バッタを倒すぜ アフリカで バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書) [Kindle]

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  • 前作『バッタを倒しにアフリカへ』の続編にあたる本。
    バッタの生態について研究を進めるために、西アフリカのモーリタニアに広がるサハラ砂漠におもむき、野外調査を行った記録が著者ならではのユーモラスな筆致で綴られていく。
    本書の中心となるテーマは、農作物や草木を食い荒らしてしまう人類にとっての害虫であるバクトビバッタについて、そもそもその繁殖行動がいかなるものなのかをフィールドワークによって研究する、というもの。

    調査を進めるにあたってまずは性比の偏りについて仮説が立てられる。湿地帯に生息するサバクトビバッタと、それ以外の場所に生息するバッタにはオスとメスの性比に違いがあり、これによって産卵の時期やメスの割合に違いが生まれるのではないかと考えられ、実地調査によってその検証が行われていく。調査はモーリタニアだけでなくフランス、アメリカ、モロッコなどで行われ、さらにはサバクトブバッタがどのような姿をしているのか、調査をしている場所がどのような場所なのかを豊富な写真資料によって示されるため、臨場感があり、わかりやすい。
    特にその国々で食べた料理、例えば採れたての牡蠣であったり、「ハリッサ」と呼ばれる豆板醤のような見た目の辛いペーストを入れたサンドウィッチなんかはとても美味しそうで食欲がそそられた。

    んが、そういった研究以外の話がやたらと多いせいで、本題となるバッタの研究記録の話がなかなか進まないのは辟易した。フィールドワークというよりも著者の旅行記とか日記が延々と綴られており、それが研究と有機的に絡んでくるならまだしも、ただ美味いものを食べた。ただこいつは良い奴だった。と言われても、バッタの研究を読ませてくれよという気分になってしまう。正直もっと贅肉となる部分を削ってほしかった。バッタ研究の功績が認められたという話や、コロナ禍においてTwitterで嫌な目にあった話とか、バッタ研究について書くというコンセプトの本に対して本当に必要だったのか疑問な部分がかなり多かったし。

    本書の研究で得られた知見は、
    群生相のオスは、ボディーガードフェロモンを出し、オス同士のメスを巡る競争を軽減している。このフェロモンが産卵中のメスをボディーガードするのにも一役買っていると解釈したら、産卵直前のメスは、より安全に産卵する可能性が高まり、オスは自身の精子が確実に受精に使われるというメリットを得ることができる。
    というもの。
    他にも、フェロモンを利用した独特の交尾システムを有していること、複数のオスと交尾したあとでも最後に交尾したオスの精子が受精に使用されること、産卵期間や交尾中は行動が鈍ること、それら生殖行為は雌雄それぞれにとってメリットがあることなどが書かれている。

    こんな風に数行でまとめると味気ないし、ドタバタした調査やユーモラスな文章が著者の持ち味だろうから、結果的にこういう体裁の本になったのだと思うけど、700ページも必要だとは到底思えない記述ばかりが目立つ本だった。楽しく面白くすることでライトな本にしようとする気持ちはわかるけど、一応研究結果、という体裁で発売してるなら、もっと贅肉をそぎ落として読みやすくしてから出版してほしい。

  • 面白かった。
    Xで著者をフォローしているので、バッタ大量発生で著者が注目された時の話や、論文が公開されておめでとうムードになった時のことを覚えている。そういった時の話も詳しく書かれており、そっかーあの時はそういう感じだったのかーってなった。

    バッタ研究もめちゃめちゃ興味深い(分かっていないことが多すぎて逆に驚く/工夫しながら取り組む様子にテンションが上がる)が、人間関係や食レポも大好きなパートである。表紙にいる2人目の男性は絶対彼だと思った。食べ物に関しては、写真がカラーなのが嬉しい。

    著者やティジャニのお金の使い方に関しては、小川さやか著「都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌」の内容をちょこちょこ思い出しながら読んでいた。
    とはいえ、地図で見るとモーリタニアとタンザニアは結構離れているので、「アフリカ」でひとくくりにするのは良くないかもしれない。自分の中で好きな本同士が繋がった気がするのって嬉しいんだけどね。

    あと、論文リジェクトのくだりで「『動物のお医者さん』でやったところだ!」って妙な興奮があった。やっぱり読書は良い。

  • サバクトビバッタの研究成果を読んでたはずが、ティジャニ讃歌に一章が捧げられ、呆気に取られつつも面白くて文句ナシだった。

  • 前作『バッタを倒しにアフリカへ』を表紙買いし、バッタに魅せられ幾星霜。
    待ちに待った続編です。
    この本がでるまで、一読者には分からない、苦労や苦悩をユーモアたっぷりに切り抜け、遂に論文発表へ!!
    電子書籍1010ページがあっという間の大興奮の一冊でした。

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著者プロフィール

1980年生まれ。神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了。農学博士。
日本学術振興会海外特別研究員としてモーリタニア国立サバクトビバッタ研究所に赴任。

「2012年 『孤独なバッタが群れるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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