貴志祐介氏の作品
何でもありかよっ、とツッコミたくなるかも(笑)
それこそ江戸川乱歩の作品のように古典であるが故に評価されてきたものは別として。それらを踏襲してきた作品に触れて来た読者においては、少々残念な気持ちになるのかもしれない。
主人公は『俺』だ。
目覚めた瞬間から、スズメバチとの戦いに身を投じることになる。パニックに次ぐパニックで、コントの様な展開が続く。伏線はあるにはあるが、その違和感に気付くのは難しいかもしれない。
会話に「」と<>の使い分けがあるので、明確な会話と妄想が入り混じっているように表現されているのかな。
そして雀蜂について勉強になりました。
以下、ネタバレ有り(備忘録)
ある小説家に憧れた主人公は、その小説家の作品を読み漁る。そこには自分の表現したいものがあった。
自分が書こうとしているものが、他人に書かれていることを憎悪する一方で、憧れの気持ちは増幅してゆく。老齢の主人公は、いつしか自らを他人の人生に投影して生き始めた。そして、小説家を自分の偽物だと錯覚するようになる。
ついにその日が来た。偽物を殺した主人公は、真冬の山の中、スズメバチの巣窟となった別荘から大脱出を試みる。
もちろん最後に全てが崩れ去る。
主人公は妄想に駆られた変質者であり、小説家として全く大成していない男であった。主人公こそが偽物である。
憧れた小説家は保険金目当てで妻を殺害しようとしていた。スズメバチを利用して。妻を一人残し、別荘を出て来た小説家を、主人公が殺す。小説家を殺した主人公は、別荘に残っていた妻と対面するが、当然のことながら妻は別荘から逃亡。残された偽物と本物が置いていったスズメバチとの格闘が始まる。
読了。
- 感想投稿日 : 2020年10月27日
- 読了日 : 2020年10月27日
- 本棚登録日 : 2020年9月5日
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