ローマ人の物語 (26) 賢帝の世紀(下) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年8月29日発売)
3.80
  • (77)
  • (112)
  • (125)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 1048
感想 : 67
4

うーん、賢帝ハドリアヌスですか。
確かに有能な皇帝であったと思うけれど、賢帝であったかというと、どうだろう。
やるべきことはきっちりやったし、自分の趣味も存分に楽しんだ。
公私の、ON-OFFの切り替えが上手い人なのだと思うけど、人としての魅力に欠けるよね。
媚びる必要はもちろんないけど、国民に愛されない皇帝はどうだろう。

その場面場面では適切な対応をしていても、どういう人物かというとつかみどころがない。
国民が親しみを感じるような単純な性格ではなかった。
そして、自分の行動の意味を説明することもなかったのだろう。
さらに年を取るにつれて、偏屈度が増しかんしゃくを起こすことも多くなった。

これ、周囲の人は大変だったろうなあと思いながら読んでいたら、案の定同時代に生きた人たちのハドリアヌス評はあまり高くない。
広大なローマ帝国を巡行して、ローマ帝国の再構築をなすという大事業を達成したのに。
でも、さらに後世の私からすると、やはり最初の基礎を築いたユリウス・カエサルやアウグストゥスに比べると、トライアヌスやハドリアヌスは一回り業績が小さい気がする。
ましてやその後を継いで現状維持をしただけのアントニヌス・ピウスはねえ…なんて思ったら、彼の評価はとても高い。

経済状態が良好な時、公務員の数は増えるのだそうだけど、アントニヌスは仕事をしないで給料を得ている者は、躊躇なく首にしたそうだ。
”「責任を果たしていない者が報酬をもらいつづけることほど、国家にとって残酷で無駄な行為はない」”
日本の政治家に聞かせてやりたい。

維持をするって地味に大変だけれど、評価が低いのが常。
だけど、人として賢かったアントニヌス・ピウスはきっちり仕事をしたうえに、国民の支持も厚かった。
こういう人を賢帝というのではないかしら。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年3月23日
読了日 : 2021年3月23日
本棚登録日 : 2021年3月23日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする