本日は大安なり (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2014年1月25日発売)
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高級結婚式場アールマティ。ある大安のめでたいよき日に行われる4組の結婚式。だけど一見幸せに満ちているはずの晴れの舞台に、様々な企みが見え隠れする。双子姉妹の複雑な愛憎、若い叔母の新郎に疑惑の目を向ける小学生、クレーマー新婦に翻弄されるプランナー、ある秘密を言えずに当日を迎えることとなった新郎。4組のウエディングの現在進行形の出来事に過去のエピソードもうまく絡められ、度肝抜かれる地雷のような仕掛けもあちこちに施されていて、「!?」の連続である。
いくつもの種明かしには結構ドキドキさせられたが、それでも華やかな舞台の描写は、やはり読んでいてワクワクする。独特の高揚感が花嫁を美しく感じさせる。トラブルはつきものだけど、読む側も非日常な空間に連れていかれるからか、ある程度のトラブルではビビらなくなっている。とはいっても!その予想を裏切るかのような展開は、驚きだけじゃなく、泣きのサプライズもあり。プランナーの多香子の、仕事に懸ける情熱が素敵だ。携わっている仕事は自分とは違うといえど、対お客様という点で共通する部分はある。
「すっごく気に食わない相手が来たらどうするの?この人の幸せなんて死んでも祈りたくないって相手。それでもやっぱり魔法かけてきれいにつつがなく仕上げてあげるの?」
美容室オーナーと多香子との会話。自分の度量を試されるような質問だと思う。この言葉が後半で実感を伴って再び思い出される。自分ならどうだろう?と思う。何にせよ、クライマックスでの多香子の振る舞いには胸を打たれた。自分もそうありたいと思った。
スリリングな一日にはハラハラされまくり、どのウエディングも印象的ではあったが、個人的に好きなのは双子姉妹。辻村さん、女のドロドロした心理を描くのが本当にうまい。新郎の映一には、痺れます!ひとつひとつのセリフがかっこよすぎる。
果たして収拾は付くのか最後まで気が気じゃなかったけど、後日談的な「大安の後日」を読んで心が温まりました。他力本願的なクズ男には心底辟易したけど、誰に感情移入するかで見る目は変わるのかな~。私としてはまあ、この展開に納得です。
既婚の方は間違いなく、自分の経験と重ねて読んでしまうのでは。登場人物ほどではなくても、自分もそれなりにマリッジブルーは経験したし、式当日もバタバタしたし、その後も勿論波乱万丈ではあるけれど(^_^;)…あの日を懐かしく思い出せました。
彼らの未来に幸あらんことを!と祈りたくなる、ハッピーに満ちた一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の作家
感想投稿日 : 2014年3月20日
読了日 : 2014年3月20日
本棚登録日 : 2014年3月8日

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