孤独の価値

著者 :
  • 幻冬舎 (2014年11月28日発売)
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感想 : 28
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JOKERとあいちトリエンナーレの騒動を体験したあとに読んだのは象徴的だった。
“芸術というのは、人間の最も醜いもの、最も虚しいもの、最も悲しいもの、そういったマイナスのものをプラスに変換する行為”
映画や読書の感想で「刺さった」という表現がある。なにかが刺されば痛みを伴う。ひとは痛みを嫌悪する。科学的には痛みは身体的に危険な状況のウォーニング。嫌悪すべき痛みは「知恵」をもたらす。そう考えれば、「芸術」とは心地よくさせるデパートのショーケースではなく、「ひとを痛みで進歩させるもの」と言える。
JOKERをハリウッドテンプレで作ればサイコ・スリラーになったろう。あの映画はぼくにとって抜けない刺でありおそらく一生ついて回る問いになった。
その問いを言葉で説明しようとするとどれも上滑りで置いた言葉になってしまう。この問いはシェアする内容ではなく自分ひとりが孤独に抱え込む闇だ。それは自分の大きな荷物かと思っていたけど、本書を読んで孤独に問えることって幸せなことなのかもと思った。
テレビでも映画でも政治の世界でも「断言する人間」って苦手だ。彼彼女らが断言するのは相手に考えさせたくないから。相手の考える時間を空虚な言葉で埋めて消し去りたいから。
孤独とは自分に問える時間があること。そして同時にその結果に自分で責任を取ることと言える。

おそらく現代のコミュニケーションに欠けているのは共感力ではなく、孤独感、言い換えれば距離感なのかもしれない。自ら完結せずしてひとの事を思いやることは出来ない。

本の感想とは違うかたちになったけど、自分の考え方の一助になった内容だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年10月13日
読了日 : 2019年10月13日
本棚登録日 : 2019年10月13日

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