガソリン車に代わってEVが主流になっていくと、自動車部品産業の雇用が失われるかもしれない。だから、保護的な政策をとって雇用を守らなければならない、という議論がある。けれど、そうして古い産業と仕組みを守り抜くと、いずれは世界の潮流から大きく立ち遅れ、日本全体が「沈没」していく」p117
    「厳しい言い方に聞こえるかもしれないが、規制を緩和し、イノベーションを起こしていく循環の中で、変化についていけない企業は市場から消えていくしかない。けれど、その循環をきちんとドライブし続けていれば、新しく生み出される産業からは2倍3倍も多くの雇用が生まれるに違いない。それが、資本主義の在り方だし、ひいては国民を豊かに、幸せにすることになると僕は思う」p117
    「ワクチン承認の遅れの背景に見え隠れする「責任を取りたくない」という考え方、前例踏襲や無謬性にこだわる官僚や行政。さらに言えば、彼らがそのような思考パターンを持つようになったのは、小さなミスを殊更にあげつらってきた報道の在り方や、失敗を許さない世論の雰囲気も背景にあるに違いない」p132
    「天然資源のない日本では、海外から金と人を集められるものと言えば、観光くらいだ。日本は治安が優れていて、食べ物もおいしい。どの場所に行ってもこれほど高品質で安いサービスを受けられる国なんて、そう見当たらない。それは海外から人を呼び込むという意味で、本当に大きな財産だ」p158
    「既存産業の「保護」ばかりに目を向ける日本の政治の根底には、キャピタリズムというものの本質への無理解があるのではないか。これから先、その無理解が日本の産業の足を引っ張るようになることを、僕は懸念している」p168
    「日本の構造的な電気代の高さは、設備投資や技術革新を阻む大きな障害となる」p168
    「いずれAIの技術がもっと発展すれば、銀行業務の多くは「人がやった方が不正確」な時代がやってくるだろう。その時、企業の価値を支えてくれるのはエンジニアだ。それは、海外のエンジニアをいかに集められるかにかかている。だからこそ、社内公用語を英語に統一することは、楽天グループの将来にとっても必要不可欠だろうという認識があったのだ」p179

  • ・深刻な技術者不足。日本の情報工学専攻卒業生は1~1.5万人/アメリカ40万人/中国100万人/インド200万人
    ・2010年英語公用語。想定外は他社が追随しなかった事。英語が喋れない人が幹部の為

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著者プロフィール

三木谷浩史(みきたに・ひろし)
1965年神戸市生まれ。88年一橋大学卒業後、日本興業銀行に入行。93年ハーバード大学にてMBA取得。興銀を退職後、96年クリムゾングループを設立。97年2月エム・ディー・エム(現・楽天)設立、代表取締役就任。同年5月インターネット・ショッピングモール「楽天市場」を開設。2000年には日本証券業協会へ株式を店頭登録(ジャスダック上場)。04年にJリーグ・ヴィッセル神戸のオーナーに就任。同年、50年ぶりの新規球団(東北楽天ゴールデンイーグルス)誕生となるプロ野球界に参入。11年より東京フィルハーモニー交響楽団理事長も務める。現在、楽天株式会社代表取締役会長兼社長。

「2014年 『楽天流』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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