宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃 (角川ソフィア文庫) [Kindle]
- KADOKAWA (2023年2月24日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (326ページ)
感想・レビュー・書評
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京大の望月新一教授がABC予想を解いたということで一時期世間を騒がせたが、どうも何かもやもやとしたものを感じていた。
けっきょく解けたのか解けなかったのかがはっきりしなかったからだ。
本書を読んでそのわけがだいたいわかった。
本書は望月氏と親しい加藤文元教授が、望月氏の代わりに彼の創造した難解な理論をわかりやすく解説している。
その理論とは「IUT理論」(宇宙際タイヒミュラー理論)。
これは、あらゆる道具立てを望月氏が自身で作り上げた数学であるために、なかなかこれを理解できる人、理解しようとする人がいない。それほどにオリジナルな理論なのだ。
おおまかに言って何をするのかというと、ふつうの数学においてはがっちりとタッグを組んでいる「足し算」と「掛け算」とを切り離してしまおうというあまりにアクロバティックな発想から生まれた。
というのは、そうすることで気まぐれに姿を現す素数も扱いやすくなるからだ。
ではどうするのか。本書の比喩で言うなら、いくつものパラレルワールド、パラレル宇宙を用意し、たとえば世界Aにおけるパズルのピースを、同じ世界Aでははまらないはずの別のピースに、別の世界に存在する大きさの合うピースにはめてしまおうという試みだ。
では、その異なる世界間の通信はどう行うのか。そこで活躍するのが、「対称性」という情報。これだけを別世界に情報として送信し、到達先で復元する。
しかし、もともとの「ブツ」のコピーを伝達できないわけだから、完全に復元できるはずもない。これは前提としてある。
ではIUT理論は何を扱うのかと言うと、この世界Aと別世界との間で、ブツの復元の際に出る「ずれ」や「ひずみ」。これを精密に測定してしまおうという大胆な理論なのである。
こんな理論をたった1人で作り出した望月教授というのは、いったいどんな天才なのだろう!
こんな知的興奮を味わったのは久々だ。
また、望月教授と加藤教授が2人だけでIUT理論をめぐるセミナーを行った友情物語も激アツだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
緻密な(適宜反復する)説明で、IUT理論が如何に革新的な理論かを解説する。大半はIUT理論を理解するのに必要な準備としての説明が続く。IUT理論の核心部分については表現に相当な苦労をしたことが伺える説明となっている。実際説明を読んでもフワ〜ッとしか理解できない。まあこの本の趣旨は、IUT理論の技術的な説明ではなく革新性の主張なので、それはそれで良いのだ。
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当然のごとく理解はできないが、すごくフワッと筆者の言いたい事はわかった気がする