トネイロ会の非殺人事件

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  • 光文社 (2012年4月18日発売)
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感想 : 38
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「驚愕の展開。感動的な反転。鮮やかな結末。」作品紹介にあったこの一文に激しく同意!な、中編ミステリー3編。
個人的にはやはり、SF色の強い「星風よ、淀みに吹け」が好き。月面基地建設を見据えて作られた実験閉鎖施設での密室殺人。誰が、どうやって、何故殺人を…!?人間の「善」の部分、「悪」の部分がオセロのように白黒何度も反転しながら捻じれていく展開に、誰が善?悪?と何度も問いつつページを繰った。リーダーの江綱のキャラクターがとてもよい。クライマックスの叫びは、胸を締め付けられる。
同じくオセロ的な反転に翻弄されたのが、表題作。憎むべき脅迫者への復讐を遂げるべく集まった10人のトネイロ会。こちらは思いっきりミステリーだが、まさかな起承転結に度肝抜かれました。ミステリーを読み慣れないもので、何度も「???」という状態になってしまったが…。様々な世代の登場人物が集まっていたけど、読み始めは誰が誰だかわかりにくく、キャラが立っていたのは数名だったような。殺人に参加していない「非」犯人を探すという設定は斬新だなと思いました。
このトネイロ会、TNEIROと表記するようなんだが。表紙をじっと見ていると、「ん?」とあることに気づく。
ミステリーファンの方ならピンとくるのかな。わたしはすぐわからなかったが(汗)機会があれば、着想を得るきっかけとなったであろう作品にも触れてみたい。
三作品共、どこかおぞましいんだけれど、読後感は重くない。それが小川さんらしいなと思う。何をもって「善人」「悪人」と判断するのか…善悪の境目が溶け合った、グレーな部分のグラデーションについてすごく考えさせられる一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の作家
感想投稿日 : 2013年7月9日
読了日 : 2013年7月9日
本棚登録日 : 2013年6月26日

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