ローマ人の物語 (27) すべての道はローマに通ず(上) (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2006年9月28日発売)
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ローマ帝国が街道網を整備し始めたのと、中国で万里の長城が造られ始めたのは、歴史上ほぼ同時期なのだそうだ。
卑弥呼の600年くらい前。

”防壁は人の往来を断つが、街道は人の往来を促進する。自国の防衛という最も重要な目的を、異民族との往来を断つことによって実現するか、それとも、自国内の人々の往来を促進することによって実現するか。”

なるほど。
ローマの街道はもともと軍用道路として作られたのだけど、道があれば人は通るわけだから、そうすると街道筋に馬の交換所ができたり、食事処ができたり、宿泊所ができたりすることで経済も上向きになる。
街道マップなんかも作られていて、まさしく現代の高速道路である。
ただし歩行者も利用できるし、何よりも無料。

なぜならば、ローマの人たちは、インフラを「人間らしい生活を送るためには必要なこと」と考え、それはすなわち”きわめて重要な国家の責務、つまり「公」が担当すべき分野”と考えていたからである。
ローマにとって、街道、水道、郵便は国家が国民に保証する「人間らしい生活」を守るための基礎なのだ。

中世を暗黒時代というのは、外敵への防衛、宗教と民族間の紛争防止、治安への保障という、ローマ帝国が担っていたものが喪われてしまったからである。
ローマ帝国が滅亡してから1000年ほどは、封建領主が個々に年貢を徴収したけれども、ローマ帝国のように手厚い平和と安全は保障されなかったのである。

さて、映画でも有名な「真実の口」。
ローマ時代はマンホールの蓋だったんだって。
やるなあ。

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感想投稿日 : 2021年4月6日
読了日 : 2021年4月6日
本棚登録日 : 2021年4月6日

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