虫たちの家

著者 :
  • 光文社 (2016年6月16日発売)
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本棚登録 : 310
感想 : 51
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改めて、原田さんのストーリーテリング力に感服。タイトルの「虫たちの家」、当初は地味な印象があってあまりそそられなかったのだが、読み始めたらいつもの原田作品同様に夢中になって読んだ。
ネット被害に遭った女性達が離島のグループホームで共同生活を送っている。自分の名を捨て、「テントウムシ」「オオムラサキ」「ミミズ」など、虫の名で呼び合いながら、農作業をし、つつましく暮らしている。ここにしか居場所がないのだと今の生活を頑なに守ろうとするテントウムシだが、新参者の母子(ミツバチ、アゲハ)の出現で、平和だった日々が脅かされ始める…。リベンジポルノが題材の為、時々その酷さに胸が痛む。だけど、一見正義感に突き動かされているように見えるテントウムシの行いに感じる小さな違和感。男心を弄ぶ美しい娘・アゲハの行いや言動にも些細な矛盾を感じ始める。そして訪れる、思いがけないどんでん返し…。
思い返してみれば、さり気なく伏線は張られていた。細かいところで、もう少し説明が欲しかった部分もあるけれど…それでも、あまりに意外な展開に思いっきり度肝を抜かれてしまった。全体的には何とも苦い印象が強いけれど、心が絞られるほど切ないところもあり。弱い者への寄り添い方が原田さんらしいと思った。様々な人生があり、その過程で人を傷つけずに生きていける人などいないだろう。時には人と関わることを拒絶してしまうほどに辛くなることもあるだろう。それでも、いつか、どこかのタイミングで再生できる。そう思える一冊だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の作家
感想投稿日 : 2017年4月13日
読了日 : 2017年4月13日
本棚登録日 : 2017年4月4日

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