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- / ISBN・EAN: 9784758412186
感想・レビュー・書評
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町奉行というと、治安維持のための警察機能や司法機能を思い浮かべるが、これは民政に力点を置いた歴史小説。島原の乱から十数年後58歳で北町奉行を拝命した石谷貞清翁を描いている。
石谷貞清? 誰それ? つうくらい知られていないじゃないだろうか。
世は武断政治から文治政治への転換期、江戸の街は由比正雪の乱や承応事件などに象徴される浪人の増加が社会問題となっていく。石谷翁は残りの生涯をかけて浪人の就職斡旋に尽力したという変わったお奉行だ。斡旋した浪人の数、実に1000名を超えるという。
職の創出を目的として吉原移転を行い、明暦の大火後の都市計画に基づき江戸を改造し、両国橋の敷設に着手する。それらの建白を老中松平信綱や阿部忠秋に談判して強引に推し進める。この人がいなかったら、たとえば本郷にあった吉祥寺が武蔵野に移転することもなく、今の吉祥寺はなかったろう。
ことに智恵伊豆と呼ばれた信綱との談判シーンは小気味よく、見せ場の一つとなっている。
奉行職を辞してからは、自宅敷地内に浪人の就職斡旋所を設置して、今のリクルーティングに繫がるような就職サポートをしていく。習字やそろばんの指南まで行うんだから徹底している。
災害後の復興行政のあり方や就職困難な今、この人に光を当てた意味は大きいと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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