お会いしたこともない年上の著名な歌人にこう言っては失礼ですが、やっぱり穂村さんのへなちょこさが愛おしい。強すぎる自意識ゆえ身のこなしがぎくしゃくしていて可愛い。
締め切り過ぎの深夜に真っ暗な部屋でコートを着たまま時計のオークションに入札を繰り返したり、一家言ありそうなお店にビクビクしたり、10年通うジムで修行僧という渾名をつけられたり、"世界の多様な豊かさ"という最後の大穴に吸い込まれていくことに恐怖を感じたり。吸い込まれるぐらいであれば反省しないまま刑を執行された死刑囚の方に心をうごされる。
情けない姿が多いのだが、でもそのエピソードと言葉の選び方には"生"のきらめきを感じてしまう。
きっと大変生きづらいのであろうが、穂村さんに見えている世界を私も見てみたいと思わせるものがある。
引用してくれる短歌も好き。
無名にて死なば星らにまぎれむか輝く空の生贄として
寺山修司
うつしみに何の矜持ぞあかあかと蠍座は西に尾をしづめゆく
山中智恵子
冬の夜の星君なりき一つをば云ふにはあらずことごとく皆
与謝野晶子
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
エッセイ
- 感想投稿日 : 2020年9月29日
- 読了日 : 2020年9月28日
- 本棚登録日 : 2020年9月28日
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