世界制作の方法 (ちくま学芸文庫 ク 15-1)

  • 筑摩書房 (2008年2月6日発売)
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言語哲学、論理学、形而上学、芸術論に多大なる貢献したアメリカの分析哲学者グッドマンの著作。グッドマンの哲学の特徴は、記号主義(この記号主義は、構成主義、体系の複数性、唯名論、反基礎付け主義を特徴とする)、多元論(この多元論には、ヴァージョンの複数性、非実在論、根本的相対主義を特徴とする)である。以下、目次と内容概略。

第一章 言葉、作品、世界
数多くの異なった世界=バーションがある。しかし、それぞれが唯一の基盤たる世界に還元されるわけではない。様々な世界製作の方法(合成分解、重みづけ、順序ýづけ、削除と補充、変形等)があり、作りだされたバージョンはそれぞれ正しいバージョンである(芸術のバージョンも科学のバージョンも)。これらのバージョンには真理よりも「正しさ」が重要である(「正しさ」については第七章)。

第二章 様式の地位
「一般に様式をなす特徴を他の特徴から区別するものは何か」という問いについて。様式の定義、様式の意義などについて。様式には、語られたもの、例示されたもの、表出されたもの、の特徴が含まれる。様式理論においては、様式と主題、形式と内容、「何」と「いかに」、内在的と外在的などの二項対立を導入すべきではない。

第三章 引用に関するいくつかの問題
言語以外(絵、音楽、身振り等)の引用とはいったいどのようなことなのか、可能なのか、についての考察。

第四章 いつ芸術なのか
「芸術とは何か」という問いについて。「象徴とは外在的であり、作品そのものは象徴ではない。真に重要なことは外在的な象徴について考えることではなく、それと離れて、その作品に内在的な特性とは何か考えることだ」という意見の批判的検討。作品は必ず記号作用(象徴)を行う物であり、内在的な特性の区別などできない。どのようなものも記号作用を持ちうるのであれば、「良い芸術とは何か」より「いつ芸術となるのか」という問うべきだ。

第五章 知覚に関するある当惑
心理学実験における仮現運動についての考察。特に、色の仮現運動について(なめらかに別の色に移動せずいきなり色が変わるということへの当惑)。むしろ、運動の視知覚のあらゆる明確な事例は、事実上色の突然変異に基づくものである、との結論。

第六章 事実の作製
事実は作為的である。事実は理論負荷的である。事実とは小さな理論であり、真なる理論とは大きな事実である。我々は何か古いヴァージョンから出発し、新しい世界を制作すると決意してその技量がもたらされるまでそのヴァージョンにしがみつく。古代ギリシャにおける世界制作を例にとる。
どのヴァージョンも(虚構から成るヴァージョンでさえ)知識拡張の様態の一つであり、科学同様に真剣に解されねばならない。

第七章 レンダリングの正しさについて
真と偽とを区別するだけでは正しいヴァージョンと間違ったヴァージョンを区別するのはに十分でない。検証と真理、真理性と妥当性、正しい代表、公正な見本についての考察。ヴァージョンはそれぞれが適合する世界に対して真であり、その世界に対して正しいとみなすことができる。記述や代表の正しさは真理に包摂するよりも、適合の正しさという一般観念の下に包摂するべきだ。正しいヴァージョンの探索に用いられる検証手段(見本の抽出や一致、演繹・帰納推論等)に対する我々の確信は正当化できない。カテゴリー把握の正しさは、実践と適合の問題である。

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ぼんやりとしていてわかりにくいが、ところどころはよくわかる。
指示、記述、描写、外延指示、代表、例示、表出、しるし、写し、書記体、綴り、など非常に似たような単語が出てきてわかりにくい。他にも稠密、投射、自書体を入れるなどの独自の表現が頻出してわかりにくい。それを見越してか、親切にも後ろに単語がまとめてあるのでそれを参照するべき。
いつ芸術なのかと引用の問題が好き。第二章と、第七章の後半が難しい。私だけかもしれませんが、glueのパラドックスの議論の主眼がいまいちよくわからない。
幅広い分野を論じているようで、主張がかなり一貫していると感じた。芸術や隠喩表現の意味、シンボル機能、世界の構成などについて述べているので私の興味の範疇にかなり沿っている。また読もう。別の著作も調べるべき。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2020年5月22日
読了日 : 2020年5月22日
本棚登録日 : 2011年2月26日

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