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- 青空文庫 ・電子書籍
感想・レビュー・書評
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「読んだ記憶あったかなあ…」とダウンロード。
「だいこん」という、少々すっとぼけたタイトルからは程遠い場面と日付で始まるので、そこでまず「おっ」と思わせられる。かといって、ただの焼け跡ものではない。主人公は外交官のパパを持つ、誇り高いお嬢さまである。紳士淑女の集う「クラブ」に出入りし、床屋政談ぶる大人の話を聞きながら、ミズーリ号での調印式までの成行きをつぶさに見ている。
このお嬢さまときたら、ただのこまっしゃくれたガキではない。リセのコンクールで歴史と論文の一等賞をとり、時のフランス大統領と握手もしたというんだから、アポリネールから何からガンガン引用し、愚かな世情に嘆息し、いけ好かない相手とも堂々と渡り合って意見を述べる。美しいものが好きで才気にあふれて熱血漢で皮肉屋で、まるで森茉莉である。クラブに集う高等遊民の集まり(とみえる)大人の間を自由に泳ぎ回る姿がきびきびしていて頼もしい。
洋行帰りの若きレディのお茶や社交の日常、洋行の思い出が華やかで、そちらを楽しんでもいいし、パパやクラブのメンバーを通して知る、日本が大きく動いた20日足らずの出来事に首を突っ込む、彼女の闊達さを楽しむのもいい。両者をうまく組み合わせ、意表をついた面白さを生む上手さがワンダフル。「どこが読みどころ」というのがピンポイントで挙げられないくらいに、鮮やかな場面がこれでもかと用意されているので、長いけれどもノンストップで読んでしまう。どういうジャンルといえばいいのかしら?とりあえず少女冒険小説?お嬢さまの活躍をご覧になりたいかたは、ぜひ。
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主人公は女の子な...
主人公は女の子なのですが、こどもこどもしていない語り口で、完全に大人向きの作品なんですね。でも、モダーンな女子活躍小説として面白かったです。
私もniwatokoさんから、自分が読んだことのない作品を紹介していただいたりして、楽しくやりとりさせていただいています。こちらこそありがとうございます。