武道館

著者 :
  • 文藝春秋 (2015年4月24日発売)
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感想 : 371
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朝井さんは小説家としては若いこともあり、桐島のときから現代特有の身近な感性が表現されているから、いつも興味深い。
今回のテーマは、アイドル。1から武道館を目指すアイドル。
私自身は芸能関係の仕事に就きたいと思ったことはないけれど、なにせAKB全盛期世代。
アイドルというものに大した関心がなかった同世代の周りの友達全員が、熱狂的にアイドルに引き込まれた世代。
特別アイドルオタクではないのに、アイドルの曲を口ずさみ、毎日どこがで耳にして、カラオケに行ってはMVをみんなで鑑賞し、自分の推しを見つけて語った平成世代。
対価としてお金を払っていないのに、いつも輝きと感動を享受していた。

今はSNSの発達によって、一般人、有名人、芸能人の境がより曖昧になってきているし、取得したり拡散できる情報が溢れているから、すぐプライベートが明るみに出る。故により芸能人個人の人格や行動への統一性を要求しすぎるようになったと思う。

表に出ていようが、アイドルだろうが、"一人の女の子なんだよ"っていうことが、ひしひしと伝わった。
私がその子達と同じくらいの年だったとき、思春期だったとき、否定されても当たり前にしていた「自分で考えて正しいと思う行動をしたい」「恋をしたい」、何故アイドルであれば抑えられて当然だと言えてしまうんだろう。
ただ本気でアイドルを好きな人たちに、「アイドルだって好きに生きたっていいじゃん」って外野の人間が言えることでもないんだ、という情報もまた得られてしまっているから難しい。

色々と考えさせられたけど、舞台に立つ苦労と生み出される感動を、体感しているように感じられて今風に言う"エモい"だった。AKBの卒業ライブ、選抜、あの時感じたエモさを全開に感じたなぁ。
特段どのアイドルのオタクもしたことがない一般人の私が、アイドルの方々、本当にありがとうって思う作品だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年7月6日
読了日 : 2022年7月6日
本棚登録日 : 2015年5月3日

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