《マーキュリーの靴》(収録作品)
高層ビルの屋上にある邸宅に、独りで暮らす女性推理作家が、深夜に小雪の降った翌朝、胸にペーパーナイフが刺さった状態で、部屋の床に仰向けで死んでいるのが発見された。
邸宅の周りには、うっすらと雪が積もっていたが、帰宅時の彼女の靴跡しか残っていないことから、警察は自殺だろうと考えた。
しかし、私立探偵のわたしのもとへやってきた弁護士は「自殺ではなく他殺だと立証してほしいんだ」…そう依頼してきた。
早速わたしは、事件解明に乗り出すのであった。
タイトルの由来は、作中の次の言葉が語っている→
「他殺じゃないですよね?犯人の出入りした靴跡がないんだから。仮りに一歩ゆずって雪の降る前に忍び込んでいたとしても、足跡をつけずに逃げることは不可能です。西洋の商売の神様のマーキュリーは、羽根の生えた長靴をはいていたそうですが、犯人も空中を飛ぶ靴でもはいていたのでしょうかね」
空を飛んでやってきて、殺し終えるや、再び空の彼方へ飛び去ってゆく…。
…ああ、悪魔の夢想を喚起する、なんてゾクゾクするイメージなんだ!
わずか40ページの短編だが、作者は予想外の結末を用意していた!
見事な作品である。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2010年12月18日
- 読了日 : 2010年12月18日
- 本棚登録日 : 2010年12月18日
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