だいこん [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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感想・レビュー・書評

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    「だいこん」という、少々すっとぼけたタイトルからは程遠い場面と日付で始まるので、そこでまず「おっ」と思わせられる。かといって、ただの焼け跡ものではない。主人公は外交官のパパを持つ、誇り高いお嬢さまである。紳士淑女の集う「クラブ」に出入りし、床屋政談ぶる大人の話を聞きながら、ミズーリ号での調印式までの成行きをつぶさに見ている。

    このお嬢さまときたら、ただのこまっしゃくれたガキではない。リセのコンクールで歴史と論文の一等賞をとり、時のフランス大統領と握手もしたというんだから、アポリネールから何からガンガン引用し、愚かな世情に嘆息し、いけ好かない相手とも堂々と渡り合って意見を述べる。美しいものが好きで才気にあふれて熱血漢で皮肉屋で、まるで森茉莉である。クラブに集う高等遊民の集まり(とみえる)大人の間を自由に泳ぎ回る姿がきびきびしていて頼もしい。

    洋行帰りの若きレディのお茶や社交の日常、洋行の思い出が華やかで、そちらを楽しんでもいいし、パパやクラブのメンバーを通して知る、日本が大きく動いた20日足らずの出来事に首を突っ込む、彼女の闊達さを楽しむのもいい。両者をうまく組み合わせ、意表をついた面白さを生む上手さがワンダフル。「どこが読みどころ」というのがピンポイントで挙げられないくらいに、鮮やかな場面がこれでもかと用意されているので、長いけれどもノンストップで読んでしまう。どういうジャンルといえばいいのかしら?とりあえず少女冒険小説?お嬢さまの活躍をご覧になりたいかたは、ぜひ。

    • niwatokoさん
      無知で恥ずかしいのですが、こんな小説も書いている作家だとは知りませんでした。おもしろそうですー。いつも、知らなかった作家や本を教えていただい...
      無知で恥ずかしいのですが、こんな小説も書いている作家だとは知りませんでした。おもしろそうですー。いつも、知らなかった作家や本を教えていただいて感激です。ありがとうございます~。
      2013/01/23
    • Pipo@ひねもす縁側さん
      いえいえ、ぼーっと「新着著作リスト」などを見ていて、「これ、どんな話かな?」と気の向くまま読んでいるだけですので~。

      主人公は女の子な...
      いえいえ、ぼーっと「新着著作リスト」などを見ていて、「これ、どんな話かな?」と気の向くまま読んでいるだけですので~。

      主人公は女の子なのですが、こどもこどもしていない語り口で、完全に大人向きの作品なんですね。でも、モダーンな女子活躍小説として面白かったです。

      私もniwatokoさんから、自分が読んだことのない作品を紹介していただいたりして、楽しくやりとりさせていただいています。こちらこそありがとうございます。
      2013/01/23
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著者プロフィール

1902年北海道函館市生まれ。本名、阿部正雄。1952年『鈴木主水』で第26回直木賞を受賞。推理小説、ユーモア小説、歴史小説などその作品の幅は広く、「小説の魔術師」「多面体作家」の異名を持つ。代表作に、「湖畔」「黒い手帳」「ハムレット」「無月物語」「母子像」など多数。『キャラコさん』『肌色の月』など映画・ドラマ化作品も多い。1957年没。

「2023年 『あなたも私も』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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