作者重視で、内容は確認せず、タイトルやカバーに惹かれて本を選ぶ傾向がある。なので、今回も、読み始めてわかったちょっと苦手な恋愛小説だった。
主人公・河野さやかは路上で行き倒れの男性に「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか」「咬みません。躾のできたよい子です」──。酔った勢いで拾たイケメン犬・イツキは、家事万能の植物オタク。突然の同居生活が始まり、お互いが惹かれあっていく恋愛小説。
本作の中で、昭和天皇のお言葉、「雑草という名の草はない。すべての草には名前がある」が、何度か登場している。この言葉は、属にいう「お母さんと言う名前ではない」と同じ意味なのか?人間だったどのように言い換えれるか?この言葉がどんな状況のときに発せられ、どんな意味があるのか知りたくなり調べてみた。
この言葉は天皇の侍従長・入江氏が「宮中侍従物語」で記していたお言葉であることがわかった。
昭和天皇が留守中に、お住まいの庭の草を刈った侍従の入江相政氏に天皇は尋ねられた。
「どうして草を刈ったのかね?」入江は、ほめられると思って、「雑草が生い茂って参りましたので、一部お刈りしました。」と答えた。
すると天皇は、「雑草という草はない。どんな植物でもみな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる。人間の一方的な考え方で、これを雑草として決め付けてしまうのはいけない。注意するように。」と諭された。
このお示しは、仏教に関わるようで、それぞれが持つ個性や生命も大切にしなさいと言う意味のようで、「…すべての草には名前がある」に続く言葉があった。
それがわかると、作者が、この言葉をここで出した意味はもしかしたら別の意味もあるのかなぁと考えると、恋愛小説は、推理小説と化した。
また、イツキが名前を明かさないのは何故か?何故か?と考えると、ひょっとしてローマの休日の逆バージョンかもという仮説を立て、さやかが部長から「登来柳明:現代生花の世界」の招待券をもらい、イツキを誘い断られたとき、これは確定!絶対、華道家と関係がある。だから草木に詳しいのだと、半ば推理小説の如く読み進め、想像通りの展開に満足した。(イツキが詳しかったのは、地べたに咲いているような花にのみ詳しかっただけのようであったのが判った)
そしてイツキは華道家として生きることではなく、植物に携わることが個性(適正)であり「雑草という名前の草はない。すべての草には名前がある」に私の中では繋がった。
そう考えると、何故か、自分が恋愛小説は苦手と思い込んでいるのが、滑稽に感じれ、小説の不思議マジックに改めてほくそ笑んだ。
最後に…有川先生の描く男性が、私の中で一貫しており、きっと先生の男性像なんだと推した。
- 感想投稿日 : 2020年6月20日
- 読了日 : 2020年6月20日
- 本棚登録日 : 2020年6月20日
みんなの感想をみる