滅ぼす 上 [Kindle]

  • 河出書房新社
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感想・レビュー・書評

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  • 冬休みの楽しみとして置いていた本だったのですが、けっきょくは一気に読んでしまいました。

    ウエルベックといえば、冷笑的で厭世的、センセーショナルを起こすような挑発的な作風が特徴ですが、彼も齢67歳だそうで、それが今作に与えた影響は少なくないように思えました。

    高級官僚のポールが主人公としていて、物語はフランス大統領選とポールの家族模様のふたつに大別されています。
    が、どちらかといえば家族について書かれている部分が多い。ディープエコロジーやテロリズム、悪魔崇拝など、さまざまな現代的な問題が書かれてはいるものの、それらはあくまでも現代フランス、ひいては現代世界の潮流を表すためのアクセントのようなものに過ぎず(実際、ほとんどの問題は解決されない)、メインはポールとその妻プリンダンスの関係性が回復される物語です。ポールと父の物語も手厚く書かれるし、それ以外の家族も物語において重要な位置を占めています。

    「これは本当にウエルベックなのか?」と思うような一節もあったりしますが、おそらくはウエルベックの作品群のなかで、もっともロマンチックな物語だと思います。相変わらず、ニヒリスティックな筆致は健在なのですが、下巻での妻との邂逅、ラストの一節など、感動する場面もある。ウエルベックでダイレクトに感動するとは思ってもなかったですが。

    そうはいっても、物語はずっと死と病の不穏な空気に包まれています。暗いといえば暗いし、なにか救いがあるわけでもないのですが、意外と元気になる小説でもある。

  • フランス語が言語の本はあまり読んだことがない。訳者の注釈が丁寧で良い。

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著者プロフィール

1958年フランス生まれ。ヨーロッパを代表する作家。98年『素粒子』がベストセラー。2010年『地図と領土』でゴンクール賞。15年には『服従』が世界中で大きな話題を呼んだ。他に『ある島の可能性』など。

「2023年 『滅ぼす 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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