「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか (ブルーバックス) [Kindle]
- 講談社 (2023年2月16日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (324ページ)
感想・レビュー・書評
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今、困っていることを解決したくて読みましたが、見当たりませんでした。
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統合失調症やうつ、PTSDや自閉スペクトラム症などの心の病はレントゲンに映らないし、血液検査をしても測定できない。客観的な指標がなく、患者本人にしか自覚できない点が難しい。が、シナプスやゲノムの研究、fMRIやiPS細胞などの新技術を使った研究が進んでおり、心の病が医師に「見える」時代が近づきつつあるようだ。医学の基本的な知識は必要だけれど、最先端の研究に触れられて、科学の読み物として面白かった。
章ごとに、それぞれの分野の先端の研究者が登場する。複数の筆者がいると同じ本の中でも書き口が違ったり、難しすぎたり易しすぎたりして読みにくいものだが、本書は研究者へのインタビューを元に一人のサイエンスライターが執筆しているそうで、混乱せずに読めた。良書。 -
発達障害や精神疾患などを研究する、最前線の脳科学者達による執筆。詳細な専門用語については一読しただけでは消化不良なものの、全体として、医学が発達すれば様々な病気も症状も「治る」「発症させない」時代がくるのだという、希望や意欲が伝わってくる。
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内容は精神疾患に関する脳神経科学の知見を一般向けにわかりやすくまとめたものです。「脳科学」という日和った言葉は使わないでほしかったと思うくらい学術的で専門的な内容でした。久々に読みごたえのあるブルーバックスでした。
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ASDとADHDと診断されてるのですが症状に生きづらさを感じたことがなく
同じ症状の他の皆さんが一体どう感じてるのかが知りたい -
医師をはじめ、脳神経、生物学の専門家により「心の病」について現在わかっていることを説明した本。BLUE BACKSらしく科学的かつ論理的に現状を正確に述べている。「心の病」との格闘ぶりが、よく理解できた。
「統合失調症は、精神疾患の中でも遺伝要因が大きいようです(一卵性双生児の一方が統合失調症を発症した場合、もう一方も50~60%の確率で統合失調症を発症する)」p28
「(脳疾患には、神経変性疾患と精神疾患がある)アルツハイマー型認知症では、多数の神経細胞が細胞死を起こして脳の顕著な萎縮が見られます。それが神経変性疾患です。当然のことながら、脳内の情報処理を担う神経細胞が死んでしまうので、記憶や認知などいろいろな脳機能に障害が出てしまいます。一方、脳にそうした顕著な萎縮、神経細胞死が見られないのが神経疾患です。シナプスや神経細胞のはたらき方の変化のほかに、神経回路の配線の変化が考えられます。脳の領域間を結ぶ配線の数が少なかったり多すぎたり、間違った相手に配線されたりする変化です。そのような配線の異常があっても、脳に明らかな萎縮などの「見える病変」は認められないでしょう」p57
「きわめて複雑な脳の神経回路の配線を調べて、脳の機能を理解することはとても難しく、結果としてそのような研究は遅れていました。このような神経回路の配線地図をコネクトームといいます(コネクトーム研究により統合失調症、自閉スペクトラム症(ASD)などの解明を目指している)」p60
「うつ病は、統合失調症や双極性障害などに比べて遺伝要因よりも環境要因に強く影響するという調査報告があります。精神的ストレスや身体的ストレスなどの環境要因によって、誰もが発症する可能性がある精神疾患だと言えるでしょう」p81
「うつ病患者は、海馬と前頭前野の一部(内側前頭前野)の体積が縮小しているという報告があります。内側前頭前野は、扁桃体を制御しているといわれています。扁桃体は、敵に襲われるなど怖い出来事があると活性化して、敵と戦う、あるいは逃走するという適切な対処を促します」p85
「(うつは慢性ストレスで起こる)短期間の急性ストレスではうつ様行動を示しません。1日10分のいじめが10日間続くといった慢性ストレスによって初めてうつ様行動が現れます」p88
「ヒトゲノム(遺伝情報)は約30億個の塩基で構成され、たんぱく質をつくる情報が書かれた遺伝子が2万個超含まれています」p110
「ヒトは、父と母からそれぞれ1コピーずつ、2セットのゲノムを受け継ぎます。15番染色体の一部が1コピーに欠失すると統合失調症に、3コピーに重複するとASD(自閉スペクトラム症)を発症するリスクが高まることが報告されています」p118
「父親の年齢が高くなるほど、精子のゲノムに変異が入る確率が高まります。ASDの発症頻度が増えている原因として、晩婚化の影響も指摘されています」p119
「(がんとASDで共通した特定の遺伝子群の異常が現れる)がんや発達障害、精神疾患、生活習慣病など、さまざまな疾患が炎症と関係していることがわかってきました」p126
「PTSDの治療には、医師が患者と一対一で面接して、恐怖体験を思い出すことを1回約90分、数か月に分けて十数回繰り返す「暴露療法(エクスポージャー療法)」が行われています」p165
「躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害(躁うつ病)は、100人に1人ほどの高い割合で発症する精神疾患です」p185
「ASD(自閉スペクトラム症)の人たちは、実際の人間よりもロボットとコミュニケーションが取りやすいという報告が多数発表されている」p235
「他者の視点に立てるかどうかが、ASDの重要な診断基準の一つになっています。他者の視点に立てないことが、社会性やコミュニケーション能力の発達に遅れが出る原因だと指摘する研究者もいます」p241
「神経変性疾患のパーキンソン病では神経伝達物質のドーパミンのはたらきが弱まり、精神疾患の統合失調症ではドーパミンのはたらきが強まります」p250
「アルツハイマー型認知症ではまず、脳内の神経細胞の外側にアミロイドβというタンパク質の断片が蓄積し、やがて神経細胞の内部にタウというタンパク質が蓄積します。それによって神経細胞の機能低下や細胞死が起き、認知症が発症するという経過をたどります」p253
「パーキンソン病は、αーシヌクレインというタンパク質が脳内の神経細胞に蓄積します。それにより、ドーパミンをつくる神経細胞が大量に細胞死を起こして症状が現れます」p256
「体の疾患に効く薬が脳の疾患では効かないケースが多く見られます。脳の血管には「血液脳関門」と呼ばれる仕組みがあるため、薬がその関門を通過して脳へ入っていけないことが主な原因の一つです」p262