日本文学短編部門ベストみたいな企画をやると必ず上位に食い込んでくる作品「檸檬」。もし私が同様の企画を個人的に行うとしたらやはりこの短編はトップ10圏内に入ると思う。
ただ、梶井基次郎の他の作品ってどうなのだろう。「桜の木の下には」あたりは比較的名前を聞くけれど、その他の短編に関してはあまりまともな評価を聞いたことが無い。私が初めて『檸檬』の短編集を読んだのはもうずいぶんむかしのことで、正直「檸檬」以外はあまり印象に残っていない。
というわけで、久々に再読。
うーん、端正な文章だなあ。一文ごと味わいたくなる良さがある。けどどうなんだろう、「檸檬」と「桜の木の下には」以外には、はっきり言ってさほど良いと感じる作品が無かったなあ。というか感覚で書いてるような作品が多く、妙に小難しかったり、ふわふわしていたりで頭に入ってきづらい。梶井基次郎の”絶望と戯れる”って感覚は好きだし、どの作品にもそういう倦怠感や疲労感が漂っているのだけど、それが文学として見事に昇華されているのって「檸檬」以外だと……うーん。なんだか読んでいて、ただ気持ちよく絶望にひたるだけの物語は、どうでもいいやと感じてしまうなあ。私が大人になったということなんだろうか。
それでもなお、学生の頃にこの本を読んだときの「自分のことをわかってくれている」という青く、甘い、あの気持ちは間違いなくあったわけだし、この短編の価値が減じることはないので、相変わらず「檸檬」は大好きな短編なわけだけど。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年1月6日
- 読了日 : 2024年1月6日
- 本棚登録日 : 2024年1月6日
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