2006年の本でありデータは古いものの、作者の「上層と下層の差を認めつつ、貧困者がゼロの世界を想定する」という考え方は非常に共感したと同時に、現在の日本に抜け落ちている視点だと思われる。「機会の平等」を確保するために、教育や社会保障、雇用政策を政府が積極的に行なっていくことの重要性、そのための財源として諸税の累進性を高めることが説かれており、私の価値観とは合致するものであった。また、15年ほど前の本であるにもかかわらず、構造的な問題はあまり変わっていないとも思われる。
ただ2022年現在(もちろん2006年当時も)にこれを実現するためには下記の視点が必要かと思われる。
・累進性を高めつつ企業・個人の競争力を失わないためには、税以外の観点からの優遇措置等が必要ではないか?デジタル化も進み新たな産業が勃興する中で、規制改革などを税改革とセットで行うことが必要ではないか?
・少子高齢化が異様な速さで進む中で、果たして累進性の向上などだけで、社会保障の財源を確保できるか?高齢者の富裕層を巻き込んだ議論もなされるべきではないか?
・高福祉・高負担国家の課題とは何か?
これらの視点をもりこめていればさらに評価が高いものであったと思う。
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- 感想投稿日 : 2022年2月23日
- 本棚登録日 : 2022年2月23日
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