家政婦の歴史 (文春新書) [Kindle]

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  •  本書は、家政婦兼訪問介護ヘルパーである女性が2015年に過労死したのに伴い労災給付を申請したが不給付処分となったため、その取消しを求めて訴えを提起したところ、家政婦は家事使用人であり、労働基準法・労災保険法の適用から除外されているとした東京地裁2022年9月29日判決を端緒とする研究である。

     本書の終盤に次の要約がある。
     「労働基準法施行時には明確にその適用対象であった派出婦会から派遣されてくる派出婦たちの末裔である家政婦たちが、職業安定法の施行によってその所属元であった派出婦会が違法の存在とされてしまい、紆余曲折の末に有料職業紹介事業者たる家政婦紹介所から紹介されてきた者という世を忍ぶ仮の姿を身に纏わざるを えなくなり、その結果本来はそれに該当しないはずの家事使用人であるという烙印を押され、労働基準法や労災保険法の適用されて、早くも70年の月日をすることになったわけです。」(237頁)

     本書の大半は、この記述を、数々のエビデンスを示しながら説き起こすもので、さながらパズルを解くような興味深さを感じる。

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著者プロフィール

1958年大阪府生まれ。東京大学法学部卒業、労働省入省、欧州連合日本政府代表部一等書記官、東京大学客員教授、政策研究大学院大学教授を経て、現在は労働政策研究・研修機構労使関係・労使コミュニケーション部門統括研究員。主な著書・訳書に、『日本の雇用と労働法』(日経文庫、2011年)、『新しい労働社会――雇用システムの再構築へ』(岩波新書、2009年)、『労働法政策』(ミネルヴァ書房、2004年)、『EU労働法形成過程の分析』(1)(2)(東京大学大学院法学政治学研究科附属比較法政国際センター、2005年)、『ヨーロッパ労働法』(監訳、ロジェ・ブランパン著、信山社、2003年)、『日本の労働市場改革――OECDアクティベーション政策レビュー:日本』(翻訳、OECD編著、明石書店、2011年)、『日本の若者と雇用――OECD若年者雇用レビュー:日本』(監訳、OECD編著、明石書店、2010年)、『世界の高齢化と雇用政策――エイジ・フレンドリーな政策による就業機会の拡大に向けて』(翻訳、OECD編著、明石書店、2006年)ほか。

「2011年 『世界の若者と雇用』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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